2024 年 127 巻 1 号 p. 10-15
聴覚障害者の就労の問題点として4割近くが転職を経験しており, さらに転職経験者は複数回繰り返していることが報告されている. こうした実態が各種調査で明らかとなっているにもかかわらず, 医療サイドからの介入が行われていないのが現状である.
令和2年度から3年間にわたり, AMED (日本医療研究開発機構) 研究において『聴覚障害者の社会参加を促進するための手法に関する研究』(代表 : 九州大学耳鼻咽喉・頭頸部外科中川尚志教授) を実施した. この中の研究開発計画の1つである「聴覚障害者の就労支援・就労継続支援」の研究を行い, 聴覚障害者の職場環境の調査および整備につなげることを目的に, 実際の現場で使用することを想定したチェックリスト (試行版) を作成した. さらに, 聴覚障害者と職場の関係者, 聴覚障害者の医療や福祉にかかわる職種 (耳鼻咽喉科医師, 産業医, 言語聴覚士, 認定補聴器技能士) をオンラインで接続して, 多職種連携ウェブ会議を試行的に実施した.
本稿は, 研究で作成したチェックリストや実施したウェブ会議の概要を紹介するとともに, 難聴児・難聴者に対する多職種連携支援や多職種連携教育の必要性についても言及する.