日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
アレルギー性鼻炎に対する生物学的製剤 (抗体治療薬) の将来展望
松根 彰志
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2020 年 123 巻 2 号 p. 127-129

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抄録

 近年さまざまな疾患, 領域で, 遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジー技術によって作られた免疫グロブリンやサイトカインおよびその受容体に対する抗体が生物学的製剤 (抗体治療薬) として使われ効果を挙げている. 花粉症も含めたアレルギー性鼻炎の新しい保存的治療としては, 舌下免疫療法 (SLIT; sublingual immunotherapy) が有効な治療として注目されているが, 最近, 本領域でも抗体治療薬の導入が保険診療として始まろうとしている. その多くは既に医療現場で使用されているが, 気管支喘息や皮膚疾患などの適応しかないために現時点では鼻副鼻腔炎領域では使いにくい. 抗 IgE 抗体 (Omalizumab) は, 重症喘息に適応のある抗体治療薬であるが, 重症のアレルギー性鼻炎や花粉症への使用が検討されている. 国内の臨床試験でその有効性は確認されている. また, 抗 IL-5 受容体抗体 (Dupilumab) や抗 IL-4, 13受容体抗体 (Benralizumab) が難治性副鼻腔炎に対する治療薬として期待されている. こうした治療薬の作用機序を理解するには, 古典的な Th2 型アレルギー反応および ILC2 自然免疫応答を総合した反応系に関する知識が必要である. 難治性副鼻腔炎である好酸球性副鼻腔炎では, 少なくとも半数で喘息やアレルギー性鼻炎の合併が認められているため, これらの疾患を総じて制御するにはどういう治療が最も適しているかを考える必要がある. さらに, 高額な治療薬であることも考えると, 治療体系の中でどのように位置づけるかという議論も必要である.

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