情報通信政策研究
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調査研究ノート(査読付)
ブロードバンド市場における英国通信法制の動向
―競争/投資・組織・共同規制の観点から―
橘 雄介岡野 佳代
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2022 年 5 巻 2 号 p. 95-116

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抄録

本稿は英国通信法制に関するものであり、特にインフラ・インカンバントに対する規制を対象とし、その展開を整理し、特徴を浮き彫りにすることを目的とする。

英国の通信インフラ市場を見ると、旧国営のインカンバントであるBTがOpenreachとして事業を展開しており、英国のブロードバンド事業者は依然として多くの地域でOpenreachの設備を利用することが必要になっている。故に、Openreach自体の支配的な地位の濫用を防止する必要が生じ、また、OpenreachがBTを他の事業者に比べて有利に扱うことを防止する必要が生じる。前者が「SMP(重大な市場支配力)規制」の問題であり、後者が「アクセス分離」の問題である。もっとも、こういった英国の通信規制枠組みに関しては邦語研究も含め先行研究が既に扱ったものである。にもかかわらず、本稿が今、この問題に改めて取り組む理由として2つ指摘したい。1つは、邦語研究のアップデートである。デジタル化の要請の中で大容量通信網の構築が世界的な課題となっており、英国もそれに向けて動いている。そこで、邦語研究をアップデートし、今後の我が国の通信インフラ政策に寄与したいと考えた。もう1つは、より一般的な視点であり、英国のインカンバントに対する規制の特徴を整理しておく必要性を感じた。背景には我が国のNTTに対する規制が変革期にあること及びプラットフォームに対する規制として企業規模に応じた事前規制が世界的に検討されていることがある。独占的な事業者に対する事前規制として通信法制、特にアクセス分離を早くから取り入れた英国は格好のサンプルであり、その分析によって今後のプラットフォーム規制の要点を学びたいと考えた。

以上の問題意識の下、本稿では、1980年代以降の英国通信法制を調査した。その結果、インカンバントに対する規制はサービス競争(市場への参入の促進ひいては料金競争)に焦点を当てたものから、インフラ競争(競争者による投資の促進)に焦点を当てたものに転換していることを指摘した。加えて、アクセス分離がSMP規制の重要な方策である一方で、組織に焦点を合わせた「共同規制」であることを指摘した。そして、この「競争/投資」及び「組織(共同規制)」という指針は通信市場に限らず、より一般的な価値を持ち得ることも指摘した。

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© 2022 総務省情報通信政策研究所
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