日本耳鼻咽喉科学会会報
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102 巻, 9 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 春名 眞一, 吉川 衛, 飯田 誠, 鴻信 義, 島田 千恵子, 小澤 仁, 森山 寛
    1999 年 102 巻 9 号 p. 1015-1021
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    好酸球顆粒蛋白のeosinophil cationic protein (ECP) を指標として, 慢性副鼻腔炎と好酸球の関連性について検討した. 血中好酸球数とECP濃度と共に, 細胞診用ブラシを中鼻道に挿入擦過して中鼻道粘膜表層ECP濃度を測定した. 血中好酸球数と血中ECP濃度との間に中等度の相関関係 (r=0.543, p<0.01) と, 中鼻道粘膜表層ECP濃度と組織上の好酸球数との間には高度の相関関係 (r=0.847, p<0.001) を認めた. また組織上のEG2陽性細胞数と中鼻道粘膜表層ECPとの間には顕著な相関関係 (r=0.805, p<0.01) を認め, 今回計測した中鼻道粘膜表層ECP濃度は副鼻腔粘膜局所のECP量を反映していると考えられた. 対照群10例と鼻茸を伴う高度慢性副鼻腔炎群14例との両群の血中好酸球数, 血中ECP濃度と鼻道粘膜表層ECPは, 喘息合併高度慢性副鼻腔炎群14例と比較して共に有意 (p<0.01) に低値を示した. さらに内視鏡下鼻内手術後の成績とECP濃度との関連性を検討したところ, 中鼻道粘膜表層ECPは術後良好群7.10 (2.10-10.25) μg/l, 不良群42.45 (27.50-62.30) μg/lを呈し, 不良群において中鼻道局所のECP濃度が有意 (p<0.01) に高値を示した. また血中ECP濃度についても不良群でECP濃度が有意 (p<0.05) に高値を示した. 以上より, 慢性副鼻腔炎の病態および予後に好酸球が大きく関与していることが示唆された. 特にESSの術後評価において血中ECP濃度とともに中鼻道粘膜表層ECPは, その術後経過を推測しうる一つの指標となると考えられた.
  • 笹村 佳美, 工藤 典代
    1999 年 102 巻 9 号 p. 1022-1027
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    乳幼児の呼吸障害の原因としてアデノイド肥大・口蓋扁桃肥大による上気道閉塞があり, 呼吸停止, 心停止に至ることもある. 今回我々は2歳未満でアデノイド切除・扁桃摘出術 (以下アデ切除・扁摘とする) を施行した症例について臨床的検討を行ったので報告する.
    1988年10月~1998年2月までに生下時より続くいびき, 睡眠時呼吸障害を主訴とし, これらの原因としてアデノイド肥大・口蓋扁桃肥大が強く疑われ, 当科でアデ切除・扁摘を施行した18症例 (男児17症例, 女児1症例) を対象とした.
    18症例中13症例にアデ切除・両側扁摘を, 3症例にアデ切除のみを, 2症例にアデ切除・片側扁摘を施行した.
    アデ切除・両側扁摘の13症例は術後に睡眠時呼吸障害は呈さず, 経過良好であるが, アデ切除3症例のうち2症例, アデ切除・片側扁摘2症例のうち2症例はアデノイドの再増殖, 残存扁桃の代償性肥大により睡眠時呼吸障害を呈し, 再手術が必要であった.
    全症例について, 術後易感染性は認めなかった.
    乳幼児のアデノイド・扁桃肥大による呼吸障害は放置せず早期の対策が望まれ, 手術的治療も考慮すべきと考えられた. また, 術式はアデノイドの再増殖, 残存扁桃の代償性肥大の可能性があるため, アデ切除・両側扁摘が望ましいと考えられた.
  • 飯塚 尚久, 山根 雅昭, 佐藤 恒正
    1999 年 102 巻 9 号 p. 1028-1035
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    機能性難聴に対し従来のオージオメータを用い両側に同時に音刺激を与え, 本来の純音聴力域値を周波数ごとに定量的に推測可能な聴力検査法を開発した. 機能性難聴の場合, 1側性, 両側性にかかわらず片側ごとの純音聴力検査を行うことが聴力レベルの上昇を招くと考え, 両耳音刺激により頭蓋正中に形成する音像の有無およびその位置を指標として検査を行い, 頭蓋に形成する音像のオージオグラム上の最小可聴域値を正中音像形成域値と呼称し測定した. 原理は聴力に左右差の有無にかかわらず, 両耳同時に各々純音域値上の左右同一レベルの音刺激を与えると頭蓋正中に音像を形成するが, 左右差を設定すると刺激レベルの大きい側に音像は偏倚することによる. そこで正常聴力者10名に, 両耳同時に各周波数のバンドノイズを50dBHLで与え音像が頭蓋のどこに形成されるか調べると, 全例頭蓋中央の後頭部付近に形成され, 純音聴力域値と正中音像形成域値を比較すると有意差はなかった. 同様に, 1側感音難聴患者15名を検査すると, 患側の正中音像形成域値と純音聴力レベルは有意差がなかった. 臨床応用として機能性難聴患者8例 (両側心因性難聴1例, 1側心因性難聴6例, 両側検診難聴1例) に検査を行い1側および両側に分類した. 1側症例は全例患側純音聴力レベル以下の刺激音により正中音像を形成した. 両側症例の1例は, 頭蓋正中音像を形成せず両耳の音が同等になるレベルを同様な手技により測定すると, 見かけ上の純音聴力レベル以下で正中音像を形成した. 他の1例は, 初回検査時は正中音像形成域値が骨導値に一致したが再検査時, 正中音像形成域値は見かけ上の聴力レベルに比しきわめて低値を示した. 8例中2例で回復後の聴力と正中音像形成域値を比較し, 1例は回復後の聴力と一致, 1例は回復時純音聴力レベルより20dB大きくなった. 以上より本法は機能性難聴の真の聴力レベルの推定が可能な検査法であると結論した.
  • 生井 明浩, 池田 稔, 山内 由紀, 野村 泰之, 吉田 晋也, 木田 亮紀
    1999 年 102 巻 9 号 p. 1036-1041
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    骨導域値上昇を伴う急性中耳炎11例12耳を経験し報告した. 対象症例は, 1996年11月から1997年5月までの7カ月間に当科外来を受診した成人の急性中耳炎のうち, 20dB以上の骨導域値上昇を3周波数以上に認めたものを対象とした. 症例は, 男性8例9耳, 女性3例3耳の計11例, 12耳であり, 年齢は19歳から70歳 (平均47.7歳) であった. 聴力障害については, 治癒9例 (10耳), 著明回復1例 (1耳), 回復1例 (1耳) と予後は良好のものが多かったが, 感音性難聴が残存するものもあった. 7耳で耳漏細菌検査を行い, そのうちの3耳が, ペニシリン耐性肺炎球菌が起炎菌と考えられた. 急性中耳炎では, 骨導域値上昇を伴う例もあるので, 積極的な聴力検査が必要と思われた. またその起因菌として種々の耐性菌が関与している可能性があることから, 以前にも増して細菌検査の必要性が示唆された. また, 耳漏のみられない例では, 細菌検査の面からも積極的な鼓膜切開の施行が必要であると思われた.
  • 田口 享秀, 椙山 久代, 高橋 明洋, 森田 豊彦, 石戸谷 淳一
    1999 年 102 巻 9 号 p. 1042-1045
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    副鼻腔アスペルギルス症は, 多くは上顎洞に発症し蝶形骨洞に罹患するものは少ない. また, 副鼻腔アスペルギルス症は大きく非侵襲型と侵襲型に分けられており, このような侵襲度の違いは宿主側の防御因子の低下なのかそれとも菌側の攻撃因子によるものなのか議論のあるところである.
    今回, 我々は転帰の異なる蝶形骨洞アスペルギルス症の3例を経験した. これらの症例の検討により, 副鼻腔のアスペルギルス症の侵襲度の違いに宿主の免疫能の関与が考えられた. さらに, 副鼻腔アスペルギルス症の侵襲度や予後が異なる要因として罹患部位, 患者背景および診断と治療のタイミングについて文献的考察を行った.
  • 鼓室 (換気) チューブ留置術
    星野 知之
    1999 年 102 巻 9 号 p. 1046-1049
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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