日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
末梢挿入型中心静脈カテーテル先端位置・合併症の左右差比較
高橋 優人正道 隆介高橋 剛史植木 雄志山崎 恵介堀井 新
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2021 年 124 巻 2 号 p. 122-127

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抄録

 末梢挿入型中心静脈カテーテル (peripherally inserted central catheter, PICC) は安全性が高く頭頸部癌の薬物療法でも用いられるが, 留置側の左右差に着目した報告は少ない. PICC 留置後の先端位置移動と合併症発生率の左右差について検討した.

 PICC 留置を行った頭頸部癌145例172件を対象とし後方視的な調査を行った. 留置側は右36件, 左136件で, 留置期間中央値は65日であった. 121例137件で X 線による留置時・留置後の先端位置評価が可能であった. 先端位置を Zone A: 上大静脈下半分と右心房上部, Zone B: 上大静脈上半分と左腕頭静脈合流部, Zone C: 左腕頭静脈に分類し, Zone A・B を適正位置とした. 右側では留置時33件 (100%), 留置後30件 (91%) が適正位置であったのに対し, 左側では留置時97件 (93%), 留置後82件 (79%) が適正位置で, 留置時と留置後では有意な変化を認めた (p=0.001). そのほかの合併症発生率に左右差は認めなかった.

 左側からの PICC 留置では上大静脈右側壁にカテーテル先端が当たり, Zone A への留置率が低い. さらに留置後の体位・肢位の変化により先端が移動し, 適正位置である Zone A・B に留まりにくい. 不適正な先端位置は遅発性の上大静脈壁損傷や血栓症を招くため, 右側からの PICC 留置が望ましいと考えられた.

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