ガス化炉内のクリンカ抑制をするために,スギ材中の無機物の反応過程を基礎的観点から検討した。この結果,CaCO3相が安定なガス化炉のクリンカ生成においては,CaCO3-K2CO3系の共晶関係が支配的因子であり,CaCO3-K2CO3系の溶融を阻害する化合物として,無害で安価な酸化アルミニウム系添加剤を見いだした。Al2O3が共存するCaCO3-K2CO3-Al2O3系において,CaCO3-K2CO3系の融液はFairchildite,KAlO2などの複合化合物に近い構造の化合物を移行することを確認した。これらの化合物の生成により,800℃付近の発泡を伴う融液の発生が抑えられ,DTは1300℃以上になることが確認された。大生黒潮発電所ならびに内子バイオマス発電所において,水酸化アルミニウム添加剤としてスギペレットを用いた燃料を用いることによって,それぞれの平均連続稼働時間が689時間および658時間となり,当初の発電事業計画値を満足する稼働率を実現した。