日本耳鼻咽喉科学会会報
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Body Tracking Test (BTT) による動的体平衡機能の年齢変化について
吉田 友英
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1997 年 100 巻 7 号 p. 729-739

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抄録

姿勢や歩行などの体平衡機能は小児では年齢とともに向上し, 高齢者では加齢により低下してくる. これまで体平衡機能の年齢による変化は, 重心動揺検査や姿勢保持時間を用いた静的姿勢についての研究が主であった. このため, 動的体平衡機能よりみた年齢変化を知ることも重要と考え研究を進めてきた. 私たちは定量的な刺激を与えて動的体平衡機能をみるための検査法を開発し, これをBody Tracking Test (BTT) として, さらに基本的な検査条件設定について報告してきた. 今回, このBTTを用いて動的体平衡能よりみた年齢による変化について解析を行った.
対象は, ボランティアで健康な516人である. 検査は, BTT装置コンピュータで刺激の設定とデータの記録, 解析をした. 条件は, 視標との距離を100cmに, 足位は閉足位で, 姿勢は直立姿勢とした. 追随機能の評価は, 私どもの『5段階追随評価法』によった.
5段階追随評価法によって, 左右, 前後定速刺激BTTともに成長による変化がみられた. 左右定速刺激BTTでは, 高校生では成人と同様の追随機能がみられたが, 前後定速刺激BTTでは成人のレベルには達していなかった. 加齢による変化は, 左右, 前後定速刺激BTTともに40歳代より追随機能の低下を示した. この結果の違いは, 発達過程のバランスの取り方と老化過程のバランスの取り方に大きな差があることを示している. BTTは, 追随に伴う姿勢制御を行う上で視覚入力と深部知覚入力が大きく関わっている検査法と考えている. また, 追随という動作には反射的な姿勢制御のみならず, どのようにすればうまく追随ができるかという高位の思考過程をも必要とする. そのためBTTでは, 総合的な姿勢制御機構を評価することが出来るのではないかと考えられた.

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