情報通信政策研究
Online ISSN : 2432-9177
Print ISSN : 2433-6254
ISSN-L : 2432-9177
海外政策動向分析
欧米におけるオンライン・プラットフォーム市場の規制
―支配的プラットフォーム規制アプローチ―
佐々木 勉
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 5 巻 1 号 p. 167-198

詳細
Abstract

現代の情報通信経済は、GAFAやBATHといったオンライン・プラットフォームにより牽引されている。そうしたオンライン・プラットフォームについて政府がどのように関与していくかは、長年の課題だった。2020年12月、欧州連合は、電気通信分野における支配的事業者規制を範としたデジタル市場法案を発表した。

本稿は、欧州連合のアプローチを取り上げ、米国のアプローチを補足する。まず欧州連合のデジタル市場法案に至る背景として、これまでの競争法に基づく反トラスト調査の経緯、そしてオンライン・プラットフォーム市場で起きている問題点、さらにオンライン・プラットフォーム市場の経済的特性を整理する。そして同法案の内容について、支配的事業者に相当する「ゲートキーパー」とは何か、どのような基準で選定し、どのように規制するか、またその規制のためにどのような執行ツールを設けているのか、そして義務等の不履行に対してどのような罰則を科すのかを探る。

欧州連合のデジタル市場法案発表から半年たった2021年6月、米国も下院司法委員会の議論を踏まえ、議員立法によるオンライン・プラットフォーム規制5法案が発表された。欧州連合の法案の特徴を明確化するため、本稿後半では、米国の法案を取り上げて対比させる。

欧州連合でも米国でも、まだ法案段階である。すなわち、今回取り上げる法律内容は最終的な条文ではない。しかし、本稿は、こうしたオンライン・プラットフォーム分野における新しい規制アプローチが提案され、新たな時代に踏み込もうとしている現状を明らかにすることで、我が国の政策作り、研究あるいは企業戦略に資すことを目指す。

Translated Abstract

The modern information economy is driven by online platforms such as GAFA and BATH. How governments get involved in such online platforms has long been a big challenge. In December 2020, the European Union announced the "Digital Markets Act" (draft), which models the dominant operators regulations in the telecommunications sector.

This paper first summarizes the background to the digital markets act. And I will take up the contents of the proposal of the act. What is a "gatekeeper" equivalent to dominant operators? How to regulate them? What kind of enforcement tools are provided for that regulations?

In June 2021, six months after European Union's digital markets act proposal, five bills for online platform regulations were published in the United States, which based on discussions by the House Judiciary Committee. This article aims to clarify new regulatory approaches in the field of online platforms from law proposals in EU and USA.

1.はじめに

本稿は欧州連合で2020年12月に発表されたデジタル市場法案に焦点を当て、まずその背景を探り、次に法案の内容を紹介し、そして2021年6月に米国で発表されたオンライン・プラットフォーム規制の法案と対比していくことにする。本稿では、オンライン・プラットフォーム規制の在り方を論じるのでなく、規制法案の内容を探ることにし、今後の議論の土台提供を目的とする。

2020年12月14日、欧州委員会は「デジタル市場法」(Digital Markets Act: DMA)2と「デジタル・サービス法」(Digital Services Act: DSA)3の原案を発表した4。欧州委員会副委員長マルグレーテ・ヴェスティアは、「二つの法案は一つの目的を持つ。ユーザーである我々が、安全なオンラインのプロダクトやサービスの幅広い選択肢にアクセスできることを保証することである。そして欧州で事業を行う企業がオフラインでと同様にオンラインでも自由で公平に競争することを保証することである」と述べ、法案の意義を誇示した5

欧州委員会は、2015年5月、「欧州デジタル単一市場戦略」6を発表し、戦略を三つの柱に分け、i)オンライン・サービスに対する消費者と企業によるアクセスの改善、ii)デジタルのネットワークとサービスを発展させる適切な条件の構築、iii)欧州におけるデジタル経済の成長可能性を最大化することを目指した。そして2016年5月に「オンライン・プラットフォームとデジタル単一市場:市場の機会とヨーロッパの課題」7と題した通信を発表した。この戦略は、特に、2016年5月の「一般データ保護規則」(GDPR)8等を皮切りに、アナログ法制からデジタル法制への大きな転換をもたらした。従来のアナログ法制をベースにした追加的規定に留まることなく、デジタル分野特有の現象を取り入れた新たな法体系の組み直しに着手した。

オンライン・プラットフォームに限定した法律となると、2019年6月の「P2B規則」9(オンライン仲介サービスのビジネスユーザーのための公正と透明性を促進する規則)が最初である。これは、オンライン・プラットフォームによるビジネスユーザーの公平で透明的な取扱い、また問題がある場合の効果的な是正策を保証し、EUにおけるオンライン・プラットフォームについて予測可能でイノベーション親和的な規制環境の構築を目指した10。この規則(Regulation)は、P2B規則と呼ばれるように、オンライン・プラットフォームとそれを利用するビジネスユーザーの間のルールであり、エンドユーザーは対象とされていない。

P2B規則に続いて、オンライン・プラットフォームに焦点を当てた法律として提案されたのが、デジタル市場法案とデジタル・サービス法案である。デジタル・サービス法案は2000年6月に成立した「eコマース指令」(あるいは電子商取引指令)11の改定であるが、デジタル市場法案はプラットフォーム提供者を規制するルールとして新たに設けられようとしている(おそらく世界で最初の)法律である。電気通信の法律が、電気通信事業者を規制するように、プラットフォーム提供者を規制しようとする法律である。

欧州委員会コネクト総局の委託調査では、対象となるオンライン・プラットフォーム提供者の例として、以下のプラットフォームが挙げられている12。これらが規制対象の候補となる。

2.背景

デジタル市場法案は、「ゲートキーパーが存在する欧州連合におけるデジタル分野の競争可能で(contestable)14で公正な市場を保証する調和されたルールを定める」(同法案第1条1)として、目的を定めている。すなわち、

  • ①オンライン・プラットフォーム市場の弱いコンテスタビリティ(contestability)のため、同市場での弱い競争及びそのリスクを補正すること
  • ②オンライン・プラットフォーム提供者による不公正な慣行を是正させること
  • ③欧州連合加盟国における関連する法律の調和を図ることによって、オンライン・プラットフォームを含む市場の参加者に法的な確実性を提供すること

を目指す15

では、これまで欧州連合では、競争の弱さや不公正な慣行に関してどのように対処してきただろうか。

2.1.競争法に基づく反トラスト調査及びその他の法律の適用

欧州委員会における対処の中心は、欧州連合機能条約(TFEU)第101条からの競争ルールに基づく調査である。TFEU第101条は、加盟国間の取引に影響を与え、その目的ないし効果が域内市場の競争を阻止、制限あるいは歪める企業間の合意、企業の連合による決定及び協調慣行の全てを禁止するとして反競争的行為を取り締まり、同第102条は、加盟国間の取引に影響を与えるかもしれない限り、域内市場あるいはその大部分において支配的な地位をもつ一つあるいは複数の企業によるその濫用を禁止している16

これら競争ルールに基づき問題視されたオンライン・プラットフォームの代表的なケースは、以下のようにまとめることができる。

表2 欧州委員会が調査を行ったケースの事例
プラットフォーム ケース 時期
Amazon Case AT.40153 E-book MFNs and related matters
アマゾンがEブックを提供する出版社との契約において、競争者に対するよりも優遇される取扱を求めていないかどうか(最恵待遇条項)を問題視した。
2015年6月11日~2017年8月3日
Case AT.40462 Amazon Marketplace
アマゾンがそのマーケットプレイスで販売する独立の小売業者から得たセンシティブなデータを利用したかどうかを調べる。
2019年7月17日~
Case AT.40703 Amazon - Buy Box
アマゾンが、そのロジスティクスと配送サービスを利用する自らの小売サービスとそのマーケットプレイスの売り手のサービスを人為的に優遇していないかどうかを調べる。
2020年11月10日~
Google AT.39740 - Google Search (Shopping)
2007年以来、グーグルは欧州各国で支配的地位を享受し、(i) 競合する比較ショッピング・サービスのトラフィックをグーグル自身の比較ショッピング・サービスに迂回させ、グーグルの結果ページへの競合サービスのトラフィックを減少させ、グーグルのそれを増大させた、 (ii)比較ショッピング・サービスと一般的な検索サービスの各国市場を歪めたと認定。
90日以内に地位の濫用を是正。24億ユーロの制裁金。
2010年11月30日~2017年6月27日
AT.40099 – Google Android
グーグルは、(i)メーカーに対して、そのアプリストア(Play Store)のライセンス条件として、Google Search アプリとブラウザ・アプリ(Chrome)をプレインストーするように求めていた、(ii)デバイスにGoogle Searchアプリだけをプレインストールする条件で大規模メーカーと移動体網事業者に支払をしていた、(iii)グーグルのアプリのプレインストールを望むメーカーが、グーグルに認められないアンドロイドの代替バージョンで動作するスマート・モバイル・デバイス販売を妨げた(Android forks)と認定。
90日以内の是正措置と43.4億ユーロの制裁金を課す。
2015年4月15日~2018年7月18日
AT. 40411 - Google Search (AdSense)
競争者が検索結果ページで最も目立ち、またクリックされる検索連動型広告で配置されるのを、グーグルは妨げたと認定。
是正措置と14.9億ユーロの制裁金を課す。
2016年7月14日~2019年3月20日

(出典)筆者作成

また直近のケースを追加すれば、欧州委員会は、2020年6月16日、Appleに対し、音楽ストリーミング市場において、アプリストアを通じて支配的な地位を濫用しているとして調査を開始し、2021年4月30日に予備的見解を公表している23

これら直接的な対処策の他に、オンライン・サービスに適用されるルールの中で間接的にオンライン・プラットフォームのビジネス行為の公正さを求めてきた。その前身とも言えるルールは、2000年6月の「Eコマース指令」である24。GAFAと呼ばれるオンライン・プラットフォームが勢いを得あるいは誕生したのはその後である。そして「ブロードバンド」サービスという用語が定着する2010年前後から、オンライン・プラットフォームで提供される個々のサービスのルールが追加されてきた。例えば、

  • ・視聴覚メディアサービス指令(AVMSD)25(2013年3月-最新の改定は2018年11月26):欧州連合における放送法であり、1989年の「国境のないテレビジョン指令」27を前身とする。2013年の改定により「動画共有プラットフォーム」(video-sharing platform service)を対象に加える。
  • ・欧州電子通信法典指令(EECC)28(2018年12月):欧州連合における電気通信法であり、通信のデジタル化を見据えた2002年の「テレコム・パッケージ」29を前身とし、いくつかの指令に分かれていた規定を一本にまとめた。通信事業者が提供するネットワークとサービスを規定し、2018年のEECCでは、「番号独立的な個人間通信サービス」(number-independent interpersonal communications service)-例えば、スカイプのサービスなど-の概念を導入し、同指令の枠内で扱えるようにした。なお、EECCでも継承された2002年枠組指令は支配的事業者規制(SMP規制)という規制モデルを確立した。
  • ・デジタル単一市場(DSM)著作権指令30(2019年4月):2001年5月の情報社会指令31においてインターネットを介して流通するデジタル著作物の保護が規定されていたが、この指令では、オンライン・プラットフォームがコンテンツを共有する場合のルールを定めた。
  • ・P2B規則32(2019年6月):ビジネスユーザーに対するオンライン仲介サービス提供者の公正さと透明性を促進すること目指した法律である。オンライン・プラットフォームを直接の対象とした法律としては最初のものである。

さらに、消費者保護、データ保護あるいはネットワークと情報システムのセキュリティなどの分野で一般的ルールがオンライン・プラットフォームにも適用される。例えば、

  • (a) 消費者保護の分野
  • ・消費者との契約における不公正な条項に関する指令33(UCTD:1993年4月)
  • ・域内市場におけるB2Cの不公正な商業慣行に関する指令34(UCPD:2005年5月-最新の改定は2019年11月35
  • ・消費者権利指令36(CRD:2011年10月-最新の改定は2019年11月)
  • ・デジタル・コンテンツとデジタル・サービスの供給契約に関する指令37(DCD:2019年5月)
  • (b) データ保護の分野
  • ・一般個人データ保護規則38(GDPR:2016年4月)
  • ・非個人データの自由なフロー枠組に関する規則39(FFDR:2018年11月)
  • (c) サイバーセキュリティ分野 
  • ・ネットワークと情報システムのハイレベルなセキュリティ措置に関する指令40(NISD:2016年7月)
  • ・サイバーセキュリティ法41(2019年4月)

これらはオンライン・プラットフォームにも適用される主要な法律であるが、今回のデジタル市場法案の作成は、それら法律でも対処できなかった問題があることを示している。では、上述した欧州委員会の調査で指摘された問題を含め、どのような問題があっただろうか。

2.2.オンライン・プラットフォーム市場における問題

欧州委員会は、オンライン・プラットフォーム市場の問題を確認するため、いろいろな調査を行ってきた。例えば、

  • ・2017年5月:「オンライン・プラットフォーム環境におけるB2B関係」42(域内市場総局委託調査)
  • ・2017年5月:「Eコマース分野の調査に関する最終報告書」43(欧州委員会報告)
  • ・2018年4月:「オンライン・プラットフォームの透明性に関する行動調査」44(法務消費者総局)
  • ・2018年4月:「オンライン・プラットフォームとプロフェッショナル・ユーザーの間の契約関係に関する調査」45(コネクト総局)
  • ・2018年4月:「欧州における企業間のデータ共有に関する調査」46(コネクト総局)
  • ・2018年7月:「EUにおけるパーソナル化されたプライシング/サービスによるオンラインの市場セグメントにおける消費者市場調査」47(法務消費者総局)
  • ・2018年10月:「オンライン・ソーシャル・メディアにおける広告及びマーケティングに関する行動調査」48(法務消費者総局)

こうした市場調査等を踏まえ、欧州委員会はデジタル市場法案の影響評価49において、オンライン・サービス毎に以下のような問題を確認した。以下は、観察されたケースをまとめたもので、可能性を示しているにすぎず、必ずしもそうした不正行為を行うというわけではないことに注意されたい。

(1) オンライン仲介サービス

オンライン・マーケットプレイスは市場の二面性の恩恵を受け、競合他社よりも自らの製品・サービスを目立つ(prominence)ようにするインセンティブを持つ。これは、消費者が第三者の製品・サービスを選択する可能性を弱める。オンライン・マーケットプレイスは、そのプラットフォーム利用で生成されたデータに対する第三者及びその顧客によるアクセスを制限し、それら売り手に対して不公正な優位性を得ている。オンライン・マーケットプレイスは、そのマーケットプレイスにおいて第三者により提供される製品・サービスの販売から生成される製品・サービス及び顧客のデータを評価する能力を持つ。

アプリストアは関連する提供者のeメール・サービスにサインを求め、いくつかのソースからのデータと組み合わせ、他のeメール・サービス提供者を締め出すことができる。自ら人気のアプリを販売し、同時にマーケットプレイスを運営するアプリストアは、自らのアプリに有利なポリシーを採用して自らを選好させ、また選択的に自らのアプリを有利にするルールを作り出そうとする。これは顧客が第三者アプリを選択する可能性を弱める。

アプリストアは、ビジネスユーザーが顧客に対して代替的な加入のオプションを宣伝するのを認めず、その顧客が代替サービスから便益を得るのを妨げる。アプリストアは、第三者アプリ提供者がその加入者から受け取る情報を制限し、その加入者にイノベーティブな提供を行う第三者の能力を制限する。アプリストアは、第三者のアプリケーション提供に不公正な条件を課す。アプリストアは、自らプレインストールしたアプリのアンインストールを妨げ、あるいは第三者アプリ(例えば、他のアプリストアからの)のインストールを制限し、重要な流通チャンネルへのアクセスを排除する。アプリストアは、その子会社のサービスのために、あるいはパートナーシップ協定を結ぶいくつかの提供者のために、いくつかの機能を用意し、顧客が異なるインターネット・アクセス提供者に乗り換えるのを妨げる。

オンライン仲介サービスは、売り手が、他のチャンネル(例えば、ダイレクト・チャンネルあるいは第三者の流通チャンネル)を通じて顧客に同じ製品・サービスを、自らの仲介サービスを通じて提供するのと異なった価格ないし条件で提供するのを妨げる。オンライン仲介サービスは、売り手が、その製品・サービスの販売促進を行い、そのプラットフォームで得た顧客とそのプラットフォームの外で契約するのを妨げる。

(2) オンライン検索サービス

オンライン検索エンジン提供者は、検索結果において自らの垂直統合されたサービスを優先する。例えば、系列のショッピングや、旅行サービスを検索結果サービスのトップに表示する。

オンライン検索エンジン提供者は、複数のソースからユーザー・データを収集し組み合わせることができるような条件を、サービス利用に付す。

オンライン検索エンジン提供者は、競争者に対して、データ上の優位性を利用し、参入障壁を引き上げる。特に、ロングテール・クエリーにおける膨大なクエリーデータへのアクセスできるようにすることでその障壁を引き上げる。

(3) ソーシャル・ネットワーク・サービス

ソーシャル・ネットワーク・サービス提供者は、第三者よりも自らのサービスをユーザーのタイムラインで目立つようにして順位付けし、ライバルサービスを締め出す。ソーシャル・ネットワーク・サービス提供者は、複数のソースからユーザー・データを収集し組み合わせることができるような条件を、サービス利用に付す。

(4) 動画共有プラットフォーム・サービス

動画共有プラットフォーム提供者は、競争者に対して、豊富なデータセットへのアクセスを制限し、参入障壁を引き上げ、あるいはその成長を妨げる。動画共有プラットフォーム提供者は、「must-have」のオンライン目録へのアクセス、特にad techサービスの提供で競争するために重要なアクセスを制限し、自らのad tech製品への排他的なアクセスを提供し、それによって自らのサービスを有利にし、競争者を排除する。動画共有プラットフォーム提供者は、動画コンテンツ提供者に対して、詳細な成果データへのアクセスを拒否し、それらの改善を妨げる。

(5) 番号独立のメッセージング・サービス

番号独立メッセージング・サービス提供者は、スーパー・プロファイルの作成のため、豊富なデータセットを他のデータ・ソースと組み合わせる可能性をユーザーに与える。

(6) オペレーティング・システム

OS提供者は、ビジネスユーザーと第三者付属プラットフォーム・サービスの提供者に対して、OSあるいはデバイス特性へのアクセス条件を差別化させる。これは競争者によるレベル・プレイイング・フィールドでの競争を妨げる。OS提供者は、OS機能を利用する際、提供者のeメール・サービスとサインし、あるいは登録させるようにユーザーに求めることで、ロックイン戦略を採る。OS提供者は、自らの付属サービス(ブラウザ、検索エンジンなど)の利用を求め、あるいはそのアンインストールを妨げるロックイン戦略を採る。OS提供者は、自らのサービスに対して機能を留保し、ビジネスユーザーにより提供されるサービスへのアクセス、あるいはそのOSと機能(例えば、NFC)の相互運用性を制限する。

(7) クラウド・サービス 

クラウド・サービス提供者は、相互運用性、データ・ポータビリティを制限し、スイッチング・コストの大きさにより顧客のロックインを強化する。クラウド・サービス提供者は、ゲートキーパーである場合のサービスを含め、いくつかの異なったサービスを抱き合わせる。クラウド・サービス提供者は、他のクラウド・サービス提供者が開発し利用したソフトウェアをコピーし利用する。

(8) オンライン広告サービス

広告のサプライチェーンでは、供給サイドと需要サイドの両面における大規模プラットフォームの存在は、自らの統合サービスの可能な優先取扱という問題をもたらす。「walled garden」では、大規模なプラットフォームはログインしたユーザーから複数のデータセットを収集し、パートナー・サービスがターゲット化の改善と属性計測にそれを利用するものの、ユーザー・レベルのデータを広告者とは共有せず、ターゲット化した表示の前に広告を置く。オンライン広告の有効性に関する標準的な方法がないため、広告者はいくつかの「walled garden」とオープンウェブを通じた広告支出の効果を比較できない。このことが、広告者が情報をもとにした意思決定を制限している。

広告サービス(プラットフォームの検索サービスや、ソーシャル・ネットワーク・サービスなどの別のサイドで提供することもできる。)の提供者は、他の関係しない目的のためにビジネスユーザーより受け取ったデータを利用し、他の市場でビジネスユーザーと競争する。

これらの問題は、競争的な市場であれば、中立的に作用して不公平な慣行を是正するはずの市場メカニズムが必ずしも機能しないかもしれないことに後押しされている。オンライン・プラットフォーム市場には、どのような経済的な作用が働いているのだろうか。オンライン・プラットフォーム市場はどのような経済的特徴があるのだろうか。

2.3.オンライン・プラットフォーム市場の特性

オンライン・プラットフォーム市場の大きな特徴は、急速に市場の集中化が進むことであり、そして、一旦市場の覇者になるとその高位集中度が持続することである。その状況をもたらす大きな要因は、i)規模の経済性及び範囲の経済性、ii)ネットワーク効果、iii)データ駆動型の優位性である50

(1) 規模の経済性と範囲の経済性

オンライン・プラットフォーム市場では、付加価値サービスを生み出す固定費用と大きな初期投資が必要だが、追加のユーザーを得る限界費用は小さく、あるいはほとんどゼロの場合が多い。そして、オンライン・プラットフォーム提供者の顧客基盤が大きくなるにつれて、その平均費用は大きく減少する。したがって、この市場は強い規模の経済性に特徴付けられることが多い。それは、競争を盛んにしなくとも、効率性と低費用という点で強いユーザー便益を生み出す。

製造品のような伝統的市場では、規模の経済性は物理的な生産プロセスに関係し、工場の立地や輸送費用に制約される。しかし、オンライン・プラットフォーム市場では、地理的な制約を受けないため51、規模の経済性は、地域ないし国内の範囲に縛られずグローバルに作用するという特徴を追加する。

オンライン・プラットフォーム市場は二面市場あるいは多面市場に関わり、同時に複数の市場でのサービス提供を行うことにより、費用をさらに逓減させ、また、サービス品質を改善する可能性を大きく持つ。こうした複数サービスによる範囲の経済性は、オンライン・プラットフォーム提供者の場合、既存顧客と供給者の関係、ブランド化、技術的専門性の利活用から生じ、特に、関連する複数市場の顧客データの共有や統合化から生じやすい。それは、少数のオンライン・プラットフォーム提供者が複数の隣接市場において支配的地位を得ていることの説明となっている。

(2) ネットワーク効果

ネットワーク効果は大きく二つのタイプに分けられる。「直接的なネットワーク効果」と「間接的なネットワーク効果」である。直接的なネットワーク効果は、あるユーザーにとっての便益が、ユーザー総数の増加につれて拡大したしたときに現れる。この効果はソーシャル・ネットワーク、メッセージング・サービス、顧客レビュー・サイトなどにおいて強く作用する。二つ目の間接的なネットワーク効果はプラットフォームのある面におけるユーザーの便益がそのプラットフォームの他の面のユーザー数が増加するにつれて大きくなる効果である。この効果は、オンライン・マーケットプレイス、ストリーミング・サービス、アプリストアの両面におけるユーザーに強く作用し、また広告者にも大きな便益を与える要因となっている。

ネットワーク効果をさらに動態的にみれば、その作用は、ユーザーが増大にするにつれて、プラットフォームをますます価値のあるものとし、さらにそれが潜在的なユーザーにますます魅力的となって、「クリティカル・マス」と呼ばれる一定規模を超えると拡張するだけのプロセスへと後押しする。いわゆる、傾斜化(tipping)という現象である52。反対に、クリティカル・マスを実現しないプラットフォームは、小さい規模のままか市場からの退出を余儀なくされる。ネットワーク効果が強く作用する市場は、デュアルモード分布となり二極化されるかあるいは独占となる。

こうしたネットワーク効果を加速させるのが、「ポジティブ・フィードバック効果」であり、「ロックイン効果」である53。ポジティブ・フィードバック効果は、例えば、ソーシャル・ネットワークのメンバーシップや評価メカニズム(顧客の意見など)によって、潜在的なユーザーの評価が上がり、それによって財・サービスあるいはプラットフォームの価値を増大させる作用である。ロックイン効果は、プラットフォームを変更するためのコスト(操作を変えることの面倒さを含め、ハードウェアやソフトウェアを変えることのスイッチング・コスト)が大きいため、ユーザーが他のプラットフォームへ変更するのを思いとどまらせる効果である。

こうして強くネットワーク効果が作用する市場は、「一人勝ち」(winner takes all)あるいは「ほとんど一人勝ち」(winner takes most)になる傾向を持つ。

(3) データ駆動型の優位性

これは、オンライン・プラットフォームが規模の経済性と範囲の経済性を享受する要因である。それはプラットフォームが企業行動あるいは消費者行動に関するデータの収集、蓄積、組み合わせ、利用に強く関係し、それによって追加サービスの生産に要する限界費用の大きな引き下げを可能とする。この経済性を得たプラットフォームは、競合するプラットフォームに対して大きな競争上の優位性を得る54

では、こうした特性を持つオンライン・プラットフォーム市場における公正な競争55を図るために、欧州委員会はデジタル市場法案において、どのような規制を考案しただろうか。

3.デジタル市場法案の概要

欧州におけるオンライン・プラットフォーム市場に対する規制アプローチは、電気通信市場における支配的事業者規制に類似する。オンライン・プラットフォーム市場において支配的な提供者を指定し、それに対して義務を課し、その義務の遂行に瑕疵がある場合、是正策を課しあるいは罰金を科す。

図1 規制アプローチの概念図

(出典)筆者作成

3.1.ゲートキーパーの指定と基準

「ゲートキーパー」は、「コア・プラットフォーム・サービス」(core platform services)提供者のうちの指定基準を満たす提供者である56

「コア・プラットフォーム・サービス」とは、以下のサービスである(DMA第2条(2))(以下、条文番号の指摘において、「デジタル市場法案」を「DMA」とする。)。

  • (a) オンライン仲介サービス(online intermediation services)
  • (b) オンライン検索エンジン(online search engines)
  • (c) オンライン・ソーシャル・ネットワーキング・サービス(online social networking services)
  • (d) 動画共有プラットフォーム・サービス(video-sharing platform services)
  • (e) 番号独立個人間通信サービス(number-independent interpersonal communication services)
  • (f) オペレーティング・システム
  • (g) クラウド・コンピューティング・サービス
  • (h)(a)から(g)に挙げるコア・プラットフォーム・サービスの提供者により提供される広告網、広告交換及びその他の広告仲介サービスを含む広告サービス

コア・プラットフォーム・サービス提供者のうち、以下を満たす提供者を「ゲートキーパー」として、欧州委員会が指定する。

  • (a) 域内市場に大きな影響力(significant impact)を持つ。
  • (b) ビジネスユーザーがエンドユーザーに到達するのに重要なゲートウェイ(important gateway)となるコア・プラットフォーム・サービスを運営する。
  • (c) 経営において確立した持続的な地位(entrenched and durable position)を持ち、あるいは近い将来にそうした地位を得ると予測される(以上、DMA第3条(1))。

これら指定基準において、まず「大きな影響力」とは、「過去3会計年においてEEA(欧州経済領域)での年間売上高65億ユーロ以上を達成している場合、あるいは平均時価総額、あるいは同等の公正市場価値が前会計年に少なくとも650億ユーロに上り57、それが少なくとも三つの加盟国でコア・プラットフォーム・サービスを提供している場合」(DMA第3条(2))を指す58

二番目(b)の「重要なゲートウェイ」とは、「前会計年に、欧州連合内に位置するアクティブなエンドユーザーを月あたり4500万以上持ち、かつ欧州連合内に設置されたアクティブなビジネスユーザーを年当たり1万以上持つ場合」59(同上)を意味する。

そして三番目(c)の「確立した持続的な地位」は、「(b)の基準が過去3年間それぞれにおいて満たされる場合」(同上)としている60

指定のプロセスは、上記の三つの指定基準全てを満たすコア・プラットフォーム・サービス提供者が欧州委員会に申告することになっている(DMA第3条(3))。ゲートキーパーとして指定される期間は定めていない61。ただし、欧州委員会は、指定されたゲートキーパーが指定基準を引き続き満たしているかどうか、あるいは新規のコア・プラットフォーム・サービス提供者がその基準を満たすかどうかについて、規則的に少なくとも2年毎に見直す(DMA第4条(2))。

なお、コア・プラットフォーム・サービス提供者が指定基準の全てを満たさない場合でも、欧州委員会は、市場調査(market investigation)を行い、ゲートキーパーに指定することができる(DMA第3条(6)及び第15条)。その際、欧州委員会は、以下を考慮する(DMA第3条(6))。

  • (a) コア・プラットフォーム・サービスの提供者の売上高、時価総額、経営及び地位を含む、規模
  • (b) エンドユーザーに到達するためコア・プラットフォーム・サービスに依存するビジネスユーザーの数、及びエンドユーザーの数
  • (c) ネットワーク効果及びデータ駆動型の優位性、特に、個人データと非個人データへの提供者のアクセスあるいは解析能力に関連した優位性から生じる参入障壁
  • (d) データに関するものを含め、提供者が得る規模と範囲の効果
  • (e) ビジネスユーザーあるいはエンドユーザーのロックイン
  • (f) その他の構造的な市場特性

3.2.ゲートキーパーの義務

 ゲートキーパーに賦課される義務は、二つに分けられている。一つはゲートキーパーの指定を受けたならば、必ず賦課される義務であり、もう一つは賦課される可能性のある義務である。これらの義務は、重要なゲートウェイとして個別に作用しているコア・プラットフォーム・サービスについて賦課される(DMA第3条(7)、第5条、第6条)。それらを表にまとめたのが以下である。その際、欧州委員会の説明に従い、「~しなければならない」義務を「do’s」、「~してはならない」義務を「don’ts」で示している62

表3 ゲートキーパーの義務
a.データの組み合わせ(don’ts) ・エンドユーザーが特定の選択を提示されず、同意を与えていない場合、ゲートキーパーは、コア・プラットフォーム・サービスをソースとする個人データと、ゲートキーパーにより提供される他のサービスからの個人データ、あるいは第三者サービスからの個人データを組み合わせることを控える(refrain)。
・また個人データを組み合わせるため、エンドユーザーに対しゲートキーパーの他のサービスにサインさせることを控える。(第5条(a))
b.異なる条件での提供の容認(do’s) ・ゲートキーパーのオンライン仲介サービスを通じて提供されるのと異なる価格ないし条件で、第三者のオンライン仲介サービスを通じてビジネスユーザーがエンドユーザーに対して、同じ製品あるいはサービスを提供するのを認める(allow)。(第5条(b))
c.ユーザー行動の容認(do’s) ・ビジネスユーザーがコア・プラットフォーム・サービスを通じて獲得したエンドユーザーに対して販促を行い、それらが契約目的のためにゲートキーパーのコア・プラットフォーム・サービスを利用するかどうかにかかわらず、エンドユーザーと契約を結ぶのを認め、
・また、ゲートキーパーのコア・プラットフォーム・サービスを利用せずに、アイテムが関連するビジネスユーザーからエンドユーザーにより獲得される場合、エンドユーザーが、ゲートキーパーのコア・プラットフォーム・サービスを通じて、ビジネスユーザーのソフトウェア・アプリケーションを利用することによってコンテンツ、登録、機能あるいは他のアイテムへアクセスし利用するのを認める。(第5条(c))
d.ビジネスユーザーの提訴の妨げ(don’ts) ・ビジネスユーザーが、ゲートキーパーの慣行に関する公的機関に問題を提起するのを妨げあるいは制限するのを控える。(第5条(d))
e.確認サービスに対する相互運用性要求(don’ts) ・ゲートキーパーのコア・プラットフォーム・サービスを利用するビジネスユーザーによって提供されるサービスにおいて、ビジネスユーザーがゲートキーパーの確認サービスを利用し、提供し、あるいは相互運用的にするように求めることを控える。(第5条(e))
f.アクセス等の条件として、他のサービス加入を求める(don’ts) ・エンドユーザーないしビジネスユーザーが、コア・プラットフォーム・サービスにアクセスし、サインし、あるいは登録する条件として、そのコア・プラットフォーム・サービスのどれかに加入し、あるいは登録するように求めることを控える。(第5条(f))
g.広告サービスの情報提供(do’s) ・広告サービスを提供する広告者及び出版社に対し、要求がある場合、ゲートキーパーにより提供される所定の広告の発表及び関連の広告サービスそれぞれのために、広告者及び出版社により支払われる価格に関する情報、及び出版社に対して支払われる額ないし報酬に関する情報を提供する。(第5条(g))

(出典)筆者作成

表4 追加の可能性のあるゲートキーパーの義務
a.競争におけるデータ利用(don’ts) ・ビジネスユーザーのエンドユーザー、コア・プラットフォーム・サービスのエンドユーザーを含むビジネスユーザーによる活動を通じて生成され、あるいはコア・プラットフォーム・サービスのビジネスユーザーあるいはそのビジネスユーザーのエンドユーザーにより提供された公に利用できないデータ(data not publicly available)を、ビジネスユーザーとの競争において、利用するのを控える。(第6条(a))
b.エンドユーザーによるアンインストール(don’ts) ・オペレーティング・システムあるいはデバイスの機能に不可欠であり、あるいは第三者によりスタンドアロンベースで技術的に提供できないソフトウェア・アプリケーションがある場合、ゲートキーパーが非搭載に制限する可能性を侵害することなく、エンドユーザーがコア・プラットフォーム・サービスでプレインストールされたソフトウェア・アプリケーションをアンインストールするのを認める。(第6条(b))
c.他のソフトウェアのインストールとアクセス(do’s) ・ゲートキーパーのオペレーティング・システムを利用し、あるいは相互運用した、第三者のソフトウェア・アプリケーションあるいはソフトウェア・アプリケーション・ストアのインストールと有効な利用を認め、
・また、それらソフトウェア・アプリケーションないしソフトウェア・アプリケーション・ストアがゲートキーパーのコア・プラットフォーム・サービス以外の手段によりアクセスされるのを認める。(第6条(c))
・ゲートキーパーは、第三者のソフトウェア・アプリケーションないしソフトウェア・アプリケーション・ストアがゲートキーパーにより提供されるハードウェアないしオペレーティング・システムの完全性を危険に曝さないことを保証するための比例的な措置をとることを妨げられないものとする。(第6条(c))
d.順位付けにおける優遇扱い(don’ts) ・ゲートキーパー自身により、あるいは同じ事業者に属する第三者により提供されるサービスと製品を順位付けする際、他の第三者の類似サービスないし製品に比して、優遇した扱いを控え、その順位付けには公正で非差別的な条件を適用する。(第6条(d))
e.乗り換えの制限(don’ts) ・エンドユーザーにとってのインターネット・アクセス提供者の選択に関するものを含め、ゲートキーパーのオペレーティング・システムを利用してアクセスされる異なったソフトウェア・アプリケーションとサービスに乗り換えまた加入するエンドユーザーの能力を技術的に制限するのを控える。(第6条(e))
f.相互運用性(do’s) ・ビジネスユーザーと付属サービス提供者が、ゲートキーパーによる付属サービスの提供で利用可能とされ、あるいは利用されるのと同じオペレーティング・システム、ハードウェアあるいはソフトウェアの機能にアクセスし、また相互運用的とするのを認める。(第6条(f))
g.成果計測ツール/広告目録情報の提供(do’s) ・広告者及び出版社に対し、要求に基づき無料で、ゲートキーパーのパフォーマンス計測ツールへのアクセス、及び広告者ないし出版社が自ら広告目録の独立的な証明を行うのに必要な情報を提供する。(第6条(g))
h.生成データの携帯性提供(do’s) ・ビジネスユーザーないしエンドユーザーの行為により生成されたデータの有効な携帯性(portability)を提供し、また特に、継続的でリアルタイムのアクセス提供によることを含め、規則(EU)2016/679(GDPR)に沿って、エンドユーザーがデータ携帯性を用いるのを容易にするツールを提供する。(第6条(h))
i.集計/非集計データへのアクセス提供(do’s) ・ビジネスユーザーないしそれにより認められた第三者に対し、ビジネスユーザーにより提供される製品ないしサービスに関わるビジネスユーザーないしエンドユーザーのコア・プラットフォーム・サービス利用のコンテクストにおいて、提供され、あるいは生成された集計データないし非集計データへの、効果的で、高品質で、継続的かつリアルタイムのアクセスと利用を、無料で提供する。
個人データの場合、関連のコア・プラットフォーム・サービスを通じてビジネスユーザーにより提供される製品ないしサービスに関して、エンドユーザーにより行われる利用と直接接続している場合にのみ、また規則(EU)2016/679の意味での同意により共有することをエンドユーザーが選択しているとき、アクセスと利用を提供する。(第6条(i))
j.検索関連データへのアクセス(do’s) ・オンライン検索エンジンの第三者提供者に対し、その要求に応じ、個人データを構成するクエリー、クリック、ビュー・データ(view data)の匿名化を条件として、ゲートキーパーのオンライン検索エンジンにおいてエンドユーザーにより行われる無料及び有料の検索に関する順位付け、クエリー、クリック、ビュー・データへのアクセスを、公正で、妥当で非差別的な条件に基づいて、提供する。(第6条(j))
k.検索関連データへのアクセス(do’s) ・規則第3条により指定されたソフトウェア・アプリケーション・ストアには、ビジネスユーザーに対し、公正で非差別的な一般的なアクセスの条件を適用する。(第6条(k))

(出典)筆者作成

なお、追加の義務のaにおける「公に利用できないデータ」には、ゲートキーパーのコア・プラットフォーム・サービスにおけるビジネスユーザーあるいはその顧客の商業的活動により、推論でき、あるいは収集できるビジネスユーザーにより生成された集計データと非集計データが含まれる(DMA第6条(2))。

欧州委員会は、市場調査に基づき、コア・プラットフォーム・サービスの競争を制限する慣行を解決する新たな義務の必要性を確認した場合、第5項と第6項に定める義務を更新する権限を持つ(DMA第10条)。そこにおいて、不公正でありあるいはコア・プラットフォーム・サービスの競争を制限していると見なされるのは、以下の場合である(同上)。

  • (a) ビジネスユーザーに対する権利と義務にアンバランスがあり、ゲートキーパーがビジネスユーザーに提供するサービスに比例しないビジネスユーザーからの優位性をゲートキーパーが得ている。
  • (b) 市場の競争が、ゲートキーパーにより行われる慣行の結果として、弱まる。

このほか、ゲートキーパーは監査義務(DMA第13条)と集中度に関する報告義務(同第12条)を課される。

3.3.是正措置及び執行措置

ゲートキーパーが義務の遵守のため実施しようとし、あるいは実施した措置が、関連の義務の効果的な遵守を保証しないと欧州委員会が考える場合、欧州委員会は、決定によって、関連するゲートキーパーが実施する措置を特定することができる63。欧州委員会は、非遵守の疑義の手続き開始から6ヶ月以内に決定を行う(DMA第7条(2)、第18条)。

非遵守の決定は、以下の一つあるいは複数を遵守していないと欧州委員会が考える場合に行われる。

  • (a) 第5条ないし第6条に定めるゲートキーパーの義務
  • (b) 是正措置
  • (c) システマティックな非遵守
  • (d) 重大で修復不可能な損害のリスクによる緊急性がある場合の暫定措置、あるいは
  • (e) 法的に拘束力のある公約(以上DMA第25条)

執行措置は、欧州委員会に大きな権限を与えている。

(a) 聴取

調査の事案に関わる情報収集の目的のため、欧州委員会は、聴取に同意する自然人ないし法人に聴取できる(DMA第20条)。

(b) 実地調査(On-site inspections)

欧州委員会は、事業者あるいは事業者団体の敷地で、実地調査ができる(DMA第21条)。

(c) 暫定措置(Interim measures)

ゲートキーパーのビジネスユーザーあるいはエンドユーザーにとって重大で修復不可能な損害のリスクによる緊急性がある場合、欧州委員会は、決定によって、違反の認定を基礎にして、ゲートキーパーに対する暫定措置を決定できる(DMA第22条)。

(d) 公約(Commitments)

非遵守の手続きの間、ゲートキーパーが義務の遵守を保証するためコア・プラットフォーム・サービスについて公約を提案する場合、欧州委員会は、決定によって、その公約を、ゲートキーパーを拘束するものとすることができる(DMA第23条)64

(e) モニタリング

欧州委員会は、ゲートキーパーの義務の効果的な実施と遵守等をモニターするために必要な行動を行うことができる(DMA第24条)。

3.4.市場調査

欧州委員会の市場調査(Market Investigation)権限は、急速に発展するデジタル分野において、重要な役割を果たす。

(a) ゲートキーパー指定のための市場調査

欧州委員会は、コア・プラットフォーム・サービス提供者がゲートキーパーとして指定されるべきかどうかを調べるため、あるいはプラットフォーム・サービスを確認するために、市場調査を行うことができる。欧州委員会は、その市場調査開始から12ヶ月以内に、決定の採択により、調査を終えるように努力する(DMA第15条)。 

(b) システマティックな非遵守に関する市場調査 

ゲートキーパーが第5条と第6条に定める義務にシステマティックに違反し、ゲートキーパーの地位をさらに強化しあるいは拡張したと市場調査が示す場合、欧州委員会は、決定によって、行った違反に比例的で必要な行動的あるいは構造的な是正策を、そのゲートキーパーに課すことができる(DMA第16条)。

市場調査開始の決定の採択に先立つ5年以内に、ゲートキーパーに対して、少なくとも三つの非遵守の認定ないし決定を、欧州委員会が行っている場合、ゲートキーパーは第5条と第6条に定める義務のシステマティックな非遵守に関わっていると見なされる。また、域内市場に与える影響がさらに増大し、ビジネスユーザーがエンドユーザーに到達するゲートウェイとしての重要性がさらに増大し、あるいはゲートキーパーがその経営においてさらに確立した継続的な地位を得る場合、ゲートキーパーは、その地位をさらに強化しあるいは拡張したと見なされる(同上)。

(c) 新規サービスと新規慣行に対する市場調査

新規サービスをコア・プラットフォーム・サービスのリストに追加すべきかどうかを調べ、あるいはコア・プラットフォーム・サービスの競争を制限するかもしれない、また不公正かもしない、DMAにより有効に解決されない慣行のタイプを確認するためにも、欧州委員会は市場調査を行う(DMA第17条)。

(d) 市場調査の要求 

三つ以上の加盟国が、コア・プラットフォーム・サービス提供者がゲートキーパーとして指定されるべきであるとする妥当な根拠があると考え、欧州委員会に対して市場調査の開始を求める場合、欧州委員会は、調査着手に妥当な根拠があるかどうかを、4ヶ月以内に調べる(DMA第33条)。

3.5.罰金

罰金には三つの形が定められている。

(a) ゲートキーパーに対する罰金 

欧州委員会は、決定により、ゲートキーパーが故意あるいは過失により以下に従うのを怠っていると欧州委員会が見なす場合、そのゲートキーパーに対して、「前会計年度の総売上高の10%を超えない罰金」を科す(DMA第26条)。

  • - 第5条と第6条によるゲートキーパーの義務
  • - 第7条(2)による決定により欧州委員会が特定した是正措置
  • - 市場調査により命じられた措置
  • - 暫定措置を命じた決定
  • - 拘束力をもつ公約 

(b) コア・プラットフォーム・サービス提供者一般に対する罰金

欧州委員会は、事業者あるいは事業者の団体に対して、それらが故意あるいは過失により、以下である場合、「前会計年度の総売上高の1%を超えない罰金」を、決定によって、科すことができる(DMA第26条)。

  • - ゲートキーパーとしての指定を評価するために情報を期限内に提出するのを怠り、あるいは、不正確、不完全、あるいは誤解を招く情報を提出する。
  • - 集中の情報の通知を怠り、あるいは不正確、不完全、あるいは誤解を招く情報を提出する。
  • - 監査義務により求められる記述の提出を怠る。
  • - 不正確、不完全、あるいは誤解を招く、欧州委員会の情報要求あるいは聴取において求められる情報あるいは説明を提出する。
  • - 情報要求によるデータベースとアルゴリズムへのアクセスの提供を怠る。
  • - 欧州委員会の定める期限内に、スタッフにより提出された不正確、不完全、あるいは誤解を招く情報を修正するのを怠り、あるいは実地調査で完全な情報の提出を怠りあるいは拒否する。
  • - 実地調査に従うのを拒否する。

(c) 期間的な罰金の支払い

欧州委員会は法律遵守を実行させるため、決定によって、ゲートキーパーを含む事業者に対して、決定に定める日から換算して、日当たりで、「前会計年度の日平均総売上高の5%を超えない期間的な罰金の支払い」(periodic penalty payments)を科すことができる(DMA第27条)。

  • - 非遵守の市場調査に従う。
  • - 決定による情報要求により正確で完全な情報を、期限内に、提出する。
  • - 事業者のデータベースとアルゴリズムへのアクセスを保証し、決定により要求された情報の説明を提供する。
  • - 決定により命じられた実地調査を受ける。
  • - 暫定措置を命じる決定に従う。
  • - 法的拘束力をもつ公約に従う。
  • - 非遵守に関する決定に従う。

3.6.競争法との関係

デジタル市場法案は、欧州連合の法体系において「規則」(Regulation)であり、加盟国に直接適用される。指令(Directive)のように、加盟国での国内法移植を必要としない。加盟国の競争ルールと対立する場合には、「規則」が優先する。

またデジタル市場法案は、「欧州連合機能条約(TFEU)第101条と第102条の適用を侵害しない」(DMA第1条(6))として、従来通り、欧州連合の競争ルール適用、さらに加盟国の国内競争法適用も侵害しないとしている(同上)。

以上、デジタル市場法案の概要を見てきた。この法案の大きな特徴は、以下のようにまとめることができる。

  • ・オンライン・プラットフォームを一つの産業分野とした初めての事業規制法である。
  • ・一つの経済圏における事業規制法である。
  • ・通常の事業規制法は、国内(あるいは域内)の事業者を対象とするが、デジタル市場法案は実質的に対象が国外(あるいは域外)の事業者となっている65

デジタル市場法案は、執筆段階の2021年6月末現在、欧州議会で審議されている。

4.比較としての米国におけるオンライン・プラットフォーム規制案

2019年6月、米国下院司法委員会(House Judiciary Committee)は、オンライン・プラットフォーム市場に関する調査を開始した。同委員会は、

  • ・デジタル市場における競争問題をまとめること
  • ・支配的企業が反競争的行為に従事しているかどうかの調査
  • ・既存の反トラスト法、競争政策及び執行策が問題を解決するのに十分であるかどうかの評価

という点から、調査を行った66

2020年10月、同委員会の反トラスト部会(Antitrust Subcommittee)は「Investigation of Competition in the Digital Marketplace: Majority Staff Report and Recommendations」と題する400頁を超える報告書をまとめた67。この報告書では、以下を提言した68

  • ・プラットフォームに依存しあるいは相互運用しているビジネスラインでプラットフォームが事業を行うことを禁止する構造的分離(structural separations)
  • ・プラットフォームが自己優先化(self-preferencing)することを禁止
  • ・プラットフォームが、そのサービスを、競合ネットワークに対してサービス相互運用性(interoperability)とデータ・ポータビリティを認めて、互換的にすること
  • ・プラットフォームが提訴を行う市場参加者に対して適正なプロセスを提供すること
  • ・競争を減じる戦略的買収禁止に関する基準を設けること
  • ・クレイトン法、シャーマン法、連邦取引委員会法を、デジタル経済の問題解決に見合った形に改善すること
  • ・反競争的な強制仲裁条項の削除
  • ・連邦取引委員会および司法省反トラスト部門の強化
  • ・反トラスト機関の透明性と民主化の促進 

そして2021年6月11日、五つの法案が議員よる立法として提案された69

  • ・American Innovation and Choice Online Act
  • ・Platform Competition and Opportunity Act
  • ・Ending Platform Monopolies Act
  • ・Augmenting Compatibility and Competition by Enabling Service Switching (ACCESS) Act
  • ・Merger Filing Fee Modernization Act

米国における議員立法案が成立する可能性は小さいと言われるが、以下では、同法案は欧州連合のデジタル市場法案との比較で良い材料であることから、その概要を見ることにする。これら法案は、用語定義で調整されており、互いに補完する法案となっている。なお、最後の「Merger Filing Fee Modernization Act」は、オンライン・プラットフォーム規制を行う場合、当局側に生じる規制行政費用を賄うための法案である。

4.1.対象プラットフォームの指定と基準

支配的事業者規制アプローチは、米国の法案でも採用されている。DMAの「ゲートキーパー」に対応するオンライン・プラットフォームとして、米国では、「対象プラットフォーム」(covered platform)が各法案において用いられている。

連邦取引委員会(FTC)あるいは司法省が対象プラットフォームを指定するが、その指定基準は三つの基準から検討される。

  • (a) FTCあるいは司法省の指定の時点、あるいはそれに先立つ12ヶ月のどこか、あるいは違反の提訴に先立つ12ヶ月のどこかにおいて、
  • ① 米国ベースの月間アクティブユーザーを少なくとも5000万もち、あるいは
  • ② 米国ベースの月間アクティブ・ビジネスユーザーを少なくとも10万もつ 
  • (b) FTCあるいは司法省の指定の時点、あるいはそれに先立つ2年のどこか、あるいは違反の提訴に先立つ2年のどこかにおいて、消費者物価指数(CPI)をもとにインフラ調整して、6000億ドル以上の年間純売上高、あるいは時価総額を持つ者により所有されあるいはコントロールされている、及び
  • (c) オンライン・プラットフォームであるいは直接関連して提供される製品ないしサービスの販売ないし提供にとり「重要取引パートナー」(Critical Trading Partner)である。(以上、American Innovation and Choice Online Act第2条(g)(4))(American Innovation and Choice Online Actは以下でAICOAとする)。

重要取引パートナーとは、「ビジネスユーザーのユーザーないし顧客へのアクセス」、あるいは「ビジネスユーザーのユーザーないし顧客に効果的に提供するのに必要なツールないしサービスへのアクセス」を制限しあるいは妨害する能力を持つ取引相手を意味する(AICOA第2条(g)(6))。また「コントロールする」とは、株式の25%以上を保有する場合などを意味している(AICOA第2条(g)(11))。

対象プラットフォームの指定には、欧州と異なり、期間を設け、「10年」としている(AICOA第2条(d)(3))。

4.2.対象プラットフォームの違反行為と義務

三つの法案は、「違反行為」ないし「違反」として、オンライン・プラットフォームの差別的行為、買収行為、利益相反となる行為を定め、四つ目の法案は、携帯性と相互運用性を義務として定めている。

表5 オンライン・プラットフォームの違法な行為
American Innovation and Choice Online Act:違法な差別行為
対象プラットフォームの運営に関連して ・対象プラットフォーム事業者の自らの製品、サービスあるいはビジネスラインを他のビジネスユーザーのそれらよりも優遇する。
・対象プラットフォーム事業者の自らの製品、サービスあるいはビジネスラインとの比較で、他のビジネスユーザーの製品、サービスあるいはビジネスラインを排除しあるいは不利にする。
・類似の状況にある(similarly situated)ビジネスユーザーの間で差別化を行う。
商取引あるいは影響を与える商取引において ・対象プラットフォーム事業者の自らの製品、サービスあるいはビジネスラインにとって利用可能である同じプラットフォーム、オペレーティング・システム、ハードウェア及びソフトウェアの機能にアクセスし、あるいは相互運用するビジネスユーザーの能力を制限しあるいは妨害する。
・対象プラットフォーム事業者により提供される他の製品あるいはサービスの購入ないし利用において、対象プラットフォームへのアクセスに条件を付し、あるいは対象プラットフォームにおけるステータスないしプレイスメントを優先する条件を付す。
・対象プラットフォーム事業者の自らの製品あるいはサービスを提供しサポートするため、ビジネスユーザーの製品ないしサービスとの相互作用を通じて生成されるビジネスユーザーないしその顧客の活動により、プラットフォームにおいて取得され、あるいは生成される非公共データ(non-public data)を利用する。
・ビジネスユーザーのデータを他のシステムあるいはアプリケーションへ携帯可能とすることを妨げる契約上のあるいは技術上の制限のように、ビジネスユーザーの製品ないしサービスとの相互作用を通じて、ビジネスユーザーないしその顧客の活動により生成されるビジネスユーザーないしその顧客の活動によるプラットフォームで生成されるデータへ、ビジネスユーザーがアクセスするのを制限し、あるいは妨害する。
・対象プラットフォームのユーザーが、対象プラットフォームにおいてプレインストールされたソフトウェア・アプリケーションをアンインストールし、あるいは対象プラットフォーム事業者により提供される製品ないしサービスに対象プラットフォームのユーザーを仕向けないし動かすようにしたデフォルトの設定を変更することを制限し、あるいは妨害する。
・ビジネス取引を容易にするため、ビジネスユーザーが、情報を提供し、あるいは対象プラットフォームにおけるハイパーリンクを対象プラットフォーム・ユーザーに提供するのを制限しあるいは妨害する。
・対象プラットフォームにより提供される検索機能ないしランキング機能を含め、ユーザー・インターフェイスに関連して、対象プラットフォームの自らの製品、サービスあるいはビジネスラインを他のビジネスユーザーよりも優遇する。
・ビジネスユーザーがその財ないしサービスにプライシングするのを妨害しあるいは制限する。
・ビジネスユーザー、ビジネスユーザーの顧客あるいはユーザーが、製品ないしサービスを相互運用的にし、あるいは接続するのを制限しあるいは妨害する。
・州法あるいは連邦法の実際の、ないし潜在的な違反について法執行機関に提訴するビジネスユーザーないし対象プラットフォームのユーザーに対して報復する。
Platform Competition and Opportunity Act:違法な買収
直接的ないし間接的な買収 ・商取引あるいは何らかの事業あるいは影響する商取引を行う他の者の株式ないしその他の共有資本の全てないし一部。
・商取引あるいは商取引に影響を与える活動を行う他の者の資産の全体あるいは一部。
Ending Platform Monopolies Act:違法な利益相反
対象プラットフォームと指定された日から、その対象プラットフォーム事業者が、以下である対象プラットフォーム以外のビジネスラインにおけるプラスの利益を所有し、コントロールしあるいは保持することは違法となる。
利益相反 ・製品あるいはサービスの販売ないし適用のために対象プラットフォームを利用する。
・対象プラットフォームへのアクセス条件として、あるいはその対象プラットフォームにおけるビジネスユーザーの製品ないしサービスの優先ステータスないしプレイスメントの条件として、対象プラットフォームがビジネスユーザーに対して購入ないし利用を求める製品ないしサービスの提供を行う。
・利益相反を生じさせる。

(出典)筆者作成

表6 オンライン・プラットフォームの義務
Augmenting Compatibility and Competition by Enabling Service Switching Act of 2021:
携帯性と相互運用性の義務
携帯性 ・対象プラットフォームは、データのユーザーへのセキュアな移転を可能とし、あるいはユーザーの同意がある場合、第6条(c)により発出された標準に従う構造化された一般的に利用される機械読取可能なフォーマットで、ユーザーの指示により、ビジネスユーザーにデータを移転するのを可能とする、(アプリケーション・プログラミング・インターフェイスを含む)透明的で第三者のアクセスを可能とするインターフェイスを維持する。
相互運用性 ・対象プラットフォームは、本条第6条(c)によりFTCにより採択された標準を遵守する競合企業ないし潜在的な競合企業との相互運用性を図りまた維持するための、(アプリケーション・プログラミング・インターフェイスを含む)透明的で第三者のアクセスを可能とするインターフェイスを維持する。
・対象プラットフォームは、提案する変更を認可するようにFTCに対し申請することによって、その相互運用性のインターフェイスに影響を与える変更を行うことができる。

(出典)筆者作成

4.3.罰則

違反行為に対しては、以下を超えない民事罰が科される。

  • (i) 前年(暦年)の米国における総売上高の15%、あるいは
  • (ii) 違法行為の期間中に違法行為により影響を受けあるいは対象とされたビジネスラインの者の米国での収入の30%。

5.おわりに

オンライン・プラットフォーム提供者の多くは21世紀生まれであり、急成長の企業であるが、今や経済全般の牽引者である。2010年前後から政策的にも学問的にも議論されてきたオンライン・プラットフォームに対する法律がようやく大西洋の両岸で姿を現した。まだ法案段階であり、紆余曲折の議論が展開されるだろう。欧州はその法案で規制するほど巨大なオンライン・プラットフォームを持っているわけではない。しかし、2000年代初期にフランスのジャン・ノエル・ジャンヌネーがグーグルの登場に驚愕し文化の多様性確保として訴えた叫び70は、デジタル主権という主張に繋がった。それはこのオンライン・プラットフォーム規制法案の根底にも定着している。欧州連合は、今回取り上げたデジタル市場法案の他にも、データ・ガバナンス法案(2020年11月)、デジタル・サービス法案(2020年12月)、そして人工知能法案(2021年4月)と矢継ぎ早やに発表して、デジタル主権の確保を目指している。

Footnotes

1 ポリシー・リサーチ・ユニット株式会社主任研究員、総務省情報通信政策研究所特別研究員。本稿は、2021年6月10日に行った総務省向けセミナー「2020年EUデジタル市場法(案)-デジタル分野におけるプラットフォームに対する競争規制-」の講演原稿に、6月11日、米国で発表されたオンライン・プラットフォーム法案を追加して作成したものである。なお、本稿は著者個人のまとめであり、個人の意見である。

2 Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on contestable and fair markets in the digital sector (Digital Markets Act), COM/2020/842 final

3 Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on a Single Market For Digital Services (Digital Services Act) and amending Directive 2000/31/EC, COM(2020) 825 final

4 https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_20_2347

5 ibid.

6 Communication from the Commission to the European Parliament, the Council, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions, A Digital Single Market Strategy for Europe, COM(2015) 192 final

7 Communication from the Commission to the European Parliament, the Council, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions, Online Platforms and the Digital Single Market, Opportunities and Challenges for Europe, COM(2016) 288 final

8 Regulation (EU) 2016/679 of the European Parliament and of the Council of 27 April 2016 on the protection of natural persons with regard to the processing of personal data and on the free movement of such data, and repealing Directive 95/46/EC (General Data Protection Regulation)

9 Regulation (EU) 2019/1150 of the European Parliament and of the Council of 20 June 2019 on promoting fairness and transparency for business users of online intermediation services

10 https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/LSU/?uri=celex:32019R1150

11 Directive 2000/31/EC of the European Parliament and of the Council of 8 June 2000 on certain legal aspects of information society services, in particular electronic commerce, in the Internal Market ('Directive on electronic commerce')

12 Directorate-General for Communications Networks, Content and Technology Digital (2020), Markets Act – Impact Assessment support study, Annexes

13 欧州委員会コネクト総局の委託調査は、デジタル市場法案の基礎資料となっている。

14 コンテスタブル(contestable)あるいはコンテスタビリティ(contestability)という用語は、1980年代初期に米国におけるAT&T分割前後から経済学で議論された理論に基づく。例えば、William J. Baumol, John C. Panzar, & Robert D. Willig (1982). Contestable Markets and the Theory of Industry Structure; William A. Brock (1983). "Contestable Markets and the Theory of Industry Structure: A Review Article". The Journal of Political Economy, v. 91, no. 6, pp. 1055–1066。この用語が情報通信分野における欧州連合の法律条文で使用されることは、これまでなかったように思われる。

15 Centre on Regulation in Europe (CERRE)(2021),The European proposal for a Digital Markets Act: A first assessment

16 https://ec.europa.eu/competition-policy/antitrust_en

17 https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_15_5166

18 https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_19_4291

19 https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_2077

20 Summary of Commission decision of 27 June 2017 relating to a proceeding under Article 102 of the Treaty on the Functioning of the European Union and Article 54 of the EEA Agreement (Case AT.39740 — Google Search (Shopping)) (2018/C 9/08)

21 Summary of Commission Decision of 18 July 2018 relating to a proceeding under Article 102 of the Treaty on the Functioning of the European Union and Article 54 of the EEA Agreement (Case AT.40099 — Google Android) (2019/C 402/08)

22 Summary of Commission Decision of 20 March 2019 relating to a proceeding under Article 102 of the Treaty on the Functioning of the European Union and Article 54 of the EEA Agreement (Case AT.40411 – Google Search (AdSense)) (C(2019) 2173)

23 https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_2061

24 Directive 2000/31 of the European Parliament and of the Council of 8 June 2000 on certain legal aspects of information society services

25 Directive 2010/13/EU of the European Parliament and of the Council of 10 March 2010 on the coordination of certain provisions laid down by law, regulation or administrative action in Member States concerning the provision of audiovisual media services (Audiovisual Media Services Directive)

26 Directive (EU) 2018/1808 of the European Parliament and of the Council of 14 November 2018 amending Directive 2010/13/EU on the coordination of certain provisions laid down by law, regulation or administrative action in Member States concerning the provision of audiovisual media services (Audiovisual Media Services Directive) in view of changing market realities

27 Council Directive 89/552/EEC of 3 October 1989 on the coordination of certain provisions laid down by law, regulation or administrative action in Member States concerning the pursuit of television broadcasting activities

28 Directive (EU) 2018/1972 of the European Parliament and of the Council of 11 December 2018 establishing the European Electronic Communications Code

29 Directive 2002/19/EC of the European Parliament and of the Council of 7 March 2002 on access to, and interconnection of, electronic communications networks and associated facilities (Access Directive) ;Directive 2002/20/EC of the European Parliament and of the Council of 7 March 2002 on the authorisation of electronic communications networks and services (Authorisation Directive) ;Directive 2002/21/EC of the European Parliament and of the Council of 7 March 2002 on a common regulatory framework for electronic communications networks and services (Framework Directive) ;Directive 2002/22/EC of the European Parliament and of the Council of 7 March 2002 on universal service and users’ rights relating to electronic communications networks and services (Universal Service Directive)

30 Directive (EU) 2019/790 of the European Parliament and of the Council of 17 April 2019 on copyright and related rights in the Digital Single Market and amending Directives 96/9/EC and 2001/29/EC

31 Directive 2001/29/EC of the European Parliament and of the Council of 22 May 2001 on the harmonisation of certain aspects of copyright and related rights in the information society

32 Regulation (EU) 2019/1150 of the European Parliament and of the Council of 20 June 2019 on promoting fairness and transparency for business users of online intermediation services

33 Council Directive 93/13/EEC of 5 April 1993 on unfair terms in consumer contracts

34 Directive 2005/29/EC of the European Parliament and of the Council of 11 May 2005 concerning unfair business-to-consumer commercial practices in the internal market and amending Council Directive 84/450/EEC, Directives 97/7/EC, 98/27/EC and 2002/65/EC of the European Parliament and of the Council and Regulation (EC) No 2006/2004 of the European Parliament and of the Council (‘Unfair Commercial Practices Directive’)

35 Directive (EU) 2019/2161 of the European Parliament and of the Council of 27 November 2019 amending Council Directive 93/13/EEC and Directives 98/6/EC, 2005/29/EC and 2011/83/EU of the European Parliament and of the Council as regards the better enforcement and modernisation of Union consumer protection rules

36 Directive 2011/83/EU of the European Parliament and of the Council of 25 October 2011 on consumer rights, amending Council Directive 93/13/EEC and Directive 1999/44/EC of the European Parliament and of the Council and repealing Council Directive 85/577/EEC and Directive 97/7/EC of the European Parliament and of the Council

37 Directive (EU) 2019/770 of the European Parliament and of the Council of 20 May 2019 on certain aspects concerning contracts for the supply of digital content and digital services

38 Regulation (EU) 2016/679 of the European Parliament and of the Council of 27 April 2016 on the protection of natural persons with regard to the processing of personal data and on the free movement of such data, and repealing Directive 95/46/EC (General Data Protection Regulation)

39 Regulation (EU) 2018/1807 of the European Parliament and of the Council of 14 November 2018 on a framework for the free flow of non-personal data in the European Union

40 Directive (EU) 2016/1148 of the European Parliament and of the Council of 6 July 2016 concerning measures for a high common level of security of network and information systems across the Union

41 Regulation (EU) 2019/881 of the European Parliament and of the Council of 17 April 2019 on ENISA (the European Union Agency for Cybersecurity) and on information and communications technology cybersecurity certification and repealing Regulation (EU) No 526/2013 (Cybersecurity Act)

42 Directorate-General for Internal Market, Industry, Entrepreneurship and SMEs(2017), Business-to-Business relations in the online platform environment,

43 Report from the Commission to European Parliament and the Council, Final report on the E-commerce Sector Inquiry, COM(2017) 229 final

44 Behavioural Study on the Transparency of Online Platforms, by Consumers, Health, Agriculture and Food Executive Agency (Chafea) on behalf of Directorate-General for Justice and Consumers

45 Directorate-General for Communications Networks, Content and Technology (European Commission) (2018), Study on contractual relationships between online platforms and their professional users, Final report

46 Study on data sharing between companies in Europe By the European Commission, Directorate-General of Communications Networks, Content & Technology,

47 Consumer market study on online market segmentation through personalised pricing/offers in the European Union, by Consumers, Health, Agriculture and Food Executive Agency (Chafea) on behalf of Directorate-General for Justice and Consumer

48 Behavioural Study on Advertising and Marketing Practices in Online Social Media, by Consumers, Health, Agriculture and Food Executive Agency (Chafea) on behalf of Directorate-General for Justice and Consumers

49 Commission Staff Working Document Impact Assement Report, Accompanying the document Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on contestable and fair markets in the digital sector (Digital Markets Act), pp.39-45

50 Digital Competition Expert Panel(UK)(2019), Unlocking digital competition (Furman report), pp.32-41を参考にして整理する。

51 制約があるとすれば、法律による利用禁止や言語かもしれない。

52 現代のネットワーク効果の研究は1974年のJ.ロルフス論文に始まり、1990年代に盛んになった。以前はバンドワゴン効果とも呼ばれた。Rohlfs, J.H. (1974), “A theory of interdependent demand for a communications service”, Bell journal of Economics and Management science. 5, 16-37; Rohlfs, J. H.(2001), Bandwagon Effects in High-Technology Industries. MIT Press, Cambridge, Mass. 2001(佐々木勉訳「バンドワゴンに乗る」NTT出版、2005年)。こうした研究は、2000年代から盛んになる二面市場あるいは多面市場の研究に引き継がれた。Jean-Charles Rochet, and Jean Tirole(2003), “Platform Competition in Two-Sided Markets”, Journal of the European Economic Association, vol. 1, n. 4, pp. 990–1029.;David S. Evans; Richard Schmalensee (2016) Matchmakers: The New Economics of Multisided Platforms. Harvard Business Review Press

53 Renaissance Numerique(2020), “Regulating Digital Platforms: Why and How? “, p.13

54 OECD(2015), Data-Driven Innovation:Big Data for Growth and Well-Being;Bourreau, de Streel and Graef(2017),”Big Data and Competition Policy: Market Power, Personalised Pricing and Advertising”, Centre on Regulation in Europe (CERRE); Stucke and Grunes(2016), Big Data and Competition Policy, Oxford University Press

55 米国では、「競争の不公正な方法」という15 U.S. Code § 45(Unfair methods of competition unlawful; prevention by Commission)の中で、議論されている。Chopra and Khan (2020). "The Case for 'Unfair Methods of Competition' Rulemaking". University of Chicago Law Review. 87 (2): 357–380

56 仏語では、ゲートキーパーは「アクセス制御者」(contrôleurs d’accès)、コア・プラットフォーム・サービスは「不可欠プラットフォーム・サービス」(service de plateforme essentiel)と呼ばれる。Proposition de RÈGLEMENT DU PARLEMENT EUROPÉEN ET DU CONSEIL relatif aux marchés contestables et équitables dans le secteur numérique (législation sur les marchés numériques)

57 S&P500 Index(2020年12月21日)によれば、主なコア・プラットフォーム・サービス提供者の時価総額は、Apple 21,800億ドル、Microsoft 16,830億ドル、Amazon 16,090億ドル、Alphabet(Google) 11,740億ドル、Facebook 7790億ドルとなっている。https://www.statista.com/chart/23537/top-10-companies-in-the-s-p-500-index/?utm_source=Statista+Global%20&utm_campaign=32d65a2ad0-ll_InfographTicker_daily_COM_PM_KW44_2020_Th_COPY&utm_medium%20=email&utm_term=0_afecd219f5-32d65a2ad0-300175001, Commission Staff Working Document Impact Assessment, SWD(2018) 138 final

58 2021年6月、欧州議会域内市場消費者保護委員会(IMCO)の審議では、年間売上高が100億ユーロ、時価総額が1000億ユーロに修正されている。DRAFT REPORT on the proposal for a regulation of the European Parliament and of the Council Contestable and fair markets in the digital sector (Digital Markets Act), (COM(2020)0842 – C9-0419/2020 – 2020/0374(COD))

59 アクティブなユーザー数の計測は、各コア・プラットフォーム・サービス毎に計測方法が定められている。DRAFT REPORT on the proposal for a regulation of the European Parliament and of the Council Contestable and fair markets in the digital sector (Digital Markets Act), (COM(2020)0842 – C9-0419/2020 – 2020/0374(COD))。例えば、番号独立の個人間通信サービスの場合、①少なくとも月一回メッセージを送付するアカウントを持つユーザー数、②メッセージの送受信をするユニークなユーザーの数。

60 欧州委員会の委託調査では、多くて10~15社が該当すると試算している。Directorate-General for Communications Networks, Content and Technology (2020), Digital Markets Act – Impact Assessment support study:Annexes

61 2021年6月に発表された米国の「American Choise and Innovation Online Act」(案)では、対象プラットフォーム(covered platform)の指定は、10年を期限としている(第2条(d))。

62 2020年12月の欧州委員会プレスリリースに依拠。https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/QANDA_20_2349.デジタル市場法案では、通常、mustあるいはmust notとされる表記が、allowあるいはrefrainの単語を充てている。

63 なおゲートキーパーには、欧州委員会に特定に対して反論する機会が与えられる(DMA第7条(7))

64 2021年6月、欧州議会域内市場消費者保護委員会(IMCO)の審議における審議条文では、第23条の「公約」が削除されている。DRAFT REPORT on the proposal for a regulation of the European Parliament and of the Council Contestable and fair markets in the digital sector (Digital Markets Act), (COM(2020)0842 – C9-0419/2020 – 2020/0374(COD))

65 直近の対象はGAFAのような米国ベースの企業だろうが、近い将来BATHとよばれる中国ベースの企業も対象の視野に入ると予想される。米国のCenter for Strategic and International Studies(CSIS)は“The Digital Services Act, the Digital Markets Act, and the New Competition Tool: European Initiatives to Hobble U.S. Tech Companies”,において、デジタル市場法案が米国のTech企業を阻むものとの論評を出している。https://www.csis.org/analysis/digital-services-act-digital-markets-act-and-new-competition-tool

66 https://judiciary.house.gov/issues/issue/?IssueID=14921

67 https://judiciary.house.gov/news/documentsingle.aspx?DocumentID=3429

68 同上

69 https://judiciary.house.gov/news/documentsingle.aspx?DocumentID=4591

70 Jean-Noël Jeanneney(2005), Quand Google défie l'Europe, Mille et une Nuits, Paris,(佐々木勉訳「Googleとの闘い―文化の多様性を守るために」、岩波書店、2007年)

References
  • ・Behavioural Study on Advertising and Marketing Practices in Online Social Media, by Consumers, Health, Agriculture and Food Executive Agency (Chafea) on behalf of Directorate-General for Justice and Consumers
  • ・Behavioural Study on the Transparency of Online Platforms, by Consumers, Health, Agriculture and Food Executive Agency (Chafea) on behalf of Directorate-General for Justice and Consumers
  • ・Bourreau, de Streel and Graef(2017),”Big Data and Competition Policy: Market Power, Personalised Pricing and Advertising”,Centre on Regulation in Europe (CERRE);
  • ・Centre on Regulation in Europe (CERRE)(2021),The European proposal for a Digital Markets Act: A first assessment
  • ・Chopra and Khan (2020). "The Case for 'Unfair Methods of Competition' Rulemaking". University of Chicago Law Review. 87 (2): 357–380
  • ・Commission Staff Working Document Impact Assement Report, Accompanying the document Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on contestable and fair markets in the digital sector (Digital Markets Act), pp.39-45
  • ・Commission Staff Working Document Impact Assessment, SWD(2018) 138 final
  • ・Communication from the Commission to the European Parliament, the Council, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions, A Digital Single Market Strategy for Europe, COM(2015) 192 final
  • ・Communication from the Commission to the European Parliament, the Council, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions, Online Platforms and the Digital Single Market, Opportunities and Challenges for Europe, COM(2016) 288 final
  • ・Consumer market study on online market segmentation through personalised pricing/offers in the European Union, by Consumers, Health, Agriculture and Food Executive Agency (Chafea) on behalf of Directorate-General for Justice and Consumer
  • ・Council Directive 89/552/EEC of 3 October 1989 on the coordination of certain provisions laid down by law, regulation or administrative action in Member States concerning the pursuit of television broadcasting activities
  • ・Council Directive 93/13/EEC of 5 April 1993 on unfair terms in consumer contracts
  • ・David S. Evans; Richard Schmalensee (2016) Matchmakers: The New Economics of Multisided Platforms. Harvard Business Review Press
  • ・Digital Competition Expert Panel(UK)(2019), Unlocking digital competition (Furman report), pp.32-41
  • ・Directorate-General for Communications Networks, Content and Technology (European Commission) (2018), Study on contractual relationships between online platforms and their professional users, Final report
  • ・Directorate-General for Communications Networks, Content and Technology Digital (2020), Markets Act – Impact Assessment support study, Annexes
  • ・Directorate-General for Internal Market, Industry, Entrepreneurship and SMEs(2017), Business-to-Business relations in the online platform environment,
  • ・Directorate-General for Communications Networks, Content and Technology (2020), Digital Markets Act – Impact Assessment support study:Annexes
  • ・Directive 2000/31/EC of the European Parliament and of the Council of 8 June 2000 on certain legal aspects of information society services, in particular electronic commerce, in the Internal Market ('Directive on electronic commerce')
  • ・Directive 2001/29/EC of the European Parliament and of the Council of 22 May 2001 on the harmonisation of certain aspects of copyright and related rights in the information society
  • ・Directive 2002/19/EC of the European Parliament and of the Council of 7 March 2002 on access to, and interconnection of, electronic communications networks and associated facilities (Access Directive) ;
  • ・Directive 2002/20/EC of the European Parliament and of the Council of 7 March 2002 on the authorisation of electronic communications networks and services (Authorisation Directive) ;
  • ・Directive 2002/21/EC of the European Parliament and of the Council of 7 March 2002 on a common regulatory framework for electronic communications networks and services (Framework Directive) ;
  • ・Directive 2002/22/EC of the European Parliament and of the Council of 7 March 2002 on universal service and users’ rights relating to electronic communications networks and services (Universal Service Directive)
  • ・Directive 2005/29/EC of the European Parliament and of the Council of 11 May 2005 concerning unfair business-to-consumer commercial practices in the internal market and amending Council Directive 84/450/EEC, Directives 97/7/EC, 98/27/EC and 2002/65/EC of the European Parliament and of the Council and Regulation (EC) No 2006/2004 of the European Parliament and of the Council (‘Unfair Commercial Practices Directive’)
  • ・Directive 2010/13/EU of the European Parliament and of the Council of 10 March 2010 on the coordination of certain provisions laid down by law, regulation or administrative action in Member States concerning the provision of audiovisual media services (Audiovisual Media Services Directive)
  • ・Directive 2011/83/EU of the European Parliament and of the Council of 25 October 2011 on consumer rights, amending Council Directive 93/13/EEC and Directive 1999/44/EC of the European Parliament and of the Council and repealing Council Directive 85/577/EEC and Directive 97/7/EC of the European Parliament and of the Council
  • ・Directive (EU) 2016/1148 of the European Parliament and of the Council of 6 July 2016 concerning measures for a high common level of security of network and information systems across the Union
  • ・Directive (EU) 2018/1808 of the European Parliament and of the Council of 14 November 2018 amending Directive 2010/13/EU on the coordination of certain provisions laid down by law, regulation or administrative action in Member States concerning the provision of audiovisual media services (Audiovisual Media Services Directive) in view of changing market realities
  • ・Directive (EU) 2018/1972 of the European Parliament and of the Council of 11 December 2018 establishing the European Electronic Communications Code
  • ・Directive (EU) 2019/770 of the European Parliament and of the Council of 20 May 2019 on certain aspects concerning contracts for the supply of digital content and digital services
  • ・Directive (EU) 2019/790 of the European Parliament and of the Council of 17 April 2019 on copyright and related rights in the Digital Single Market and amending Directives 96/9/EC and 2001/29/EC
  • ・Directive (EU) 2019/2161 of the European Parliament and of the Council of 27 November 2019 amending Council Directive 93/13/EEC and Directives 98/6/EC, 2005/29/EC and 2011/83/EU of the European Parliament and of the Council as regards the better enforcement and modernisation of Union consumer protection rules
  • ・DRAFT REPORT on the proposal for a regulation of the European Parliament and of the Council Contestable and fair markets in the digital sector (Digital Markets Act), (COM(2020)0842 – C9-0419/2020 – 2020/0374(COD))
  • ・Jean-Charles Rochet, and Jean Tirole(2003), “Platform Competition in Two-Sided Markets”, Journal of the European Economic Association, vol. 1, n. 4, pp. 990–1029.;
  • ・Jean-Noël Jeanneney(2005), Quand Google défie l'Europe, Mille et une Nuits, Paris,(佐々木勉訳「Googleとの闘い―文化の多様性を守るために」、岩波書店、2007年)
  • ・OECD(2015), Data-Driven Innovation:Big Data for Growth and Well-Being
  • ・Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Councilon contestable and fair markets in the digital sector (Digital Markets Act), COM/2020/842 final
  • ・Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on a Single Market For Digital Services (Digital Services Act) and amending Directive 2000/31/EC, COM(2020) 825 final
  • ・Proposition de RÈGLEMENT DU PARLEMENT EUROPÉEN ET DU CONSEIL relatif aux marchés contestables et équitables dans le secteur numérique (législation sur les marchés numériques)
  • ・Regulation (EU) 2016/679 of the European Parliament and of the Council of 27 April 2016 on the protection of natural persons with regard to the processing of personal data and on the free movement of such data, and repealing Directive 95/46/EC (General Data Protection Regulation)
  • ・Regulation (EU) 2018/1807 of the European Parliament and of the Council of 14 November 2018 on a framework for the free flow of non-personal data in the European Union
  • ・Regulation (EU) 2019/881 of the European Parliament and of the Council of 17 April 2019 on ENISA (the European Union Agency for Cybersecurity) and on information and communications technology cybersecurity certification and repealing Regulation (EU) No 526/2013 (Cybersecurity Act)
  • ・Regulation (EU) 2019/1150 of the European Parliament and of the Council of 20 June 2019 on promoting fairness and transparency for business users of online intermediation services
  • ・Renaissance Numerique(2020), “Regulating Digital Platforms: Why and How? “,
  • ・Report from the Commission to European Parliament and the Council, Final report on the E-commerce Sector Inquiry, COM(2017) 229 final
  • ・Rohlfs, J.H. (1974), “A theory of interdependent demand for a communications service”, Bell journal of Economics and Management science. 5, 16-37;
  • ・Rohlfs, J.H.(2001), Bandwagon Effects in High-Technology Industries. MIT Press, Cambridge, Mass. 2001 (佐々木勉訳「バンドワゴンに乗る」、NTT出版、2005年)
  • ・Stucke and Grunes(2016), Big Data and Competition Policy, Oxford University Press
  • ・Study on data sharing between companies in Europe By the European Commission, Directorate-General of Communications Networks, Content & Technology
  • ・Summary of Commission decision of 27 June 2017 relating to a proceeding under Article 102 of the Treaty on the Functioning of the European Union and Article 54 of the EEA Agreement (Case AT.39740 — Google Search (Shopping)) (2018/C 9/08)
  • ・Summary of Commission Decision of 18 July 2018 relating to a proceeding under Article 102 of the Treaty on the Functioning of the European Union and Article 54 of the EEA Agreement (Case AT.40099 — Google Android) (2019/C 402/08)
  • ・Summary of Commission Decision of 20 March 2019 relating to a proceeding under Article 102 of the Treaty on the Functioning of the European Union and Article 54 of the EEA Agreement (Case AT.40411 – Google Search (AdSense)) (C(2019) 2173)
  • ・William J. Baumol, John C. Panzar, & Robert D. Willig (1982). Contestable Markets and the Theory of Industry Structure; Harcourt College Pub
  • ・William A. Brock (1983). "Contestable Markets and the Theory of Industry Structure: A Review Article". The Journal of Political Economy, v. 91, no. 6, pp. 1055–1066。
  • https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/LSU/?uri=celex:32019R1150.
  • https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_15_5166
  • https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_19_4291
  • https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_2077
  • https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_2061
  • https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_20_2347
  • https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/QANDA_20_2349
  • https://ec.europa.eu/competition-policy/antitrust_en
  • https://judiciary.house.gov/news/documentsingle.aspx?DocumentID=3429
  • https://judiciary.house.gov/news/documentsingle.aspx?DocumentID=4591
  • https://judiciary.house.gov/issues/issue/?IssueID=14921
  • https://www.csis.org/analysis/digital-services-act-digital-markets-act-and-new-competition-tool
  • https://www.statista.com/chart/23537/top-10-companies-in-the-s-p-500-index/?utm_source=Statista+Global%20&utm_campaign=32d65a2ad0-ll_InfographTicker_daily_COM_PM_KW44_2020_Th_COPY&utm_medium%20=email&utm_term=0_afecd219f5-32d65a2ad0-300175001,
 
© 2021 総務省情報通信政策研究所
feedback
Top