抄録
我が国には入院の必要性がないにも関わらず、さまざまな事情により精神科病院からの退院が叶わず、長期入院している精神障害者が少なくない。例えば、退院後における住居の確保が困難なことや、家族が受け入れを拒むこと、そして、長期入院を経た後に地域で生活していくことへの不安などが退院を妨げる理由とされている。このように入院の必要がないにも関わらず入院せざるを得ない状況となっていることは「社会的入院」と呼ばれ、日本の精神科医療における大きな課題とされている。社会的入院の解消に向けて、これまでにも多くの調査・研究が行われてきた。本研究では、精神科病院に長期入院している精神障害者を対象に、地域生活への具体的なイメージを形成して地域移行に向けた意欲を高めるための一つの方策として、VRとメタバースを活用した空間構築ならびに支援プログラムの設計を行うことを提案する。具体的には、入院中の患者がVRヘッドセットを装着し、メタバース上に再現された仮想空間で、グループホームの見学や買い物の仕方をはじめ、駅の場面等の日常生活に必要なスキルを学習可能とする空間構築と支援プログラムの設計を想定している。本提案は長期入院者の地域生活の具体的なイメージ形成を支援することで、不安の解消に繋がり、ひいては社会的入院の解消に寄与することを目指している。