日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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総説
バーチャル・リアリティ技術を利用した手術教育
三谷 壮平
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2023 年 126 巻 10 号 p. 1120-1124

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抄録

 手術の術式の習得には立体解剖の知識と手術のプロセスの理解が不可欠であり, 術書や動画など主に 2D のコンテンツが使用されてきた. しかし, 耳鼻咽喉科頭頸部外科領域の解剖は立体的で複雑であり, 若手医師がこれだけで手術を理解することは容易ではない. そこでわれわれは, 近年進歩の著しいバーチャル・リアリティ (VR) 技術を手術教育に活用している.

 VR の利点は解剖学的構造物を立体で直感的に理解できることである. われわれは臨床の CT 画像から側頭骨, 副鼻腔, 神経を含む頸部の 3D バーチャルモデルを作成した. また, 術者に近い感覚で臨場感をもって手技を体験できる 3DVR 手術動画も作成した. 学習者はヘッドマウントディスプレイ (HMD) を装着することで仮想空間に入り込み, 立体感と臨場感をもって手術を体感することができる.

 さらに, VR の応用としてミクスド・リアリティ (MR) がある. 透過型の HMD を用いることで, バーチャルのコンテンツを現実世界にホログラムとして投影できる. われわれは手術室でリアルタイムに 3D で解剖を確認できるホログラム教材を作成した. また, 工学部と頸部手術のホログラム教材を開発し, これを参照しながらカダバーでのトレーニングも行った. 学習者からはいずれも高い評価が得られている.

 このように VR/MR 技術は, 立体解剖の知識の深化や手術のプロセスの明確な理解を助け, 手術教育の新たな方法のひとつとなり得る.

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© 2023 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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