日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
Online ISSN : 2436-5866
Print ISSN : 2436-5793
原著
集学的治療を行った鼻腔粘膜悪性黒色腫の臨床的検討
塚本 康二川北 大介的場 拓磨髙野 学小栗 恵介村嶋 明大蓑原 潔角谷 尚悟中井 一之岩城 翔柘植 博之田中 伸和今泉 冴恵近藤 綾乃北條 渉岩田 宏満讃岐 徹治岩﨑 真一
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2023 年 126 巻 6 号 p. 786-793

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抄録

 粘膜悪性黒色腫は悪性黒色腫全体の約10%程度といわれており, 頭頸部領域では鼻腔発生が多く見られる. 根治切除+術後放射線療法が第一選択とされているが, 遠隔再発が多く予後不良である. 近年新規治療として粒子線療法, 免疫チェックポイント阻害薬 (Immune Checkpoint Inhibitor: ICI) の有効性が報告されている. 今回われわれは2014年1月~2021年4月までに名古屋市立大学病院で集学的治療を行った鼻腔粘膜悪性黒色腫14症例について検討を行った. 年齢中央値は76歳, 男性6例, 女性8例であった. 初回治療として手術療法が3例, 陽子線療法が9例, ICIが2例 (遠隔転移例) で施行された. 陽子線療法の奏効率は55.6%であった. 再発後治療も含めると, 重複例を含む使用したICIの内訳は, 抗PD-1療法12例, 抗CTLA4療法1例, 抗PD-1+抗CTLA4療法3例であった. ICI導入後の生存期間中央値は17ヵ月 (範囲: 3~58ヵ月) であった. 再発に伴う全身状態不良例では短期投与中止を認めたが, 80歳以上の症例でも全身状態良好例では, 最長4年以上の病勢進行抑制を得ることができた. 今後はICIを行うタイミングを考慮した個別化治療戦略の構築が必要と考えられる.

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© 2023 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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