1996 年 99 巻 5 号 p. 661-668,721
1979-91年の喉頭癌1022例中, 両側頸部転移例は58例 (5.7%) であった. そのうち根治手術を施行した49例の5年累積粗生存率は32.2%, 死因特異的5年生存率は52.2%であった. 頸部郭清術の郭清範囲が狭い症例に頸部非制御例が多く, 照射併用による頸部制御率の向上がみられたが, 高率な遠隔転移のため原病死は減少せず, 照射併用による治療成績の向上はみられなかった. 一方, 両側lateral neck dissection以上の範囲の頸部郭清術を施行することにより, 手術単独でも頸部非制御例が顕著に減少し, 治療成績の向上に結び付いた. 1985年以前に比べ1986年以降は, 5年粗生存率が26.1%から38.5%へ, 死因特異的5年生存率が32.6%から76.9%へと向上した.