抄録
1) 動物ヲ普通空氣内ニ於テ一定時間ノ間隔ヲ以テ反覆廻轉刺戟スルニ廻轉後眼震ノ持續時間ハ實驗回數ノ増加ニ從ヒ漸次減少ス.
2) 日々反覆シテ上記實驗ヲ施行スル場合ハ廻轉後眼震ノ持續時間ハ實驗日數ヲ重ヌルト共ニ漸減シ殊ニ第1日ト第2日トノ差顯著ナリ.
3) 一回ノ吸入ニテハ前庭性眼震ニ影響ヲ與フルコトナキ稀薄濃度 (0.05%) ノ酸化炭素ヲ日々反覆吸入セシムルニ廻轉後眼震ノ持續時間ノ減少状態ハ對照實驗ト大差ナシ. 第1日ト第2日ニ於ケル減少度ヲ比較スルニ其差小ニシテ第2日ト第3日トノ差著シク大ナリ.
4) 前庭性眼震ニ著明ノ變化ヲ及ボス濃度 (04%) ノ酸化炭素吸入實驗ニ於テハ一定時ノ後廻轉後眼震ノ持續時間ノ増加ヲ來シ時間ノ經過ニ從ヒ漸次減少ス. 且實驗日數ヲ重ヌルニ從ヒ該眼震ノ持續時間ノ減少度ハ對照實驗ニ比シ著シク小ナリ. 此事實ハ酸化炭素中毒ニ於テモ亦前庭器亢奮性ハ廻轉剌戟ニ慣習スト雖モ其亢奮性ノ減弱度ハ對照實驗ニ於ケルヨリモ小ナルヲ認ム.
5) 日々反覆シテ一定時間酸化炭素中毒ヲ惹起セシムルニ該中毒ニヨリ前庭性眼震ノ持續時間ハ常ニ一定ノ變化ヲ受ケ特ニ習慣性ノ現象ヲ認ムルヲ得ズ.