イヤホンを用いた両耳間時間差による, 音像移動に伴い誘発される3相性の誘発波が記録された. この反応, すなわち音像移動電位の諸特性は, 正常聴力者45人の検査結果により, 他覚的方向感検査のそれと, きわめて類似していた. このことより, 本検査法は, 方向感検査の他覚的検査法として有用であることが分かった. また, 臨床応用として用いる条件を, 時間差: 0.7msec., 刺激強度: 30dBSL, 刺激間隔: 3.0sec, 加算回数: 30回, Cz誘導と決定した. さらに, 難聴症例群を対象として本検査を施行し, 他の検査所見との関係を検討した. また, 音像移動誘発電位の成立機序を, Berjeikの理論に基づき説明した.