日本耳鼻咽喉科学会会報
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72 巻, 11 号
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  • 渡部 泰夫, 尾崎 正義, 内藤 儁
    1969 年 72 巻 11 号 p. 2027-2034
    発行日: 1969/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    第8脳神経が蝸牛枝と前庭枝に分れ, 共に特異的な生理作用を有することは衆知の通りである. これら神経の障害も各々特異的な臨床像を示す.
    すなわち, めまいと難聴と耳鳴である.
    また, ある薬物は好んで第8脳神経を侵す. たとえばStreptomycinは前庭神経の障害を, dihydrostreptomycinは蝸牛神経の障害を来たす.
    第8脳神経を突発的に侵す代表的疾患は突発性難聴とメニエール病である. 突発性難聴の発作は突発的であるが反復はしない.
    今回, 私どもの報告する症例は聴力障害の発作がメニエール病における“めまい”の発作の様に反復しておこつた例である.
    患者は34才男子で2ヶ月前に両側性の突発性難聴を経験し, 左側の聴力は漸次改善したが2ヶ月後発作がおこり患者は再び聴えなくなつた.
    患者が来院したときの聴力検査は著しい両側の感音系難聴を示したが, 高単位Vitamin B1, acetazolamide sodium, cortico-steroid hormoneの数日間の投与で左側の難聴は改善した. 右側の聴力は不変である.
    以来, 患者は左側の反復する感音系難聴を訴えた. この閾値は低音域で40~50dBであり, この発作はめまいを伴わず時に全く恢復した.
    私どもは, 発作の誘因, 原因を認めることが出来なかつた.
    蝸牛, 前庭障害が, 個々, あるいは, 同時に起る病態生理について次の点, すなわち, 内耳液, 各神経の感受性, 各感覚神経細胞への血流について考察した.
    図は各周波数の閾値変動を示す. (第7図)
  • いわゆる青色鼓膜症, あるいは特発性血鼓室症
    渡部 泰夫, 内藤 儁, 花田 力
    1969 年 72 巻 11 号 p. 2035-2048
    発行日: 1969/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    近年, 青色鼓膜, 鼓室内への粘稠, 茶褐色, 無菌性の液体の貯留, および伝音系難聴を来たす疾患をidiopathic hematotympanumとして報告されている.
    私どもはこの種疾患を7例経験したことを報告し, 次の点を強調する.
    (1) 各種の一般検査は異常がない.
    私どもは, 本疾患の病因を血清プラスミン活性, 血清コレステロール, 耳管狭窄などの異常が関係した乳突蜂巣内の出血と考える. 7例中2例に, 血清プラスミン活性の上昇を認めた. 血清コレステロールの上昇は認められなかつた.
    (2) この疾患の性別, 年令別分布に関しては, 子供, 青年層に多く, 性別に差はない.
    (3) この種疾患の治療には乳突洞の病的肉芽の手術的除去が最も有効である.
    時に抗プラスミン剤 (イプシロン) が一時的改善を来たす. この薬剤の長期使用は血清プラスミン活性を下げるので. 私どもは一応この薬剤の使用をすゝめる. この薬剤使用でも状態が変らねばatticoantro mastoidectomyを行ない, 病的コレテスリン肉芽をとる必要がある.
    通気法, 鼓膜穿刺は対症療法であり, あまり効果的でない.
    私どもは本疾患の病名として, 鼓膜所見より青色鼓膜 (blue ear membrane) あるいは本疾患の病態より乳突蜂巣コレステリル肉芽腫症 (cholestrine granuloma in mastoid cavity) を提唱する.
  • 伊東 孝広
    1969 年 72 巻 11 号 p. 2049-2071
    発行日: 1969/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    視機刺激と前庭性刺激を同時に負荷した場合, 眼振は, たがいに抑制または促進される. 著者は, 健康成人において, 視機刺激と迷路に対する温度刺激を, 同時に負荷した場合にあらわれる眼振の様態について検討した.
    検査方法は, 被検者を仰臥位で30°前屈頭位とし, 眼前約85cmにおかれた視性円筒を注視させる. 視機刺激負荷には, 視性円筒 (直径150cm, 高さ80cm, 表面に巾5cmの黒線条12本をはりつけてある) を用いた. 視性円筒は手動で回転させ, 回転速度は, 36°/sec, 60°/secの二通りを主として用いた. 温度刺激負荷には, 永水, 10℃, 15℃, 20℃の種々の異つた注水温度を用い, 注水量20cc, 注水時間10秒の条件で外耳道に注水した. 眼振の記録には, 電気眼振計を用いた.
    視機, 温度両刺激負荷の組合わせは, つぎのごとくである.
    1温度刺激を加え, ついで視機刺激した場合
    a両刺激による眼振の急速相が同方向に向う場合
    b両刺激による眼振の急速相が反対方向に向う場合
    2視機刺激を加え, ついで温度刺激した場合
    a両刺激による眼振の急速相が同方向に向う場合
    b両刺激による眼振の急速相が反対方向に向う場合
    以上の方法によつて, 温度, 視機両刺激の同時負荷を健康成人30名に対して行なつた結果, つぎの成績をえた.
    1両刺激による眼振の急速相が同方向に向う場合, 温度刺激の影響が活発な時期は, 解発される眼振の眼振数, 緩除相眼球速度の増加が認められる.
    2両刺激による眼振の急速相が反対方向に向う場合, 温度刺激の影響が活発な時期は, 解発される眼振の眼振数, 緩除相眼球速度の減少が認められる. また, 眼振経過によつて, つぎの三つの型が分けられる. 眼振が, (i) 温度性眼振方向に向う型, (ii) 温度性眼振方向と視性眼振方向に向う眼振が, 不規則にあらわれる眼振方向の不定の型, (iii) 視性眼振方向に向う形である.
    以上の成績は, 温度刺激したのち, 視機刺激を負荷しても, 視機刺激したのち, 温度刺激を負荷しても, ほぼ同様である.
  • 特にその聴覚障害の時期的推移について
    立木 孝, 中村 英樹
    1969 年 72 巻 11 号 p. 2072-2080
    発行日: 1969/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    ハント症候群の1例を報告した. 特にこの例について発症後8日目より完全治癒に至る約4ケ月間の経過を観察して, 聴覚障害の変化を知ることが出来た.
    症例は24才男子であり, 右耳痛を以て発症し, ついで顔面神経麻痺, 耳鳴, 難聴, ふらふら感を訴えた.
    発症後8日目の所見では, 右耳介に疱疹あり, オージオグラムは左右とも約30dBの水平型で, 自記オージオグラムは4kHzで, TTSを示した. 又温度性眼振は右CP型であつた.
    発症後43日目, 68日目, 132日目に同じく検査を行つたが, 疱疹は最も早く消失し, オージオグラムは始め高音部, ついで低音部の順に改善した. 132日目のオージオグラムは全く正常となつた. 自記オージオグラムは初診時のT.T.S. はそのまゝでついで振巾が縮小し, やがてT.T.S. はなくなつて振巾縮小のみとなつた. 132日目には振巾縮小もほとんど消失した. 温度性眼振のCPも132日目にはほとんど消失した. 顔面神経麻痺は最後まで残つたが, これも132日目には消失している.
    以上の検査成績から, ハント症候群の聴覚障害所見は, その時期によつて異なる可能性があること及び恢復可能のものであることを知つた.
  • 北村 武, 石川 哮, 河野 寿
    1969 年 72 巻 11 号 p. 2081-2088
    発行日: 1969/11/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
  • 杉山 茂夫, 鈴木 康生
    1969 年 72 巻 11 号 p. 2089-2096
    発行日: 1969/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼻腔に初まる壊疽が慢性的に周囲に波及し, 結局死に至る予後不良かつ本態不明の疾患を, 従来より進行性壊疽性鼻炎と呼んでいる. 該病変に関する記載は, 外国では1896年のMc. Brideの, 本邦では1912年の山川の報告を最初とし以来幾多の報告をみている. しかし病変が局所のみならず全身に波及するものもあり, これをWegenerが報告しており, その分類および本態につき, なお一層考察されるに至つた.
    今回, 該疾患をもち結局死亡した61才・男子の症例を得たので, その全経過を報告すると共に, 鼻腔に初まる壊疽性病変につき考察した.
    該疾患の分類についてはWaltonによるものが比較的妥当と考えられ, 一般に用でられている. 我々も理論的にはRetikulosarkom, Wegenersches Granulom, Rhinitis Gangraenosa Progressivaの三者に分けるべきものと考えている. しかし, 一般的には明確な診断を下せる場合の方がむしろ少なく, 本症例も肉腫ではなかつたが他の二者の要素を兼ねそえており, いづれかに決定する事は出来なかつた. 従つて臨床的には原則として細別診断をせず, 「悪性壊疽性肉芽腫症」として治療しながら, 経過観察するのが妥当ではなかろうか.
    また, その本態についても炎症説・腫瘍説・アレルギー説・膠原病説等があるが, 依然として現在なを不明である. 移行型の豊富なこの疾患群を, 現今では臨床所見の現われ方や, ある時期の病理標本を眺めて分類しているに過ぎない. よつて本症例に鑑み, 現在不明である本態に何んであれ同じものと考えられ, その追求には今までとは全然異つた角度からの研究によつてのみ, その解明の手がかりが得られる様に思われるのである.
  • 神尾 友彦, 菅原 道則
    1969 年 72 巻 11 号 p. 2097-2110
    発行日: 1969/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    68才の女子に両側慢性剖鼻洞炎と鼻茸のためCaldwel-Lice氏手術が行われた. その時, 左鼻腔に軟骨腫が見出された. その腫瘍は, 鼻中隔及下鼻介を侵襲した. 筋骨洞, 上顎洞, 蝶形洞に著明な炎症像を組織学的に認めた. 軟骨腫の被膜は炎症性で, 鼻茸のように見えたが, 硬弾力性であつた. 病理組織学的に, 軟骨組織は大部分良性であるが, 処々に多核の細胞と核分裂が認められた. その後, 軟骨腫の遺残は七年間に発育して, 両側の篩骨洞, 上顎洞, 蝶形洞硬口蓋, 鼻咽腔, 眼〓に迄侵入し, 組織学的に軟骨肉腫になつた. 著者は次の如く結論した. 発生の原因は炎症, 原発部位は鼻中隔, 腫瘍の種類は二次的軟骨肉腫, 放射線治療は無効である.
    日本における, 現在までの70年間の軟骨性腫瘍を文献上に23例見出し, この統計をとつた. 性別男性10, , 女性12, 不明1. 原発部位は, 鼻中隔6例, 上顎洞6例, 篩骨洞4例, 不明7例, 原因は外傷1, 炎症3, 不明19例. 年令別は0-10才軟骨肉腫1例, 11-20才軟骨腫3例, 21-30才軟骨腫2例軟骨肉腫2例, 31-40才軟骨腫1例, 軟骨肉腫2例, 41-50才軟骨肉腫2例, 61才以上軟骨肉腫1例. 軟骨肉腫の種類は, 一次性6例, 2次性5例, 他不明, 腫瘍の発育は隣接性で血管性, 淋巴管性転移は認められない. 放射線治療は無効.
  • 1969 年 72 巻 11 号 p. 2111-2123
    発行日: 1969/11/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
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