日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
総説
Stage I/II 舌癌に対する予防的頸部郭清省略の意義を検証するための多施設共同臨床試験
花井 信広
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 122 巻 8 号 p. 1107-1112

詳細
抄録

 本研究の目的は Stage I/II (T1-2N0) の舌癌を対象に, 舌部分切除単独が標準治療である舌部分切除 + 予防的頸部郭清術に対して全生存期間において非劣性であることをランダム化比較にて検証することである.

 頭頸部癌の領域は, これまで適切な多施設共同臨床試験が行われてこなかったために, 治療法は施設毎に異なり, エビデンスに乏しい治療が汎用されている現状がある. これまで海外においても日本においても, 早期舌癌の頸部リンパ節郭清に関する標準治療は確立しておらず, 各施設や医師の判断により予防的頸部郭清が行われたり行われなかったりしてきた. 2015年に報告された D'Cruz らのインドの第 Ⅲ 相試験は舌部分切除単独に対する予防的頸部郭清の優越性を示したが, 医療環境や術後フォローアップの診断技術が明らかに異なるため, その結果をそのまま日本の日常診療に外挿することはできないと考えられている. 舌部分切除は口腔内のみで行われるため, 舌部分切除術単独が最善であると考える外科医も多く, 予防的頸部郭清省略の意義の検証が必要である.

 本臨床試験の対象は発生率が人口10万人あたり6人未満/年の希少がんのため, 全国規模の実施体制が不可欠であり, JCOG 頭頸部がんグループにおける多施設共同ランダム化比較第 Ⅲ 相試験 (JCOG1601) として2017年11月末より開始している. そして日本医療研究開発機構 (AMED) の公的研究費「革新的がん医療実用化研究事業」(領域6-2) 希少がんの標準的治療法の開発に関する臨床研究「Stage I/II 舌癌に対する予防的頸部郭清省略の意義を検証するための多施設共同臨床試験 (代表者: 花井信広)」を獲得し運営している.

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top