2002 年 105 巻 10 号 p. 1093-1096
硬口蓋悪性腫瘍は,口腔悪性腫瘍の中でも比較的まれな腫瘍であり,術後の再建に苦慮することが少なくない.今回,硬口蓋,上顎歯槽部が手術により全欠損した症例に対して,特殊なプロテーゼを用い,良好な経過が得られたので報告する.症例は59歳女性で,硬口蓋扁平上皮癌の診断のもと,40Gyの術前照射後に上顎歯槽部を含む硬口蓋全摘出術を行った.本症例に対して術前にあらかじめ作製された下顎部分床義歯を支点とした上顎プロテーゼを装着した.その後のリハビリテーションの結果,整容的にも大きな変形がなく,機能的にも順調に回復することができた.このプロテーゼの応用できる症例としては,切除の際,両側の眼窩底部が残存し得る例が最も適していると考えられた.