日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
オスラー病の鼻出血に対する鼻粘膜皮膚置換術後にみられる再出血部位の検討
市村 恵一
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2019 年 122 巻 5 号 p. 764-769

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抄録

 オスラー病患者の中等症以上の鼻出血に対して施行される鼻粘膜皮膚置換術は有効な治療法であるが, 出血部位の大半を占める鼻腔前部のみを皮膚置換範囲とするため, 出血の完全制御は期待できない. 術後に出血があっても頻度も量も著減するため, 患者の QOL は改善されるが, 再び出血量が増加する例も存在し, その中には再手術に至る症例もある. 本手術の術後出血についての詳細な分析は従来見られていないため, 再出血症例の出血部位を検討した. 対象は1991年8月~2017年12月までの26年間に鼻粘膜皮膚置換術を施行した患者100名中, 術後経過の追えなかった9例を除く91例である. 再出血の多くは移植した皮膚片が生着しなかった部位からのものであるが, 中には置換した皮膚に新生した怒張血管や, 移植部より前方の鼻前庭皮膚の血管からの例も見られた. 術式の変遷による再出血部位の特徴についてみると, 初期に鼻中隔から下鼻甲介下半にのみ皮膚移植していた時期には, いわゆる縫い代とした鼻中隔前上部からの出血が多く, 移植を全周性にしてからは,出血の多くは移植皮膚の脱落部, 特に前上部, 前下部, 下鼻甲介前方付着部であったが, 出血の頻度は減少した. 置換範囲を鼻前庭皮膚深部に伸ばしてからは脱落部が著減したため, 結果として再出血も著減した. 全症例のうち, 21例 (23.1%) に再手術がなされていたが, 術式の変更に伴いその率は減少した.

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