副鼻腔 CT で片側性副鼻腔陰影を認めた場合, 慢性副鼻腔炎以外に副鼻腔真菌症や歯性上顎洞炎, 腫瘍性疾患が鑑別に挙がり, 診断や治療方針の決定に苦慮することがある. 今回われわれは片側性副鼻腔陰影を示す症例を診断するに当たり, 自覚症状や鼻腔腫瘤の評価, 副鼻腔 CT 所見, MRI 所見が有用であるか検討し, その結果から MRI 施行の適正性について検討した. 自覚症状は鑑別において有用性に乏しかった. 鼻腔腫瘤は鼻茸合併慢性副鼻腔炎と腫瘍性疾患の可能性が高いが, 鼻腔腫瘤を認めない悪性腫瘍症例もあり, 注意が必要であった. 生検の正診率は高く, 積極的に施行するべきであった. 副鼻腔 CT 所見は, 骨破壊は悪性腫瘍で, 石灰化は副鼻腔真菌症でのみ認められ, 鑑別診断に有用であった. Lund-Mackay 重症度分類のスコアは急性副鼻腔炎で有意に低値であり, 鑑別の一助になると考えられた. 濃淡 (陰影内部が不均一で低吸収域の中に高吸収域が混在するもの) + 小気泡 (陰影内に 1mm 以下の気泡が2個以上), 濃淡 + 小気泡 + 骨肥厚を同時に認める場合は石灰化を認めなくても副鼻腔真菌症の可能性が高く, 鑑別診断に有用であった. 中鼻道の換気が良いにもかかわらず生じる歯性所見を有する片側性副鼻腔炎は歯性上顎洞炎を示唆しており, 鑑別の一助になると考えられた. MRI の施行は当院の特性上, 過剰になる傾向があった.