日本耳鼻咽喉科学会会報
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102 巻, 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 伊藤 博隆, 高木 繁, 中村 善久, 西村 穣, 鈴木 元彦, 坂井 邦充, 村上 信五
    1999 年 102 巻 11 号 p. 1221-1226
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎に対するレーザー手術はこれまで通年性の症例の効果について報告されている. しかし, 花粉症にたいするアレルギー症状抑制効果については報告されていない. その理由は年毎に花粉の飛散量が異なり, 抗原暴露量が毎日の天候などの条件で一定でなく, 症状発現に差が生じる. その結果効果判定が難しくなるためである. したがって, 今回の検討は飛散前にレーザー治療を行い, 対象として薬剤による早期治療を行った群, 原則無治療群との間でスギ花粉飛散期にそれぞれの症状について比較検討を行った. レーザー治療は従来より著者らが報告しているように接触型Nd: YAGレーザーによって行った. レーザー手術は1回照射により, 総エネルギーは500-600ジュールとした. その結果アレルギー症状抑制にレーザー治療が有効であることが認められた. しかし, 飛散開始直後の早期・初期は薬剤治療群と差を認めなかったが, 中期・終期には症状は薬剤治療群より良い結果であったが有意差は認めなかった. このことはアレルギー反応の場である固有層がレーザーによる凝固で少なくなっていることとレーザー治療により上皮が扁平化して抗原の取り込みが少なくなっていることを推測させる結果であった.
  • 岩井 大, 山下 敏夫, 泉川 雅彦, 堤 俊之, 柿本 晋吾, 熊沢 博文, 李 進隆, 渡邊 尚代, 南 豊彦
    1999 年 102 巻 11 号 p. 1227-1233
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    著者らの教室で行っている耳下腺腫瘍の術中迅速病理組織診 (FSD) について検討した. 腫瘍の悪性診断率は, 167例の耳下腺腫瘍症例において, 全体で98.8%, 良性腫瘍で99.3%, 悪性腫瘍で95.8%であり, 過去のFSDや穿刺吸引細胞診 (FNA) の成績に比しても良好であり, 有用な方法であると考えられた. 一方, 組織診断率は, 腫瘍全体で94.0%, 良性腫瘍で97.2%, 悪性腫瘍で75.0%であった. 過去のFSDやFNAの報告と比べた場合, 良性腫瘍については良好な成績であったが, 悪性腫瘍については平均的な値であった. FSDは耳下腺腫瘍の診断に有効性が高いと考えられるが, 悪性腫瘍の組織診断に際しては, 切除標本の再検査を行うなど, より注意深い検討が必要と思われた.
  • 松村 道哉, 千田 英二, 柏村 正明, 福田 諭, 佐藤 信清, 犬山 征夫
    1999 年 102 巻 11 号 p. 1234-1241
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1996年6月から97年12月までに難聴を疑われ当科を受診した乳幼児69名131耳, および同期間に早期産低体重にて当院NICUに入院中の乳児32名63耳を対象にILO88を使用しTEOAEを測定し, 乳幼児での聴覚スクリーニングとしてのTEOAEの有用性について検討を行った.
    1) 全194耳での測定時間の平均値±1標準偏差は, 85.5±38.2秒であった. 2) ILO88の初期設定での測定の場合, 刺激音圧に63.1~88.7dBの大きなばらつきが認められた. 刺激音圧の設定変更を複数点で行ったところ, 80±5dBで反応はほぼ飽和の傾向を呈したが, 75dB以下では低反応であった. 3) 80±5dBの刺激音圧のもののうち, ABR閾値が30dB以下の乳児 (生後2カ月以下) 28耳, 幼児 (1歳2カ月以上) 30耳での検討を行ったところ, TEPが乳児平均17.5±5.4dB, 幼児平均14.2±4.0dB, WReが乳児平均83.1±16.3%, 幼児平均69.4±28.0%とTEPおよびWReともに乳児に有意に高い結果であった (p<0.05). また周波数別では, 4kHz, 5kHzでの高周波数帯域でEcho PowerとReproducibilityともに乳児に有意に高い結果が得られた (p<0.001).
    この結果によりTEOAEは短時間に簡便に測定することができ, さらに新生児期での臨床応用では高音域の評価も期待できると考えられた. また高次神経系の未発達のためと考えられるABR反応不良例においても蝸牛機能の判定が可能であり, 他覚的な乳幼児聴覚スクリーニング法としてTEOAEは有用と思われ, 今後の臨床応用の普及が期待される.
  • 八田 千広, 小笠原 寛, 栗花落 昌和, 沖田 純, 阪上 雅史
    1999 年 102 巻 11 号 p. 1242-1248
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1986年から1997年の12年間に治療を行った舌癌症例中, 特にT2舌癌症例を大きさでearlyT2 (≦3cm), lateT2 (>3cm) の2群に分け, 頸部リンパ節転移との関係を中心に検討した. この期間に当科で治療を行った舌癌新鮮例は男性47例, 女性25例計72例認め, そのうちT2舌癌症例は33例 (early T2: 17例, lateT2: 16例) 認めた. 全症例の死因特異的5年累積生存率は65.9%で, T病期別に生存率をみるとT1: 95%, T2: 77.5% (earlyT2: 94.1%, lateT2: 59.7%), T3: 24.3% (4年累積生存率), T4: 0%と, T病期が進行するほど予後が不良の傾向を認めた. 病理組織学的頸部リンパ節転移の有無で生存率を比較するとpN-は90.8%, pN+は21.7%で両群間に有意差を認め (p<0.05), 頸部リンパ節転移の制御が予後因子として重要であった. 後発リンパ節転移を含む全経過中の頸部リンパ節転移率はT1: 5.0%, early T2: 35.3%に対してlate T2は75.0%と高頻度に頸部リンパ節転移を認めた. 後発頸部リンパ節転移の制御率はearly T2: 75.0%, lateT2: 33.4%であった. 以上のことよりT2舌癌はearlyとlateでは臨床像が異なり予後を考慮した亜分類が必要であった. また治療についてはearly T2NO舌癌は潜在性頸部リンパ節転移率は低く, リンパ節転移発見後の頸部郭清で制御可能なことが多いため, 初期治療はT1舌癌と同様に舌部分切除術のみ行い予防的郭清は行わず経過観察が望ましく, 一方, late T2舌癌は潜在性リンパ節転移率が高く制御が困難なため, T3舌癌同様にpull-through法によるen blockな舌切除, 頸部郭清術を行うのが望ましいと思われた.
  • 宮坂 宏恵
    1999 年 102 巻 11 号 p. 1249-1257
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼓室形成術の術後に高度感音性難聴を来すことがある. その要因の1つとして考えられるドリル振動の内耳への影響について検討したので報告した. 実験動物として生後約1カ月のモルモットを用い, 側頭骨にカッティングバーで60秒間振動刺激を与えた. そして蝸牛における血管条及び蝸牛有毛細胞の変化を観察した. トレーサーとしてHRP (horseradish peroxidase) を静注し, 光学顕微鏡, 電子顕微鏡で観察した. 血管条血管は両側ともに上部回転 (第3回転), 下部回転 (基底回転) から無作為に3カ所ずつ切片を作製し, HRPの漏出程度によってType I~IVに分類した. 有毛細胞は細胞内に1つでも空胞が認められたものを空胞細胞陽性とした. ドリル振動刺激をすることで, 基底, 第3回転ともにHRPが激しく漏出している血管条血管 (Type III, IV) が約10%程度認められた. また, 中間細胞でミトコンドリアに一部変性像を認めた. 回転別による血管透過性の程度には有意差はなかった. HRPの血管条血管からの漏出経路は, 従来知られているpinocytotic vesicleによる輸送や, 内皮細胞間隙を通過する経路に加え血管内皮細胞の管状様構造を通しての経路が観察された. この構造内には通常はHRPが認められないことから, 振動による傷害でチャネルが開いたと考えられた. 有毛細胞では, ドリル振動刺激側は基底, 第3回転ともに細胞内構造物を認めない空胞を多数認めた. また, 聴毛の消失は今回ほとんど認められなかったので, 空胞出現がドリル刺激によって最初に出現する有毛細胞の変化と考えられた. もしヒトにおいても同様な変化が蝸牛に発生するならば, ドリル操作の過ちで直接耳小骨に触れることがなく単に側頭骨へのドリル操作のみでも, 内耳に障害を生ずる可能性があると考えらえた.
  • 志賀 清人, 舘田 勝, 横山 純吉, 西條 茂
    1999 年 102 巻 11 号 p. 1258-1261
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    我々は無症候性の先天性気管狭窄症の成人例を経験した. 患者は42歳の女性で舌の腫瘤と疼痛を主訴に舌癌の治療を目的として当科に入院した. 入院前に呼吸困難, 喘鳴, 反復性肺炎などの既往はなく趣味で卓球を楽しむなど日常生活に特に差し障りはなかった. 理学的所見, 心電図, 呼吸機能, 血液検査には軽度の貧血などの他には特記すべき異常は認められなかった. 入院時胸部X線写真では気管陰影の狭小化 (直径6mm) が認められたが, この時点では気管狭窄症との診断はつけることができなかった. 舌癌の根治術を目的に全身麻酔を開始したところ, 麻酔医が経口挿管を試みたが成功せず気管切開術を施行した. 気管は輪状軟骨直下より狭窄が始まり気管輪が完全なリング状を呈していた. 内径5mmの気管チューブを用いて麻酔の維持を行ったが気道内圧抵抗が高く手術時間が制限される結果となった. 術後気管内腔に痂皮が付着し一時チェックバルブ状の閉塞のためCO2ナルコーシスに陥ったが改善, 加湿を常時行うことで痂皮の付着を減少できた. 第17病日には気管切開口を閉鎖することが可能となった. この症例の経験から健康成人の中に極めてまれではあるが生下時, 幼小児期の危険な時期を乗り切ることができた先天性気管狭窄症の患者が存在することが明らかとなり, 日常臨床の場でも常にこの疾患の存在を心に留めなければならないと思われた.
  • 異物摘出 (鼻腔, 外耳, 咽頭, 食道)
    斎藤 等
    1999 年 102 巻 11 号 p. 1262-1265
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
  • 老木 浩之
    1999 年 102 巻 11 号 p. 1266-1267
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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