慢性副鼻腔炎や花粉症などの common disease は環境要因と遺伝要因が相互に関与する多因子疾患とされており, 病態解明には双方の解明が必須である. 今回私たちは遺伝要因について病態や治療効果との関連を分析した. 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎において, 鼻腔における一酸化窒素の主な合成酵素である誘導型 NOS(inducible Nitric Oxide Synthase, iNOS: 遺伝子名 NOS2) に注目し分析したところ, NOS2 プロモーター領域における反復配列の反復回数が少ないほど鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎の術後再発を来しやすいことを確認した. また, スギ花粉症において, スギ花粉抗原ペプチドの結合ポケットを構成するヒト白血球抗原 (Human Leukocyte Antigen, HLA: 遺伝子名 HLA) に着目し分析したところ, HLA-DPB1∗05: 01 遺伝子型を保有するスギ花粉症患者は保有しない患者と比較してスギ花粉舌下免疫療法に対する不応性を確認した. 今回見出した遺伝子型をターゲットとして遺伝学的検査を治療前に行うことで, それぞれの疾患に対する治療予後予測が可能となり, 治療方針決定の参考となる可能性が示唆された. 遺伝学的検査によるプレシジョンメディシン (個別化医療) への臨床応用が期待される.