日本耳鼻咽喉科学会会報
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72 巻, 8 号
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  • 本間 利美, 中村 英樹, 二井 一成
    1969 年 72 巻 8 号 p. 1281-1287
    発行日: 1969/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    昭和42年度中の当院外来を訪れた頭部外傷74例中レ線上縦骨折の認められた11例と非骨折耳63例とについて自覚症状, 諸種検査を比較検討した. 骨折例は全て側頭部受傷でおこり, 全例が耳出血, 難聴を訴えていたが, 聴力障害は純伝音障害は少く, 混合, 感音難聴もみられた. 聴力損失は中等度以下の難聴, 自記オージオメトリーで振巾縮少, TTDを示すものがみられ, 2/3に前庭機能異常を示した. これに対し非骨折の中でも, 頻度は低いが, 耳出血, 顔面神経麻痺, 伝音障害を示すものがみられ, 縦骨折の存在を疑わせる症例がみられた. われわれの4例の症例で手術的に骨折の存在を確認し, その修復により聴力改善をみた. 第4例目ではレ線上縦骨折の確認ができなかつたが, 手術で耳小骨連鎖異常をみつけたことは, 縦骨折の診断に際してレ線所見のみに依存することが適当でないことを示唆している.
  • 本間 弘治
    1969 年 72 巻 8 号 p. 1288-1299
    発行日: 1969/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (i) 無意単音節, (ii) 有意の単語, (iii) 有意の複合単語を電子スイッチを用い, 2500, 1000, 500, 250, 100msecの5つの断続周期で両耳に分割しその両耳合成能を正常者5名で測定した.
    語音のMCLで測定した場合, いずれの場合も片耳明瞭度に比し, 両耳聴では明瞭度がよくなり, すべてが100%であつた. しかし両耳聴で明瞭度が改善する内容には, 左右耳の単なる加算部分 (見かけの合成) と真の合成によるものが含れている. 断続語音の両耳合成能を検出するには, 真の合成効果の多い語音が最も適していると考えられる. 著者の実験条件では, 有意の複合単語が, 無意単音節, 有意の単語と比較した場合, 真の合成効果の部分が最も大きかつた. 以上のことより有意の複合単語の断続語音テープより, 真の合成効果の部分のみの単語を抽出し, (断続周期1000msecにおける) Stereo Tape-recorderに再録音し, 臨床検査用のテープを作成した.
  • 杉浦 茂
    1969 年 72 巻 8 号 p. 1300-1306
    発行日: 1969/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    内耳膜迷路の病的化骨の過程は感染, 外傷などの大きな損傷の治癒と修復の最終過程である. 化膿性内耳炎, 器械的損傷, 迷路破壊術後等の種々の病理組織学的所見について記した. 内耳炎による化骨の好発部位は迷路下部にみられる. 新生骨は主として蝸牛軸と骨ラセン板から先ず外リンパ腔に浸潤する. 新生骨形成は骨迷路の骨内膜からできた骨芽細胞から始まるものと思われる. これらの骨形成に関与した細胞と新生骨の骨梁は内耳腔内の疎性線維性結合織と膠原線維とともにみられる. Havers管は化骨が完了した蝸牛膜迷路内に形成されていた.
    実験的観察により化膿性内耳炎による初期の新生骨形成は鐙骨切除術後2カ月ではじめて出現した. 膜迷路における骨浸潤は頭部外傷後の症例にもみられた. 動物における迷路破壊術後の病変は限局しており, 迷路の残された部位は線維性, 骨性変化から免かれていた. 骨新生の部位は膜迷路内にでてきた骨片の周囲にみられた. これらの変化は術後3週にてはじめて出現した. 種々の膜迷路の化骨の要因についても検討した.
  • 高原 滋夫, 折田 洋造, 岡崎 英生, 瀬戸 卓
    1969 年 72 巻 8 号 p. 1307-1312
    発行日: 1969/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    われわれは, 過去10年間に, 二次的内耳開窓術を12症例施行した. それらの大多数は, 鼓室成形術あるいは卵円窓手術によつて聴力改善のみられなかつた症例である. また, それらの数例は, 慢性中耳炎で単なる乳様突起部削開術を受けた後, 高度の伝音系難聴を訴えていたものである. これらの経験より, 二次的内耳開窓術の手術適応と成績を検討し次のような所見が得られた.
    1. 二次的内耳開窓術を施行した12症例中6例において, 会話音域平均で30dB以内への聴力恢復に成功した.
    2. 6耳では満足すべき成績が得られなかった.
    a. 2耳では, 術前の骨導が正常と思われ, 術後も骨導が正常と思われるにも拘わらず, 二次的内耳開窓術後, わずかに聴力改善がみられたに過ぎなかった.
    b. 1耳では, 高度の難聴を経験し, 術後性迷路炎の併発と考えられた.
    c. 2耳では, 術前の骨導は正常範囲外にあり, 従って内耳開窓術は不適当と考えられた.
    d. 1耳では, 術前の骨導は明らかに正常範囲外にあり, それ故, この症例には内耳開窓術は施行されるべきでなかった.
    3. これら不成功例の凡べてにおいては, 手術そのものは成功例と同様に満足に遂行された. そして, これらの症例には成功例の群と比較して, 手術中も, とりたでていうような注意すべき所見はなかった. しかし, これら6例の不成功例の凡べてに, 術中術後に普通みられる眩暈や嘔吐がみられなかったのは注目に値する. この点は, 今後さらに研究を進めることによって解決されるべき興味ある問題を提起する.
  • 山口 宗彦, 石川 哮, 飯田 義信, 北村 武
    1969 年 72 巻 8 号 p. 1313-1322
    発行日: 1969/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    中耳液の由来が, 次に示す数々の実験結果から推論された. 中耳液は概ね漿液性か粘液性である. われわれは, 各々をムチンとポリエチレンラテックスの凝集反応を利用して区別することができた.
    A) 材料と方法
    慢性型中耳カタルに罹患した23名の成人から採取した中耳液と同一人血清を免疫学的に検討し, その蛋白成分を分析した. また中耳液の沈渣を検鏡し, 各液体の細菌培養を行なつた. 尚, 人のリンパを頸部外科手術の際に頸部リンパ管から採取した.
    中耳液, 血清, リンパの免疫学的実験は次に示す方法に従つた.
    1) 日立製蛋白分析計による総蛋白値の計測
    2) 蛋白分析法として
    a) セルローズアセテート膜による電気泳動
    b) 免疫電気泳動
    c) 13種既知抗体による免疫拡散法
    B) 結果
    1) 考按した凝集法によつて, 23例の中耳液は漿液型14例, 粘液型9例に分類された.
    2) 6例の粘液型は, その沈渣に好中球, リンパ球, 脱落上皮細胞を認め, 内1例にエオジン球が認められた.
    3) 細菌培養の結果, 20/23例は無菌であり, 3/23例 (総て粘液型であるが) にブドウ状球菌が認められた.
    4) 2~3の症例を除けば, 漿液型は概して粘液型よりも蛋白含量が少なかつた.
    5) Separaxによれば, 慢性型貯溜液は, 同一人血清に比しγ-gl含量は多かつた. 上咽頭悪性腫瘍患者に見られた中耳液では, γ-gl含量は最も高く認められた.
    6) I.E.P. とIDによれば, マクログロブリンに対する沈降線は全症例に明瞭に認められたが, α1-lipo, ceruloplasminに対する沈降線は, 蛋白含量の低い中耳液では不明瞭になる傾向を認めた.
    7) 線維素に対する沈降線は, 全例に明瞭に認められた.
  • 松永 喬, 松永 亨, 内藤 儁
    1969 年 72 巻 8 号 p. 1323-1331
    発行日: 1969/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    われわれが考案試作した阪大式バネ回転椅子は, 低廉価で製作でき, これによる回転検査法は, 検査手技が簡単, 短時間で検査でき, しかも従来のBárány方式, Hallpike-Hood型回転, Cupulo metry方式など各種回転検査同様の診断的価値が充分みられるもので, 実地臨床耳科医におすすめするものである.
    その上, この回転椅子は一つで (1) 従来のBárány方式の回転検査, (2) 振子様減衰回転検査 (pendular rotation test), (3) 定方向減衰回転検査 (acceleration and deceleration test) の3種の回転検査法に利用できる利点を有し, 従前の回転椅子に比べ, 遜色のないものである.
  • 豊田 文一, 前坂 明男, 槻 陽一郎, 谷 一郎, 豊田 務, 楽満 一夫
    1969 年 72 巻 8 号 p. 1332-1338
    発行日: 1969/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    溶連菌制癌剤“PC-B-45”は臨床的実証の上に創製されたもので, その作用機序は岡本による核酸効果で解明されている. 私どもはその理論に基づいて頭頸部悪性腫瘍に対して使用を試みた. 患者はすべて現在までの療法, 手術, 放射線, 抗腫瘍剤にて効果を期待しえない症例であつた. 今回その病理組織学的所見を追及し, その影響について述べた. 症例は癌腫29例, 肉腫2例, 悪性メラノーム1例, 計32例である. その治療効果は腫瘍組織の消滅したもの9例, 腫瘍組織の進展停止または崩壊したもの10例, 腫瘍組織の1部崩壊したもの5例, 変化のなかつたもの8例であり, 使用回数の多いもの程効果が期待できた. 病理組織学的所見の変化は, 腫瘍組織の壊死, 崩壊, さらにその組織内への結合織の侵入, 増生, 置換の像が認められ, 腫瘍細胞の膨化, 空胞化, 染色能の減弱の所見がみられた. なお同時に臨床所見も緩解, 時には治癒の状態までもたらしたものもあつた.
    以上の推移からみて, 新しい構想のもとに開発された“PC-B-45”は悪性腫瘍の治療に多大の期待がもてるものと思う.
  • 海野 佐金治
    1969 年 72 巻 8 号 p. 1339-1373
    発行日: 1969/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    私の研究は難聴によりよく適合する補聴器を与えることが目的である.
    この目的のためには一般的に行なわれている検査よりさらに実際的な検査を必要とする.
    そこで普通の純音聴力検査の外に快適および不快適音の大いさレベルの検査, 両耳の音の大いさの平衡検査, バーグマンの音像の検査等が適用された.
    検査成績:
    FowlerのバランステストやBergmannの音像検査では伝音性難聴耳における聴野は正常耳に比較し非常に狭い. このような補充様の現象を考慮して, 伝音性難聴においても強い刺激音に対しては, 増幅度を不快適レベル以下にさげて行なう語音明瞭度検査が必要であり, そのため一種のPeek ClipperであるA.R.C付の新しい聴力検査装置を作製した.
    この検査装置を通した増幅音は歪むので正常耳では語音明瞭度は約5~10%の低下を見る. しかしながら伝音性難聴や感音性難聴の語音明瞭度は寧ろ改善するし, その昔は普通の増幅音より快適である. このような結果より私の仮説は誤りでないことを証明しているように思う.
    結論:
    A.R.C付補聴器が実験に供された. この補聴器は各々の難聴者に対し不快適レベルに達しないように音の増幅度を調節できる. A.R.C装置のこのような調節は多くの難聴者の語音明瞭度の改善を期待することができる. 実際に多くの難聴者はA.R.C付の新しい補聴器を好む傾向がある.
    1) 伝音性難聴耳においては補充現象様の現象が認められた.
    2) 補聴器は難聴者に対し不快適閾値に達しないように音を調節すべきである.
    3) このような調節はA.R.C付の補聴器によつて行なうべきである.
    4) 多くの難聴者に対しA.R.C付補聴器は語音明瞭度の改善を期待し得る.
  • 1969 年 72 巻 8 号 p. 1375-1400
    発行日: 1969/08/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
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