1999 年 102 巻 11 号 p. 1227-1233
著者らの教室で行っている耳下腺腫瘍の術中迅速病理組織診 (FSD) について検討した. 腫瘍の悪性診断率は, 167例の耳下腺腫瘍症例において, 全体で98.8%, 良性腫瘍で99.3%, 悪性腫瘍で95.8%であり, 過去のFSDや穿刺吸引細胞診 (FNA) の成績に比しても良好であり, 有用な方法であると考えられた. 一方, 組織診断率は, 腫瘍全体で94.0%, 良性腫瘍で97.2%, 悪性腫瘍で75.0%であった. 過去のFSDやFNAの報告と比べた場合, 良性腫瘍については良好な成績であったが, 悪性腫瘍については平均的な値であった. FSDは耳下腺腫瘍の診断に有効性が高いと考えられるが, 悪性腫瘍の組織診断に際しては, 切除標本の再検査を行うなど, より注意深い検討が必要と思われた.