日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
頸部郭清術における副損傷の予防と対応
鈴木 幹男平川 仁
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2021 年 124 巻 7 号 p. 974-981

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抄録

 頭頸部がんは初診時にリンパ節転移が見られることが多く, 頸部リンパ節転移の制御は予後を左右する重要な要因である. 臓器温存や機能温存を目的に頭頸部がん治療に化学放射線治療が広く用いられるようになってきたが, 頸部リンパ節転移の基本治療は頸部郭清術であり, 頭頸部外科医には副損傷に配慮した頸部郭清術の施術が求められている. 頸部郭清のリンパ節転移の解析にて原発巣によって好発転移部位が異なることが明らかになってきたことから, 疾患病態に応じた郭清範囲を選択し, 術後機能障害を減じることができるようになってきた. 本稿では, まず頸部郭清の考え方, 術前準備, 近年広く用いられるようになった選択的頸部郭清術 (肩甲上郭清術, 側頸部郭清術) の基本術式について自験例を中心に示した. 次に頸部郭清術における副損傷として, 神経損傷 (副神経, 頸神経, 顔面神経下顎縁枝, 横隔神経), リンパ管損傷 (乳び瘻), 血管損傷についてその対策を概説した. 神経損傷では, 神経活動モニタリング, リハビリテーションの有用性について, リンパ管損傷では生じた際の取り扱い, 血管損傷ではその予防について強調した.

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