日本耳鼻咽喉科学会会報
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唾液腺疾患の質的診断における穿刺吸引細胞診の検討
耳下腺および顎下腺の腫瘤性疾患について
田中 一仁増田 正純新田 清一小形 章鈴木 理文
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1998 年 101 巻 10 号 p. 1283-1291

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抄録

唾液腺の腫瘤性疾患の質的診断としての穿刺吸引細胞診の信頼性,特に組織型の推定診断の信頼性を検討するため,穿刺吸引細胞診を術後の組織診断と比較した.対象は耳下腺93例,顎下線31例で,悪性腫瘍28例,良性疾患96例の計124例である.結果は悪性の判定のsensitivityは64%,specificityは99%,accuracyは91%であり,fare negativeは10例でその組織診断は腺様嚢胞癌2例,粘表皮癌(高分化型),2例,腺房細胞癌4例,多形腺腫癌2例であり,false positiveは1例でサルコイドーシスであった.組織型が推定できた割合は悪性の判定例で68%,良性のそれで69%であった.この推定された組織型の正診率は悪性腫瘍全体では46%で,扁平上皮癌,腺癌,悪性リンパ腫で高く,腺様嚢胞癌,粘表皮癌,
腺房細胞癌で低く,一方多形腺腫のそれは73%,ワルチン腫瘍は82%であった.また組織型の推定診断のpredictive valueは悪性腫瘍で100%.多形腺腫で91%,ワルチン腫瘍で100%であった.以上から唾液腺の腫瘤性疾患の質的診断としての穿刺吸引糊胞診は鍵性腫瘍や扁平上皮癌,腺癌,悪性リンパ腫などの高悪性度腫瘍では信頼性が高く,腺様嚢胞癌や低悪性度腫瘍の粘表皮癌と腺房細胞癌ではsensitivityや組織型の正診率は低い結果であつた.

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