1996年6月から97年12月までに難聴を疑われ当科を受診した乳幼児69名131耳, および同期間に早期産低体重にて当院NICUに入院中の乳児32名63耳を対象にILO88を使用しTEOAEを測定し, 乳幼児での聴覚スクリーニングとしてのTEOAEの有用性について検討を行った.
1) 全194耳での測定時間の平均値±1標準偏差は, 85.5±38.2秒であった. 2) ILO88の初期設定での測定の場合, 刺激音圧に63.1~88.7dBの大きなばらつきが認められた. 刺激音圧の設定変更を複数点で行ったところ, 80±5dBで反応はほぼ飽和の傾向を呈したが, 75dB以下では低反応であった. 3) 80±5dBの刺激音圧のもののうち, ABR閾値が30dB以下の乳児 (生後2カ月以下) 28耳, 幼児 (1歳2カ月以上) 30耳での検討を行ったところ, TEPが乳児平均17.5±5.4dB, 幼児平均14.2±4.0dB, WReが乳児平均83.1±16.3%, 幼児平均69.4±28.0%とTEPおよびWReともに乳児に有意に高い結果であった (p<0.05). また周波数別では, 4kHz, 5kHzでの高周波数帯域でEcho PowerとReproducibilityともに乳児に有意に高い結果が得られた (p<0.001).
この結果によりTEOAEは短時間に簡便に測定することができ, さらに新生児期での臨床応用では高音域の評価も期待できると考えられた. また高次神経系の未発達のためと考えられるABR反応不良例においても蝸牛機能の判定が可能であり, 他覚的な乳幼児聴覚スクリーニング法としてTEOAEは有用と思われ, 今後の臨床応用の普及が期待される.
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