2019 年 122 巻 3 号 p. 192-195
耳科領域においては, 日帰りや短期滞在での手術に適応のある疾患が多い. 欧米では耳科手術の多くが日帰りの対象となるが, 術後のめまいや出血等により入院を余儀なくされる症例も数%の割合で存在する. 欧米では日帰り手術の多くが総合病院に併設された日帰り専門の手術センターにて行われるため, 術後に予期せぬ入院が必要になっても, 迅速に対応できるシステムが確立されている. しかし日本では術後問題に対応できるシステムは確立されておらず, 各施設で独自に対応しているのが現状である. 耳科領域において手術に関与する術後問題のほとんどは術当日に発生する出血とめまいである. このため, 術当日から翌日にかけ入院できればほとんどの問題に対応できるが, 入院施設を有しない診療所で日帰り手術をする際には, 患者医師間の連絡方法の確立と後方支援病院の確保が必須となる. 術後の問題発生割合を考慮した場合, 外耳道皮膚切開や鼓室内操作を必要とする手術に対しては, 入院での施行がより安全であると考えられる. また, 耳鼻咽喉科単科診療所での手術においては, 他科領域の全身疾患合併症, 特に循環器疾患が問題となる. 不整脈や虚血性心疾患は致死的な状態に陥る可能性を否定できず, これら疾患の術中もしくは周術期の発症に対して迅速に対応する知識や体制を整備する必要がある.