1988 年 91 巻 4 号 p. 502-508,643
嚥下障害を主徴としたWolfram症候群の一例を報告したWolfram症候群は糖尿病, 視神経萎縮, 尿崩症, 難聴を四徴とする症候群として知られているまれな疾患であるが, 病態は臨床症状, 部検所見から視覚路, 脳幹, 小脳の変性, 萎縮と考えられている. 本例は糖尿病, 視神経萎縮を伴っていたが尿崩症, 難聴はなく, さらに嚥下障害が主徴であったことが特徴的である. 本例の嚥下障害は嚥下圧亢進型嚥下障害であり輪状咽頭筋切除術により嚥下機能の著明な改善をみた. また本例は平衡障害も合併していたが平衡機能検査にて脳幹, 小脳障害を呈していた.