日本耳鼻咽喉科学会会報
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104 巻, 6 号
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  • 飛田 正, 三島 陽人, 加瀬 康弘, 飯沼 壽孝
    2001 年 104 巻 6 号 p. 663-667
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (はじめに) 一般に鼻腔通気度に最も大きな影響を与える部位は多くの日本人では鼻腔断面積が最少となる下鼻甲介前端付近に相当する. 今回, 鼻閉改善目的で施行した下鼻甲介切除術において従来の切除法 (全体法) と下鼻甲介前方のみを切除する切除法 (前方法) の2術式のいずれかを施行し, 鼻腔開存性と鼻閉感変化を比較検討した.
    (対象と方法) 平成9年7月から平成12年3月までの63症例で, 全体法を32例 (下鼻甲介粘膜切除術21例, レーザー下鼻甲介粘膜蒸散術11例, 前方法を31例 (下鼻甲介粘膜切除術18例, レーザー下鼻甲介粘膜蒸散術13例) において両側鼻腔に施行した. Acoustic Rhinometry (ARと略) 曲線によって鼻腔前方容積, 後方容積, 全体容積, 最小鼻腔断面積を術前, 術後に測定した. また鼻閉感については, Visual Analog Scale (VASと略) によりAR測定時に併用して計測した.
    (結果) AR曲線により測定された術前術後の比較で全体法ではすべて (鼻腔前方容積, 後方容積, 全体容積) において術後に有意な増加を示したが, 前方法では, 鼻腔前方容積後方容積には有意な増加を示したが, 全体容積には有意差を認めなかった. 両術式の2群間の術後結果の比較では, 全体法において鼻腔後方容積が有意な増加を示した. VASにより測定された鼻閉感は術前術後の比較で全体法, 前方法いずれも術後に有意な改善を示したが, 2群間の術後結果での比較では有意差を認めなかった.
    (結論) AR曲線で最小鼻腔断面積を示す下鼻甲介前方部位の断面積のみを増加させる前方法と, それに加えて鼻腔後方容積をも増加させる全体法と比較し術後の鼻閉感改善に推計学上有意差を認めなかった.
  • 藤井 正人, 山下 拓, 石黒 隆一郎, 田代 昌継, 大野 芳裕
    2001 年 104 巻 6 号 p. 668-674
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌集学的治療におけるNeoadjuvant Chemotherapy (NAC) を医療経済の面から検討した.
    対象は1993年1月より1996年12月までに当院で初回治療を行ったstageIII, IVの舌, 中咽頭扁平上皮癌症例22例で, これらに対してNACとしてCDDP, 5-FU併用療法を1コース行いPR以上の効果が得られた場合に1コース追加し根治的放射線療法60Gy, またはカルボプラチン併用多分割照射72Gyを行った. NACがNC以下の場合は根治手術を行った.
    通常の放射線療法を施行した4例 (NAC照射群) と多分割照射を施行した9例 (NAC多分割照射群), 及びNACの後再建術を伴う拡大全摘術を施行した9例 (NAC手術群) に対して各々の入院期間, 医療費につき検討した. 平均入院期間はNAC照射群で89.3日, NAC多分割照射群で92.0日, NAC手術群で113.3日であった. 平均医療費は各々238700点, 264846点, 459468点であり, その中で化学療法の占める費用は各々38473点で16.5%, 44802点で16.9%, 23451点, 5.1%であった. 化学療法とそれに伴う画像診断, 検査, 化学療法前後の看護料などの費用を合わせると各々130196点54.5%, 150046点55.7%, 113839点24.8%となり大きな割合を示した.
    これらから, NACの医療費に占める割合は臓器機能温存治療ではその約半分を占めることが判明し, 今後は機能温存によって得られるQOLの評価を行い費用-効用分析を行うことによってこれらの医療費を評価すべきと考える. 一方, NAC手術群では, 他の群と比較して医療費が高額で入院期間も長く, 手術を施行する場合のNACは医療経済上の問題が多いと考えられる. 今後はNACの効果をあらかじめ判断する手法を開発し化学療法感受性に基づいてNAC施行症例を選択することが必要と考えられる.
  • 高木 大, 福田 諭, 中丸 裕爾, 犬山 征夫, 間口 四郎, 飯塚 桂司
    2001 年 104 巻 6 号 p. 675-681
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    釧路地方におけるアレルギー性鼻炎患者についてCAP RASTの陽性率を検討した. また当地方の花粉の飛散状況もあわせて調査し, 札幌での報告と比較し, その地域特異性について検討した. 平成10年4月1日から平成12年3月31日までに市立釧路総合病院耳鼻咽喉科を受診した患者でアレルギー性鼻炎様症状を示し, CAPRASTを施行した結果, アレルギー性鼻炎の診断を下した107名を対象とした. また, 釧路地方でのシラカンバとイネ科花粉について飛散量を調査し, 札幌での飛散量と比較検討した. CAP RASTの結果は花粉類の陽性率ではオオアワガエリが22.4%と最も高く, 以下ハルガヤ17.7%, タンポポ15.0%, シラカンバ14.0%, ヨモギ12.1%, ハンノキ11.2%, ブタクサ8.4%の順であった. シラカンバ花粉の飛散量は釧路では5月下旬から6月上旬にかけて飛散のピークがみられた. 札幌では4月下旬から5月にかけて飛散がみられ, ピークは5月上旬頃であり, 釧路では約2週間程度ピークが遅れていた. また, シラカンバRAST陽性患者の初診月は6月が多く, 時期的にも一致していた. イネ科花粉の飛散時期は釧路地方では札幌に比し約1カ月遅れていた. 釧路地方の花粉症ではイネ科花粉症が最も多く, シラカンバがそれに次ぐ形になっており, シラカンバ花粉症が近年増加している札幌周辺とは若干異なった結果になった. これらの結果については釧路地方の気候等の地域的特徴が影響しているものと思われた.
  • 坂下 哲史, 久保 武志, 久内 一史, 上野 慶太, 陽川 知江, 柴田 敏之, 山根 英雄, 楠木 誠, 和田 匡史, 鵜山 太一
    2001 年 104 巻 6 号 p. 682-693
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    グリセロールテストの際に耳音響放射 (OAE) を蝸牛機能のモニタリング検査として利用することの臨床的有用性について検討した. 対象はメニエール病症例22例22耳で, グリセロールテスト前後に誘発耳音響放射 (TEOAE) および歪成分耳音響放射 (DPOAE) を測定した. TEOAEはnon-linear click刺激で測定し, 反応全体のtotal echo power (TEP) と中音域 (1000~2000Hz) 成分のfiltered echo power (FEP) を検討指標とした. DPOAEはF2=1000, 1500, 2000Hzの3周波数で入出力曲線を記録し, 曲線上の最大出力レベルと検出閾値を指標とした入出力曲線の変化に基づいて評価した. 変化所見の判定では, 聴力正常耳の2回のOAE測定データから設定した測定誤差の基準を超える各指標値の変化を有意とし, 蝸牛機能の改善を示す変化を陽性改善所見とした.
    グリセロールテストの結果にかかわらず, 中音域 (1000, 2000Hz) の純音聴力閾値に改善があれば, 両OAEともに陽性改善所見が認められたが, 聴力改善がみられなくてもOAEで陽性所見が得られる場合があった. TEOAEではTEPよりもFEPで陽性所見が得られることが多かった. DPOAEでは3周波数のうち2000Hzのみで所見陽性となることはなかった. 両OAEの改善所見の陽性率はともに高かったが, 特にDPOAEでは聴力改善の有無にかかわらず極めて高率であった.
    今回の検討より, OAEはグリセロールテストの際の蝸牛機能の変化を純音聴力検査よりも鋭敏に捉えることができることが判明した. またTEOAEの指標としてはFEPが適当であり, DPOAEは1000Hzと1500Hzを測定し評価するのが実際的と考えられたが, 内リンパ水腫診断検査としての感度の高さを考えるとTEOAEよりもDPOAEの方が実際の応用には適していると考えられた. したがって, OAEをグリセロールテストの補助検査として利用することは臨床的に非常に有用であり, 内リンパ水腫の診断率の向上が期待できると結論した.
  • 数量化理論による解析
    末田 尚之, 白石 君男, 福與 和正
    2001 年 104 巻 6 号 p. 694-702
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    「耳鳴の大きさ」に影響を及ぼす要因と各要因間の関係を数量化理論II類を用いて検討を行った. 対象は「標準耳鳴検査法1993」に準じて耳鳴検査を行った一側性耳鳴患者184名とした. 自覚的検査の「耳鳴の大きさ」の回答から, 対象は「小さい」, 「中くらい」, 「大きい」の3つのグループに分類された.
    解析の結果, 得られた2つの解を第1軸と第2軸としたとき, 第1軸は「小さい」と「大きい」グループを, 第2軸は「中くらい」と「大きい」グループを主に判別していた. 相関比から「耳鳴の大きさ」に対しては第1軸の影響が大きく, 耳鳴音の高低感, 耳鳴の気になり方, 診断名, ピッチ・マッチ周波数, 不眠症状, 年齢, ラウドネス (HL), 罹病期間, ラウドネス (SL) の各要因の影響が強かった. カテゴリーウェイトからは高低感が高い耳鳴は大きい方に, 低い耳鳴は小さい方に影響していた. 一方, 高音のピッチ・マッチ周波数はやや小さい方に, 中・低音のピッチ・マッチ周波数は大きい方に影響しており内容は一致していなかった. 「高い音」と「低い音」といった音印象には「音の大きさ」の意味が含まれていると考えられた.
    また, 突発性難聴や眩暈に伴う耳鳴は「耳鳴の大きさ」が小さい方に, 老人性難聴は大きい方に影響していた. このように突発的な難聴や眩暈などの症状の存在は「耳鳴の大きさ」に影響を与えることが示唆された. ラウドネス (HL) とラウドネス (SL) のカテゴリーウェイトの内容は「耳鳴の大きさ」とやや関係が認められるものの, 全体的には必ずしも大きな要因ではなかった. 「耳鳴の大きさ」と「耳鳴の気になり方」は互いに強い影響を与えていた. 「耳鳴の大きさ」を評価する上で以上のような要因を総合的に考慮する必要があると結論した.
  • 高齢者のめまいの特徴と生活指導
    宮田 英雄
    2001 年 104 巻 6 号 p. 704-707
    発行日: 2001/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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