日本耳鼻咽喉科学会会報
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Reissner氏膜
発生及び電子顕微鏡的組織化学的研究
中井 義明
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1969 年 72 巻 12 号 p. 2146-2151

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抄録

Reissner氏膜の超微構造及びその発生過程を光学顕微鏡及び電子顕微鏡で観察し, また物質の能動輸送に重要な役割りを持つAdenosine triphosphatase (ATP-ase) の存在部位をその超微構造の上で明らかにした.
成熟Reissner氏膜は内リンパ側の細胞層及び外リンパ側の細胞層の2層より構成されている. 内リンパ側の細胞はその細胞間は表層は特殊な構造で堅く結合されているが, 内側は結合はルーズでありinfoldingが形成されている. 細胞内小器官は一般細胞に見られるのとほゞ同様であるが, 小胞及びゴルジー装置が発達している. また内リンパ側に小絨毛が突出しているのが特徴である. 外リンパ側細胞は薄く大きく拡がっている. 細胞間結合もルーズであり, 細胞内小器官も少ない. この内外2種の細胞には, 細胞膜のvesicular invaginationが存在するが, この所見は, 内リンパ液と外リンパ液とがReissner氏膜を介して何らかの交流を持っている事を示唆する.
内リンパ側細胞膜, 特にその内リンパ面にATP-ase活性が多量存在する事を電子顕微鏡的に明らかにしたが, 内リンパ側細胞が物質の選択的透過性に果す役割りが大であると推論された.
未成熟期の内リンパ側細胞には各1本のkinociliumが存在するが, 成長するにつれて未だ知られざる役割りを果しながら消失する.
胎生期のReissner氏膜は内側のectodermal起源の細胞と外側のmesodermal起源の数層より構成され, 毛細血管も含むが, 成長するにつれて外側の細胞層が漸次減少し, 内外2層となる.

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