日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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最終講義
難治性めまいへの弛まぬ挑戦
將積 日出夫
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2023 年 126 巻 8 号 p. 1010-1016

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抄録

 富山大学耳鼻咽喉科で臨床の現場の課題解決を目指しライフワークとして継続してきためまい研究の1部を紹介した. まず, めまい患者の6割は耳性めまいであり, 診断には内耳前庭障害の診断が重要であるが, 1990年代までは外側半規管以外の生理検査は日常診療の現場には存在しなかった. 前庭誘発頸筋電位 (cVEMP) の講演を1994年の Barany 学会で聴講後, 耳石機能検査の開発研究を開始した. その結果, 臨床的には検査方法の工夫, 末梢前庭障害の患側診断に役立つことを明らかとした. さらに動物実験, 宇宙フォーラムの公募研究から cVEMP の受容器が球形嚢であることを証明した. 次に, メニエール病は難治例に対しては従来より外科的・前庭機能破壊的治療が行われてきたが, 患者にとりより優しい治療の開発が望まれていた. そこで, 欧米の低侵襲治療器である Meniett® の導入を本邦で最初に行い,多施設共同研究での長期成績からめまいに有効であることを明らかにした.次に,鼓膜換気チューブ挿入術が不要な鼓膜マッサージ機を導入し, Meniett® と同等の治療効果が期待されることが分かった. そこで保険収載を目指して課題解決型医療機器等開発事業の受託研究を獲得, 非侵襲中耳加圧装置を開発した. 富山大学と岐阜大学での企業治験の結果, 非侵襲中耳加圧装置を用いた中耳加圧療法は保険収載された. このように臨床の現場の課題解決から生まれた生理検査や医療機器は, 現在, 本邦でめまい診療に役立っている.

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© 2023 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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