中耳液の由来が, 次に示す数々の実験結果から推論された. 中耳液は概ね漿液性か粘液性である. われわれは, 各々をムチンとポリエチレンラテックスの凝集反応を利用して区別することができた.
A) 材料と方法
慢性型中耳カタルに罹患した23名の成人から採取した中耳液と同一人血清を免疫学的に検討し, その蛋白成分を分析した. また中耳液の沈渣を検鏡し, 各液体の細菌培養を行なつた. 尚, 人のリンパを頸部外科手術の際に頸部リンパ管から採取した.
中耳液, 血清, リンパの免疫学的実験は次に示す方法に従つた.
1) 日立製蛋白分析計による総蛋白値の計測
2) 蛋白分析法として
a) セルローズアセテート膜による電気泳動
b) 免疫電気泳動
c) 13種既知抗体による免疫拡散法
B) 結果
1) 考按した凝集法によつて, 23例の中耳液は漿液型14例, 粘液型9例に分類された.
2) 6例の粘液型は, その沈渣に好中球, リンパ球, 脱落上皮細胞を認め, 内1例にエオジン球が認められた.
3) 細菌培養の結果, 20/23例は無菌であり, 3/23例 (総て粘液型であるが) にブドウ状球菌が認められた.
4) 2~3の症例を除けば, 漿液型は概して粘液型よりも蛋白含量が少なかつた.
5) Separaxによれば, 慢性型貯溜液は, 同一人血清に比しγ-gl含量は多かつた. 上咽頭悪性腫瘍患者に見られた中耳液では, γ-gl含量は最も高く認められた.
6) I.E.P. とIDによれば, マクログロブリンに対する沈降線は全症例に明瞭に認められたが, α1-lipo, ceruloplasminに対する沈降線は, 蛋白含量の低い中耳液では不明瞭になる傾向を認めた.
7) 線維素に対する沈降線は, 全例に明瞭に認められた.
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