日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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Print ISSN : 2436-5793
原著
当耳科学クリニックにおける老人性難聴に対する聴覚リハビリテーション
中村 由美林 琴音神山 温美林 賢坂田 英明
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2023 年 126 巻 10 号 p. 1125-1133

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抄録

 言葉の聞き取りが困難な補聴器装用患者に聴覚機能と認知機能の低下の改善を図る目的で聴覚リハビリテーションを実施した.

 対象は2021年7月~2022年4月の間で聴覚リハビリテーションを希望し, 3カ月間の訓練を終了した老人性難聴の患者10名, 平均年齢81歳±6.8歳, 裸耳良聴耳平均聴力レベル 63.4±10.2dB, 平均補聴器装用音場閾値 35.4±5dB, 補聴器装用下最高語音明瞭度 48.3±27% であった.

 検査は認知機能検査 (レーブン色彩マトリクス検査 : RCPM, Trail Making Test : TMT), 67-S 語表, CI2004 単語・短文の聞き取り, 心理的側面の評価に「きこえについての質問紙2002」を用いた. 聴覚リハビリテーションの方法はクリニックで言語聴覚士と行う個別訓練と自宅で主に家族と取り組む自主訓練の二つとした. 個別訓練は週に1回40分程度行った. 自主訓練では, 自宅にてクラシック音楽や速聴などから構成された CD の試聴 (聴覚トレーニング), 音読・計算課題 (脳トレーニング) を毎日課し, 実施の確認は個別訓練の際に週に1回の頻度で行った. 聴覚リハビリテーション開始から約3カ月後を目途に再検査を実施した.

 結果は補聴器装用下の語音明瞭度, CI2004,「きこえについての質問紙2002」の「語音聴取」の項目で改善を認めた症例があった.

 言葉の聞き取りの改善を目的として聴覚トレーニングと脳トレーニングを統合させた聴覚リハビリを行うことは, コミュニケーション場面において補聴器を有効に活用していくための一助となることが示唆された.

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© 2023 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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