日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
当科における嗅神経芽細胞腫の治療経験
加納 里志古田 康本間 明宏折舘 伸彦樋口 榮作鈴木 章之永橋 立望澤村 豊福田 諭
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 109 巻 5 号 p. 433-439

詳細
抄録

嗅神経芽細胞腫は比較的まれな腫瘍であり,そのため,その治療法が確立されていない.今回我々は,北海道大学病院で経験した嗅神経芽細胞腫17症例に関し検討を行った.
対象:1980年4月-2004年3月の25年間に我々が治療を行った男性9例,女性8例,年齢は16-76歳で,平均年齢50.4歳.生存例の観察期間は1年8ヵ月-16年6ヵ月,平均7年9ヵ月であった.
結果:初回治療の内訳は手術単独が2例,手術+照射5例,手術+照射+化学療法2例,照射単独3例,照射+化学療法5例であった.治療の結果,手術単独または照射単独症例は全例局所再発をきたしたのに対し,手術+照射5例中3例は局所再発なく,さらに化学療法を併用した2例は2例共再発なく経過している.また,手術を施行せず照射と化学療法により制御されている症例も見られた.化学療法としてはifosfamide,cisplatin,etoposideのいわゆるICE療法を併用した6例中5例(83%)は再発を認めなかった.
全症例での5年粗生存率は75.5%,10年では64.7%であった.また,Hyamsの病理分類を検索しえた14例では,low-grade例(8例)の5年粗生存率は87.5%,high-grade例(6例)では33.3%であった.
結論:嗅神経芽細胞腫に対する治療として,手術に放射線治療と化学療法を組み合わせた集学的治療が生存率の向上に寄与する可能性が示唆された.また,病理学的分類が一つの予後因子であると考えられた.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
次の記事
feedback
Top