日本耳鼻咽喉科学会会報
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嗅神経芽細胞腫のMRI所見
飯尾 光博本間 明宏古田 康福田 諭
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2006 年 109 巻 3 号 p. 142-148

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抄録

嗅神経芽細胞腫の組織像は多彩な所見を示すので術前の病理組織診断はしばしば困難であるが,そのMRIの画像診断に関する報告は少ない.ここでは嗅神経芽細胞腫のMRIを検討し,診断における有用性についての知見を得ることを目的とする.
対象は,1980から2004年までに北海道大学病院耳鼻咽喉科およびその関連病院にて診断および治療を行った嗅神経芽細胞腫症例のうちMRIが撮影された12症例である.9例はCTも撮影された.MRIとCTの所見,腫瘍辺縁の性状,形状,腫瘍内辺縁の嚢胞性変化の有無について検討した.
MRI12例のうち,T1強調像(T1)を行った11例全例が低信号,T2強調像(T2)を行った8例全例が高信号を示した.11例中10例においてガドリニウム(Gd)で著明に造影され,大部分が内部均一,辺縁明瞭,辺縁平滑に造影された.一方,CTでは単純または造影で9例中8例の腫瘍の辺縁が不明瞭であった.嚢胞性変化は,12例中6例(50%)のMRIで認めた.CTでは頭蓋底浸潤を検出できなかった1例でもMRIでは検出できた.
T1で低信号,T2で高信号,Gdで内部均一,辺縁明瞭,辺縁平滑で著明に造影される鼻腔上方•篩骨洞の腫瘍は,嗅神経芽細胞腫を念頭におき生検を施行する必要がある.嗅神経芽細胞腫のMRIでは,T2とGd造影像に着目すべきで,CTに比べ進展範囲をより正確に検索でき,特徴的な所見も示した.

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