日本耳鼻咽喉科学会会報
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急性感音難聴: 1診療所における6年間227症例の検討
小川 浩司
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2001 年 104 巻 10 号 p. 1034-1043

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抄録

診療所における急性感音難聴の実態を明らかにする目的で, 当院にて診療した症例について検討した. 平成6年10月より12年9月までの6年間に17, 146名の患者が来院したが, 急性感音難聴は227例 (1.3%) あった. 中等度以上の突発性難聴は45例 (20%), 急性低音障害型感音難聴は111例 (49%), それ以外の軽症の突発性難聴は35例 (15%), メニエール病が13例 (6%), 回転性めまいを伴った急性低音障害型感音難聴が9例 (4%) あった. その他の難聴14例 (6%) は, 音響外傷によるものが7例, 心因性, ムンプス, 聴神経腫瘍がそれぞれ1例あり, 外リンパ瘻, 糖尿病性腎症によるものではないかと思われた症例が1例ずつあった. 側頭部外傷後の難聴が2例あり, 内耳振盪によるものではないかと考えた.
中等度以上の突発性難聴の場合, 発症から1週間以内に治療をはじめた群では60%が著明回復以上だったが, 8日以後にはじめた群では著明回復以上のものはなかった. 急性低音障害型感音難聴は男女比1: 2.3と女性に多く, 予後は良く, 不明例を除けば79%が治癒であった. 予後不明の者が19名 (17%) いたが, 経過がよかったので, 最終的確認前に通院しなくなったのではないかと想像する. 他の原因不明の軽症難聴は著明回復以上が58%で, 予後は比較的に良かった. メニエール病の聴力障害は予後がよくなかった. 音響外傷による難聴は水平型の高度低下を除けば予後はよい. 小児の心因性難聴は治癒したが, ムンプスによる1例は一側が聾となった. 中等度以上の突発性難聴の22%, 音響外傷以外の突発難聴では, 29%の患者は予後不明であったが, 重い症例や原因がはっきりしない場合は患者自ら大きな施設や専門病院を受診するからではないかと考える.

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