日本耳鼻咽喉科学会会報
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ヒトロ蓋扁桃の可溶性蛋白質に関する研究
土田 陽一
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1969 年 72 巻 5 号 p. 1017-1028

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抄録

第1編では, でんぷんゲル電気泳動法 (pH8.6) によりヒト扁桃の可溶性蛋白質を分析した. そのために扁桃抽出液中に混入せる血清成分の泳動図に及ぼす影響を, 稀釈血清, Hemoglobinおよび扁桃抽出液の同一ゲルでの泳動ならびに免疫電気泳動法により検討した. その結果は下記の如くである.
1. albuminの前方には3-5本の蛋白分画がある.
2. albuminと原点との間には4-5本の蛋白分画がある.
3. γ-globulin領域には2-4本の蛋白分画がある.
4. ヒト扁桃の泳動図は, 年令より2つの型に分けられる.
更にこれ等の結果をTiselius法, 〓紙法による成績と比較し論じた.
第2編では, 扁桃γ-globulin位成分について, その扁桃組織での局在, 糸球体腎炎の発症機序との関係を螢光抗体法により研究した.
即ち泳動後γ-globulin位成分をゲルより抽出し, これに対する家兎抗血清を作くり, F.I.T.C.をlabelし扁桃および腎を染めた.
その結果, 扁桃では胚中心等が, 腎では腎炎患者糸球体に螢光が認められた.
この事実は扁桃のγ-globulin位成分が糸球体腎炎の発症に重要な役割を演ずることを示すと解される.

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