日本耳鼻咽喉科学会会報
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105 巻 , 10 号
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  • 志賀 清人
    2002 年 105 巻 10 号 p. 1059-1064
    発行日: 2002/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    ⌈癌は遺伝子の病気である⌉という考え方は現在では一般に受け入れられており,いくつかの癌遺伝子の活性化や癌抑制遣伝子の不活化が遺伝子レベルで順次蓄積していくという形での多段階発癌説が提唱されている.頭頸部癌においても遺伝子欠失の研究からいくつかの遣伝子座が頭頸部癌の発癌にとって重要な腫瘍抑制遺伝子を含んでいることが明らかとなってきた.またこれらの遺伝子欠失と臨床困子との関連や予後因子としての観点からの検討も行われている.
    我々の検討では部位別にみた場合,中咽頭を境として口腔癌と下咽頭•喉頭癌では明らかに遺伝子欠失のパターンに大きな相違があることが明らかになった.またKaplan-Meier法を用いて生存率曲線を検討すると中•下咽頭癌ではLOH陽性例で患者の予後が不良となっていた.これらの結果から同じ頭頸部扁平上皮癌であっても部位によりその発癌過程が大きく異なっている可能性が示唆された.
    遺伝子診断は癌の遺伝子変異のパターンを検討することによりその性格を明らかにすることができる,定性的かつ定量的な手法であるので癌組織の一部の変化であっても遺伝子の変異を検出できる,極微量の検体からでも遺伝子変異を検討することにより患者の予後を予測できる可能性があるなどの利点が考えられる.今後は遺伝子の変異を検出するばかりではなく,その変異のパターンに応じた治療を追求する必要性がある.
  • 西池 季隆, 坂田 義治, 加藤 崇, 長井 美樹, 小西 雅樹
    2002 年 105 巻 10 号 p. 1065-1070
    発行日: 2002/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    平成6年から平成14年の間に市立吹田市民病院において治療した下顎骨骨折35例を検討した.男女比は2:1であった.年齢別では20歳代が最も多く全体の31%を占めた.受傷原因では,交通事故52%,殴打31%,転倒•転落17%であった.骨折部位の頻度は,関節突起33%,おとがい部25%,角部22%,体部10%,枝部10%であった.30歳未満では受傷原因として交通事故および殴打が有意に多く,30歳以上で転倒•転落が多かった.交通事故や転倒•転落では関節突起骨折が有意に多く,殴打では他の部位の骨折が多かった.
    治療は,チタンあるいは吸収性プレートによる観血的治療および顎間固定30例,顎間固定のみ2例,保存治療1例,他院での治療2例であった.顎間固定の期間は平均42日であった.6ヵ月以上経過を追えた22例中後遺症は6例であった.痛み4例,咬合不全1例,顎関節雑音1例,顔面神経側頭枝の麻痺1例であった.関節突起骨折では他の部位の骨折に比較して有意に後遺症が多く発生していた.
    今後の当院における下顎骨骨折治療の検討課題は,顎間固定期間の短縮化,吸収性プレートの適用の拡大,関節突起骨折の治療方法の検討であると考えられた.
  • 植田 広海
    2002 年 105 巻 10 号 p. 1071-1077
    発行日: 2002/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    耳硬化症にてアブミ骨手術施行した症例の長期術後聴力成績を調査し,手術せずに聴力経過観察した症例と比較検討した.またアブミ骨手術法別の長期聴力経過についても検討した.
    対象は,1979年より1995年までの間に受診し,少なくとも一側手術で耳硬化症と確認し5年以上経過観察出来た51人(男性22人女性29人)88耳である.これらを非手術群(31耳),スタペデクトミー+ワイヤループ使用群(Total stapedectomy群;TS群と呼称,19耳),スタペドトミー+ワイヤピストン使用群(Small fenestra stapedectomy群;SFS群と呼称,38耳)に分けて聴力を比較した.
    非手術群においては,最終気導聴力が全周波数にわたって悪化したが,高音域の悪化は骨導聴力の悪化が主体であった.TS群においては,アブミ骨手術後最終聴力において術直後よりかなりの悪化をみた.SFS群においては,アブミ骨手術後最終聴力では,8kHzを除いて悪化は軽度であった.
    年換算による各群の周波数別の聴力変化を検討すると50歳以下の年齢層では,気導聴力で,250Hz,500Hzにおいて非手術群より有意にSFS群で聴力悪化が軽度であった.一方,骨導聴力では,1kHzにおいては非手術群,TS群両群より有意にSFS群において聴力悪化が軽度であった.51歳以上の年齢層では,ほぼ同様の傾向を認めるものの気導,骨導聴力共に有意差を認めなかった.
    以上より,長期聴力成績の面からもアブミ骨手術特にスタペドトミー+ワイヤピストン使用という手術法が有用であるという結論が得られた.
  • 浜 雄光, 宮崎 信, 出島 健司, 久 育男, 藤枝 重治, 齋藤 等, 今中 政支, 河田 了, 竹中 洋
    2002 年 105 巻 10 号 p. 1078-1086
    発行日: 2002/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    (目的)スギ花粉症に合併した副鼻腔病変の臨床像を薬物に対する反応性を中心にX線像により検討した.
    (対象)平成12年のスギ花粉飛散期に京都,福井,大阪の3地区関連病院を受診したスギ花粉症患者.
    (方法)スギ花粉飛散状況の異なる3地区(スギ花粉総飛散数:京都801個/cm2,福井4555個/cm2,大阪531個/cm2)の関連病院を受診した花粉症患者に薬物療法を行い,Waters法により副鼻腔を撮影し,片桐らの陰影型分類により陽性度を算出した.飛散開始日以前に2週間以上の薬物投与が行われた症例を初期治療群,2週間に満たない症例を治療投与群とし,少•中等量飛散であった京都•大阪地区と大量飛散の福井地区を比較検討した.
    (結果)京都•大阪地区295例,福井地区464例が登録された.飛散後3•4週(3月下旬)の対照陰影の陽性率は京都•大阪地区では22.2%であり,飛散前(22.2%)と変わらなかった.一方,福井地区では39.7%であり,飛散前(19.2%)に比し有意に上昇した.また,初期治療群の同時期の陽性率は京都•大阪地区28.6%,福井地区25.8%であり,更に福井地区での鼻症状は治療投与群に比較し低値であった.
    (結語)スギ花粉の大量飛散により副鼻腔陰影は陽性化し,初期治療により陽性化が抑制される傾向が認められた.められた.
  • 榎並 厚人, 堤 康一朗, 小林 健彦, 萎 澤えり子, 肥塚 泉
    2002 年 105 巻 10 号 p. 1087-1092
    発行日: 2002/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,Fasを介するアポトーシスへの抵抗性が上咽頭未分化癌(UNPC)の発生や進展に関与する可能性を検討することであった.20例のUNPC生検組織に対してFasとFas-ligand (FasL)の発現を免疫組織学的に検出し,In situ hybridization法でEpstein-Barr virus-encoded small RNA (EBER)を検出した.また,Single-stranded DNA (ssDNA)に対する抗体を用いて免疫組織学的にアポトーシス細胞を検出した.Fasは17例(85%),FasLは15例(75%),EBERは16例(80%)に検出された.FasはEBER陽性16例すべてに検出されたが,EBER陰性4例の内3例(75%)には検出されなかった.FasLはEBER陽性16例中12例(75%),EBER陰性4例中3例(75%)に検出された.興味深いことに,UNPC細胞においてFasとFasLが共に発現(Fas+/FasL+症例群,13/20,65%)しているにもかかわらず,それらFas+/FasL+症例群におけるアポトーシスUNPC細胞の数は他の症例群よりも有意に低かった.これらの結果は,生体内におけるFas+/FasL+のUNPC細胞はFas発現欠損以外の機構によってFasを介するアポトーシスに抵抗している可能性を示唆する.
  • 西元 謙吾, 岩元 光明, 唐木 敦子, 黒野 祐一, 西 恭宏, 森田 康彦
    2002 年 105 巻 10 号 p. 1093-1096
    発行日: 2002/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    硬口蓋悪性腫瘍は,口腔悪性腫瘍の中でも比較的まれな腫瘍であり,術後の再建に苦慮することが少なくない.今回,硬口蓋,上顎歯槽部が手術により全欠損した症例に対して,特殊なプロテーゼを用い,良好な経過が得られたので報告する.症例は59歳女性で,硬口蓋扁平上皮癌の診断のもと,40Gyの術前照射後に上顎歯槽部を含む硬口蓋全摘出術を行った.本症例に対して術前にあらかじめ作製された下顎部分床義歯を支点とした上顎プロテーゼを装着した.その後のリハビリテーションの結果,整容的にも大きな変形がなく,機能的にも順調に回復することができた.このプロテーゼの応用できる症例としては,切除の際,両側の眼窩底部が残存し得る例が最も適していると考えられた.
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