1995 年 98 巻 4 号 p. 642-649,757
高度嗅力減退および嗅覚脱失を伴う慢性副鼻腔炎症例 (90症例) に対し内視鏡下鼻内手術を施行したところ, 術後78.8%という高い嗅覚改善率を得た. また嗅覚障害の術後経過と, 患者側の術前後の諸因子とを比較検討し, 以下の結果を得た. 1) 手術時年齢が高いほど改善率は低い. 2) 再手術であっても初回手術とほぼ同程度の改善率が期待できる. 3) 術前にアリナミンテストの反応がなくとも少なからず改善する症例がある. 4) 篩骨洞, 嗅列病変と改善度には明らかな相関関係は認めなかった. 5) 術後鼻内所見の不良な例は改善率も低い. 手術のポイントは, 内視鏡下に嗅裂・篩骨洞病変を適切に清掃し, 嗅裂を開放することにある.