抄録
私の研究は難聴によりよく適合する補聴器を与えることが目的である.
この目的のためには一般的に行なわれている検査よりさらに実際的な検査を必要とする.
そこで普通の純音聴力検査の外に快適および不快適音の大いさレベルの検査, 両耳の音の大いさの平衡検査, バーグマンの音像の検査等が適用された.
検査成績:
FowlerのバランステストやBergmannの音像検査では伝音性難聴耳における聴野は正常耳に比較し非常に狭い. このような補充様の現象を考慮して, 伝音性難聴においても強い刺激音に対しては, 増幅度を不快適レベル以下にさげて行なう語音明瞭度検査が必要であり, そのため一種のPeek ClipperであるA.R.C付の新しい聴力検査装置を作製した.
この検査装置を通した増幅音は歪むので正常耳では語音明瞭度は約5~10%の低下を見る. しかしながら伝音性難聴や感音性難聴の語音明瞭度は寧ろ改善するし, その昔は普通の増幅音より快適である. このような結果より私の仮説は誤りでないことを証明しているように思う.
結論:
A.R.C付補聴器が実験に供された. この補聴器は各々の難聴者に対し不快適レベルに達しないように音の増幅度を調節できる. A.R.C装置のこのような調節は多くの難聴者の語音明瞭度の改善を期待することができる. 実際に多くの難聴者はA.R.C付の新しい補聴器を好む傾向がある.
1) 伝音性難聴耳においては補充現象様の現象が認められた.
2) 補聴器は難聴者に対し不快適閾値に達しないように音を調節すべきである.
3) このような調節はA.R.C付の補聴器によつて行なうべきである.
4) 多くの難聴者に対しA.R.C付補聴器は語音明瞭度の改善を期待し得る.