日本耳鼻咽喉科学会会報
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正常成熟家兎の前庭神経節細胞に関する細胞学的ならびに電子顕微鏡的研究
大塚 護
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1973 年 76 巻 12 号 p. 1479-1485

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抄録

従来あまり報告のない正常な前庭神経節細胞の微細構造について,正常成熟家兎を用いて,光学ならびに電子顕微鏡による細胞学的検索を行なつた.
前庭神経節細胞は,Kolatchev標本で,明調細胞と暗調細胞の2種に区別される.神経節細胞はほぼ球形で1~3個の外套細胞に包まれている.核は明るく,細胞のほぼ中央か,やや偏心性に位置し大きな核小体をもつ.ゴルジ装置はよく発達しているが,明調細胞では粗な網状で核をとりかこむように認められるが,暗調細胞では網状構造は明瞭ではない.ゴルジ装置は電顕観察によれば,3要素からなり,ニツスル物質の間にみられる.ニツスル物質は主として細胞辺縁部に多く認められ,明調細胞では小顆粒状を呈するが,暗調細胞では斑状の小野をなす.電顕観察によると,粗面小胞体とポリゾームの複合体であるニツスル物質の分布と量により神経節細胞を2種に区別できる.第1はニツスル物質が集団をなし小野を形成するもので,第2はニツスル物質が明瞭な小野を形成せず核周囲部と細胞辺縁部とに分布するものである.糸粒体は小さく顆粒状または短杆状でニツスル物質の内部には少ないが,ニツスル物質の周囲や核周囲部に多い.前庭神経節細胞は有髄神経細胞であり,この細胞体は外套細胞と,重層する薄い細胞質層で構成される髄鞘とからなる被膜によつて包まれている.

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