日本耳鼻咽喉科学会会報
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慢性副鼻腔炎におけるEosinophil Cationic Protein濃度の検討
春名 眞一吉川 衛飯田 誠鴻信 義島田 千恵子小澤 仁森山 寛
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1999 年 102 巻 9 号 p. 1015-1021

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抄録

好酸球顆粒蛋白のeosinophil cationic protein (ECP) を指標として, 慢性副鼻腔炎と好酸球の関連性について検討した. 血中好酸球数とECP濃度と共に, 細胞診用ブラシを中鼻道に挿入擦過して中鼻道粘膜表層ECP濃度を測定した. 血中好酸球数と血中ECP濃度との間に中等度の相関関係 (r=0.543, p<0.01) と, 中鼻道粘膜表層ECP濃度と組織上の好酸球数との間には高度の相関関係 (r=0.847, p<0.001) を認めた. また組織上のEG2陽性細胞数と中鼻道粘膜表層ECPとの間には顕著な相関関係 (r=0.805, p<0.01) を認め, 今回計測した中鼻道粘膜表層ECP濃度は副鼻腔粘膜局所のECP量を反映していると考えられた. 対照群10例と鼻茸を伴う高度慢性副鼻腔炎群14例との両群の血中好酸球数, 血中ECP濃度と鼻道粘膜表層ECPは, 喘息合併高度慢性副鼻腔炎群14例と比較して共に有意 (p<0.01) に低値を示した. さらに内視鏡下鼻内手術後の成績とECP濃度との関連性を検討したところ, 中鼻道粘膜表層ECPは術後良好群7.10 (2.10-10.25) μg/l, 不良群42.45 (27.50-62.30) μg/lを呈し, 不良群において中鼻道局所のECP濃度が有意 (p<0.01) に高値を示した. また血中ECP濃度についても不良群でECP濃度が有意 (p<0.05) に高値を示した. 以上より, 慢性副鼻腔炎の病態および予後に好酸球が大きく関与していることが示唆された. 特にESSの術後評価において血中ECP濃度とともに中鼻道粘膜表層ECPは, その術後経過を推測しうる一つの指標となると考えられた.

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