日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
アレルギー性結膜炎の診断と治療
原 祐子
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2020 年 123 巻 5 号 p. 328-332

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抄録

 近年, アレルギー疾患患者の増加, また低年齢化が問題となっているが, それは眼科でも同様である.

 アレルギー性結膜疾患はⅠ型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患で, 何らかの自他覚症状を伴うものと定義されており, 季節性アレルギー性結膜炎, 通年性アレルギー性結膜炎, アトピー性角結膜炎, 春季カタルに分類される.

 結膜に強い増殖病変を伴う重症型の春季カタルやアトピー性角結膜炎と比較すると, スギ花粉症に伴う季節性アレルギー性結膜炎は眼科的な所見 (細隙灯顕微鏡所見) は軽度ではあるが, 強い掻痒感や眼脂, 流涙などさまざまな症状を引き起こし, 患者の QOL は著しく低下する.

 われわれ眼科医は, アレルギー性結膜炎の治療において, 抗アレルギー点眼薬, ステロイド点眼薬を主軸に, 重症型では免疫抑制点眼薬を組み合わせて行っている. この中でも, 自覚症状の強いアレルギー性結膜炎に対し, ステロイド点眼薬の症状軽減効果が高いことは間違いないが, その副作用のため, 眼科医も細心の注意を払って処方を行っている. 最も注意を要する副作用はステロイド緑内障で, 一定の割合で眼圧上昇を来し, 放置すると視野障害, 視力低下も来し得る. また, 鑑別疾患にも挙げられる感染性結膜炎に対し, 安易にステロイド点眼薬を投与することで病状を重症化させてしまう可能性もある. ステロイド点眼薬の使用をできる限り回避できるよう, 眼科でも抗アレルギー点眼薬の効果的, かつ安全な使用が求められている.

 アレルギー性結膜炎の病型や鑑別などの基本的な点から, 現在の眼科におけるアレルギー性結膜疾患治療の考え方, また眼科専門医以外にも気を付けていただきたい副作用の問題について解説する.

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© 2020 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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