目的:市販のmite抽出抗原液を用い,いわゆる鼻アレルギー症状を呈し,miteによる皮内反応,鼻粘膜誘発反応,P-K反応が陽性である患者に,特異的減感作療法を行い,その経過の解察とin vivo及びin vitroによる抗体の検出から,その変動を検討し,減感作療法の作用機序について考察する事が目的である.
実験方法:mite (Dermatophagoides farinae)抽出抗原液を生理食塩水で稀釈し,患者の皮内反応関値にかかわらず,一率,mite8万倍液0.05ccから上膊皮下に注射開始し,週2回漸増し,0.5ccに達したならば,2倍濃度液0.25ccに進め,mite5,000倍液まで進めた.注射開始3ヶ月後には,5,000倍液0.3~0.5cc週1回維持とし,6ヶ月後には2週に1回維持とした.減感作開始後3ヶ月,同6ヶ月,同9ヶ月,同12ヶ月,同15ヶ月のそれぞれの時点で,自覚症状の改善度,皮内反応閾値,鼻粘膜誘発閾値,P-K価,B. D. B間接赤血球凝集抗体価を検討した.
結果:
1. 注射開始3~6ヶ月後,自覚症状の改善のみられた者は約68%であつた.同9~15ヶ月後では76~83%であつた.
2. 皮内反応閾値は,それぞれの時期で変動を示さない事が多かつた.(注射開始3ヶ月後71%が不変,6~12ヶ月後80~90%が不変.)
3. 鼻粘膜誘発閾値は,注射開始3ヶ月には48%に閾値上昇を認め,同6ヶ月後には58%,同9ヶ月後には68%,同12ヶ月後には65%に閾値の上昇を認めた.
4. P-K価はそれぞれの時点で,減感作開始前と較べ,やや減少傾向を認めた,(3ヶ月後13名中6名,6ヶ月後24名中11名,9ヶ月後6名中4名,12ヶ月後10名中7名,にP-K価の低下を認めた.)
5. B.D.B処理間接赤血球凝集抗体価は,それぞれの時点で,減感作関始前と較べ上昇傾向を認めた.(3ヶ月緩13名中6名,6ヶ月後25名中16名,9ヶ月後8名中8名,12ヶ月後11名中7名,にB.D.B処理赤血球凝集抗体価の上昇を認めた.)
6. 以上の客観的検査の変動と自覚症状の改善度,及びそれぞれの検査相互間の変動を検討すると,皮内反応閾値上昇者3名は,全例が自覚症状改善例であり,同様に鼻粘膜誘発閾値上昇者15名中,自覚症状改善例は13名であつた.又P-K価が下降した症例14名中,12名が自覚症状改善例であり,B.D.B処理赤血球凝集抗体価の上昇をみた16名中,15名が自覚症状改善例であつた.
各検査相互間の関係では,鼻粘膜誘発閾値上昇者にP-K価とB.D.B処理赤血球凝集抗体価のそれぞれの変動に,特に一定した関係を認める事はできなかつた.
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