日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
耳鳴の大きさに影響を及ぼす要因について
数量化理論による解析
末田 尚之白石 君男福與 和正
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 104 巻 6 号 p. 694-702

詳細
抄録

「耳鳴の大きさ」に影響を及ぼす要因と各要因間の関係を数量化理論II類を用いて検討を行った. 対象は「標準耳鳴検査法1993」に準じて耳鳴検査を行った一側性耳鳴患者184名とした. 自覚的検査の「耳鳴の大きさ」の回答から, 対象は「小さい」, 「中くらい」, 「大きい」の3つのグループに分類された.
解析の結果, 得られた2つの解を第1軸と第2軸としたとき, 第1軸は「小さい」と「大きい」グループを, 第2軸は「中くらい」と「大きい」グループを主に判別していた. 相関比から「耳鳴の大きさ」に対しては第1軸の影響が大きく, 耳鳴音の高低感, 耳鳴の気になり方, 診断名, ピッチ・マッチ周波数, 不眠症状, 年齢, ラウドネス (HL), 罹病期間, ラウドネス (SL) の各要因の影響が強かった. カテゴリーウェイトからは高低感が高い耳鳴は大きい方に, 低い耳鳴は小さい方に影響していた. 一方, 高音のピッチ・マッチ周波数はやや小さい方に, 中・低音のピッチ・マッチ周波数は大きい方に影響しており内容は一致していなかった. 「高い音」と「低い音」といった音印象には「音の大きさ」の意味が含まれていると考えられた.
また, 突発性難聴や眩暈に伴う耳鳴は「耳鳴の大きさ」が小さい方に, 老人性難聴は大きい方に影響していた. このように突発的な難聴や眩暈などの症状の存在は「耳鳴の大きさ」に影響を与えることが示唆された. ラウドネス (HL) とラウドネス (SL) のカテゴリーウェイトの内容は「耳鳴の大きさ」とやや関係が認められるものの, 全体的には必ずしも大きな要因ではなかった. 「耳鳴の大きさ」と「耳鳴の気になり方」は互いに強い影響を与えていた. 「耳鳴の大きさ」を評価する上で以上のような要因を総合的に考慮する必要があると結論した.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top