抄録
小脳脳幹障害症例の20例を対象に, 左右逆転視プリズム装着による前庭動眼反射 (VOR) の適応現象と, 温度眼振に対する固視抑制 (VS) を観察し, 2つの検査法の診断意義について比較検討した. VOR検査では, A型8例, B型3例, C型9例であった. VS Test では, 小脳型16例, 脳幹型3例, 正常反応1例であった. VOR検査と VS Test の結果を比較すると, 17例で両検査法から推定された障害部位が一致した. しかし, VOR検査C型を示したもののうち1例は VS Test で正常反応であった.
これらのことから, VOR検査と VS Test は,前庭一眼反射路にのみ異常を示す病変では, ともに, 同じ程度の異常所見を示すが, 小脳の更に高度な機能である学習の異常は, VS Test では検出することができず, VOR検査でのみ診断可能であることが示唆された.