日本耳鼻咽喉科学会会報
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起声時の喉頭調節に関する筋電図的研究
平野 実
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1971 年 74 巻 11 号 p. 1572-1579

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抄録

目的異なる起声における喉頭調節の違いを,内喉頭筋の筋放電を記録し,比較して明らかにするのが目的である.
2.研究方法3名の職業的声楽家を対象とし,前筋,側筋,声帯筋に双極有鈎線電極を挿入して種々の起声時の筋放電を記録した.起声およびそれに先立つ吸息の時点は指揮捧で指示した.
3.成績および結論(i)すべての被検者のすべての筋で発声に先立つて筋放電が出現する.筋放電出環から起声迄の時間;(△t)には偶人差および個人内変動が大きく,起声の種類による一定の違いは認められない.すなわち△tは起声の種類を規定する本質的な因子ではない.
(ii)声門閉鎖筋の発声前の収縮の強さおよびモードは起声の種類によつて明らかに異なる.
(iii)軟起声では声門閉鎖筋は徐々に収縮を増強し,起声の直前ないし直後に最大レベルに達する.
(iv)硬起声では声門閉鎖筋は急速に強い奴縮を行ないそれを一定時間持続する.起声の直前で多くの場合声門湖鎖筋は一過性に弛緩し,その後再び速やかに収縮する.発声中の収縮は発声前よりも弱い.
(V)気息起声で狼一度始まつた声門閉鎖筋の収縮が/h/音に対応して〓々時減弱し,その後再び増強して起声の直前ないし直後にかけて最大レベルに達する.
(iv)W.Vennardが声楽発声の指導に賞用した"想像気息"起声("imagineryH"onset)では前筋,側筋,声帯筋の活動様式は軟起声に類似している.しかし声の立ち上りは軟起声より明瞭である.

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