日本耳鼻咽喉科学会会報
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乳突蜂巣コレステリン肉芽腫症
いわゆる青色鼓膜症, あるいは特発性血鼓室症
渡部 泰夫内藤 儁花田 力
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1969 年 72 巻 11 号 p. 2035-2048

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抄録

近年, 青色鼓膜, 鼓室内への粘稠, 茶褐色, 無菌性の液体の貯留, および伝音系難聴を来たす疾患をidiopathic hematotympanumとして報告されている.
私どもはこの種疾患を7例経験したことを報告し, 次の点を強調する.
(1) 各種の一般検査は異常がない.
私どもは, 本疾患の病因を血清プラスミン活性, 血清コレステロール, 耳管狭窄などの異常が関係した乳突蜂巣内の出血と考える. 7例中2例に, 血清プラスミン活性の上昇を認めた. 血清コレステロールの上昇は認められなかつた.
(2) この疾患の性別, 年令別分布に関しては, 子供, 青年層に多く, 性別に差はない.
(3) この種疾患の治療には乳突洞の病的肉芽の手術的除去が最も有効である.
時に抗プラスミン剤 (イプシロン) が一時的改善を来たす. この薬剤の長期使用は血清プラスミン活性を下げるので. 私どもは一応この薬剤の使用をすゝめる. この薬剤使用でも状態が変らねばatticoantro mastoidectomyを行ない, 病的コレテスリン肉芽をとる必要がある.
通気法, 鼓膜穿刺は対症療法であり, あまり効果的でない.
私どもは本疾患の病名として, 鼓膜所見より青色鼓膜 (blue ear membrane) あるいは本疾患の病態より乳突蜂巣コレステリル肉芽腫症 (cholestrine granuloma in mastoid cavity) を提唱する.

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