日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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総説
鼻科手術の Off-the-job トレーニング
鈴木 正宣
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2022 年 125 巻 11 号 p. 1552-1562

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抄録

 近年, 社会情勢の変化, 安全意識の向上などを受け, 鼻科手術トレーニングにもより一層の安全性・効率化が必要とされている. 従来の On-the-job トレーニング (OJT) には患者をリスクに曝すことや, トレーニングの効率化が難しいなどデメリットも存在した. 本項では当科で行っている Off-the-job トレーニング (Off-JT) を紹介する.

 技術習得に関しては, 青赤メガネを用いた 3D 画像 (アナグリフ), 副鼻腔ペーパークラフトモデル, Building Block アプリ, シェーマ描画を用いている. アナグリフを用いることで, 副鼻腔や前頭蓋底, 斜台, 脳幹などの解剖を3次元的に理解できる. ペーパークラフトは副鼻腔の局所解剖を再現しており, ESS に必要な解剖の要点を学ぶことができる. Building Block アプリでは複雑な前頭洞解剖を理解できる. また, 個々の症例の解剖をシェーマに描画することで, CT 読影と術前プランニング能力を培うことができる.

 技能習得に関しては, カダバーや 3D モデルでのトレーニングを行っている. カダバートレーニングは Off-JT のゴールドスタンダードであり, これまでに国内外の施設・トップサージャンが手術普及・指導に果たしてきた役割は極めて大きい. 一方, トレーニングの場所や機会など特有の制約も存在する. 現在では, 副鼻腔解剖を精巧に再現した 3D モデルを使うことで開催場所を選ばずに反復練習できるようになった. 遠隔医療システムと組み合わせることで国境を越えた遠隔手術トレーニングも可能である.

 こうした Off-JT を組み合わせることでリスクなく手技を身につけることができ, 結果として OJT の効率性・安全性も高められると考える.

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