日本耳鼻咽喉科学会会報
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蝶形骨洞を主病変とする症例の臨床的検討
奥田 匠花牟礼 豊笠野 藤彦鹿島 直子
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2005 年 108 巻 9 号 p. 835-841

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抄録

蝶形骨洞に限局した疾患あるいは蝶形骨洞を主病変とする疾患では, 頭痛・眼症状など, 通常の鼻副鼻腔疾患とは異なった症状により耳鼻咽喉科以外の科で気付かれることが多い. このような症例には炎症や嚢胞性疾患が多いが, 良性腫瘍や悪性腫瘍, 真菌症も含まれる. それぞれが比較的まれな疾患であるため本邦では数例ずつの症例報告とならざるを得ず, 概要がつかみにくい. 今回我々は, 1999年から5年間に鹿児島市立病院耳鼻咽喉科を受診し, CTやMRIの画像により蝶形骨洞が主病変と診断された44例 (男性21例, 女性23例) を対象に, 病変の分類, 主訴, 治療法等を検討し, 蝶形骨洞を主病変とする疾患の診療の指針について考察した. 病変の内訳は炎症32例, 嚢胞8例, 良性腫瘍1例, 原発性悪性腫瘍2例, 転移性悪性腫瘍1例であった. 症状は頭痛が59%, 眼症状が27%に認められた. 眼症状の内訳は, 炎症症例の60%が眼痛であり, 嚢胞症例の63%が視力低下, 腫瘍症例の100%が複視と, 病態により症状が異なる傾向があった. 頭痛に複視を来した場合は悪性腫瘍の可能性が高く特に注意を要する. 保存的治療に反応の良い症例以外では, 腫瘍性疾患も含め, 診断的治療を兼ねた内視鏡下鼻内副鼻腔手術が有用であった. 早急な治療を要する疾患 (急性化膿性炎症, 視力障害を伴う嚢胞, 悪性腫瘍) の鑑別が重要と考えられた.

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