抄録
保育学生にとって、実習日誌作成は内省を行うための重要なツールである。しかしながら、日誌作成に苦戦する学生も少なくなく、結果として生成AIに代筆させるなど表面的な内省に留まる場合も見られる。本研究では、AIを単なる代筆ツールではなく、思考整理や対話を通して内省を支援する伴走型AIの設計に向けた基礎調査として、保育施設での10日間の実習を経験した学生26名を対象にアンケート調査を実施し、日誌作成に要する負担感および困難に感じる点を整理した。これにより、日誌作成が学生にとってどの程度の認知的負荷となっているのかを明らかにする。これらの調査の結果、学生が抱える困難には「想起レベルの困難」、「反復回避の困難」、「概念レベルの混乱」、「言語化・専門化の困難」の4類型に整理でき、学生は子どもの視点や援助の意図を捉える「内省の芽」を既に持っているが、それを「内省」として客観視し表現するための「足場」が不足している。また、理論的理解と実践的運用の間にギャップがある実態があることを示唆された。これら結果をもとに既存の内省モデルを基盤とし、AIが学生の省察過程に適した質問・対話を行う”Thinking Comparison”としての支援システムの設計について検討する。