日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
初代培養系を用いたマウス嗅細胞の増殖, 分化の機序の解析
藤原 満
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 100 巻 3 号 p. 332-341

詳細
抄録

新生仔マウス嗅部の細胞を脳アストロサイトと共培養することにより, 嗅細胞の分裂, 成熟から細胞死の過程を直接観察することが可能となるin vitro実験系を作製し, 嗅細胞の増殖, 分化の機序についての解析を行った. この実験系では新生嗅細胞が形態学的な分化とともに神経細胞のマーカー蛋白であるGAP43, NFP, PGP9.5, OMPを発現すること, そして分化した培養嗅細胞は比較的安定であることが示された. またそのほかに基底細胞のマーカーであるケラチンを発現する細胞群の存在も確認された.
培養細胞での細胞増殖因子受容体の発現をRT-PCR法により検索したところ, 線維芽細胞増殖因子 (FGF) の受容体であるFGFR2, FGFR3の発現が検出され, さらにbFGFの発現も確認されたことから, 嗅細胞の増殖, 分化の制御にFGFが関与している可能性が示唆された.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top